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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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89)修業のコツを教えます!

夏休みも半分過ぎた。

焼き芋…じゃなくて火の精霊の力を借りる特訓は学園の許可が下りなくて出来なかった。残念…。

秋になったらリベンジする予定!


時々隙を見付けて逃げるようにやって来る王子様達との修業も順調だ。



そんなある日、王子様達全員が学園にやって来た。


「皆で揃って来られるのは初めてだな」

「男爵令嬢が実家に帰省してくれてマジ助かったよ」

「鬼の居ぬ間になんとやら…だな」


ウィル様達は久々の息抜きが出来てずいぶんリラックスしているようだ。皆さん窶れてはいるけれど表情は明るい。


「では、これから校外学習に行きたいと思います」

「校外学習?」

「王都の端っこにある湖です!さあ、レッツゴー!」



今日はボディーガード達も馬車に乗せて湖へ直行する。


「プリナ、湖に何かあるのか?修業の一環なのか?」

「ふっふっふっ、行けば分かります」

「皆は行った事があるのか?」

「はい、先日行ってきましたよ」

「プリナを信じて下さい!」

「皆の事はもちろん信じているよ?」

「目から鱗が落ちますよ、きっと」



湖に到着!今日は馬車で湖まで来れたので帰りの心配もない。


「相変わらず綺麗だねー」

「僕は子どもの頃に来たっきりだよ…王都に住んでいながらこんな素晴らしい景色を見なかったとは…」

「確かに、勿体無かったな…」


絶景に見惚れている皆さんに声を掛ける。


「この樹が聖樹です!」

「え、この樹が!?」

「他の木々と変わらないように見えるけど…」

「間違いなく聖樹ですよ」


それから前と同じように辺りに向かって声を掛ける。


「こんにちは~!誰か、私達のお手伝いしてくれませんか~?」

「プリナ!?」


驚くウィル様達をよそに空からはカラスの仲間達、ヒバリ、雀、綺麗な野鳥の群れ、湖からは巨大ナマズ、お魚、湖畔からトカゲ、猫、木から猿、モモンガ等が集まった。ボディーガードのネズミ達もスタンバイしてくれている。


「うわぁぁ!!何だ、この動物達は!!?」

「今日の助っ人の皆さんです!みんな、今日はよろしくね!」


色々な鳴き声が返事してくれた。


「じゃ、私からやってみますね!いつもと同じですよ?うふふ、今日は助っ人さんが沢山いるから楽しみです!見てて下さい!」


聖樹に抱き着いて体に気が流れるのを感じたら、両腕を空に掲げて…


「わあああ!!!何だこれ!!?」

「うぉぉっっ!!?」

「…すげー……」

「…これは……………!」

「………さすが、プリナ様…………」


目を開けると湖から湯気が立ち上ぼり、視界が真っ白に染まっていく。そして霧が晴れてくると湖に虹が懸かっていた。


「…こないだより凄いね…」

「今日は助っ人さんが多いからね!」

「幻想的…!!」

「夢のような景色だね…!」


前に体験したメリザ達も、初めてのウィル様達も、助っ人の皆さんも見惚れている。

虹が消えるまで皆でファンタジーな風景を楽しんだ。


「分かりましたか?」

「全っ然、分かんねー!!プリナも精霊の御遣いなのか!?」

「違いますよ~。私は普通の平凡なただの平民の田舎娘です!」

「プリナが普通な訳がないだろう…」


もう、皆で同じこと言うんだから!


「寮の皆には説明したんですけど、今日は聖樹の力を源に湖の力をお借りしました」

「湖…!」

「あと、今日は沢山の助っ人が応援してくれたので精霊も沢山力を貸してくれたんですよ!」

「…この普通の木が本当に聖樹なのか………」

「この国にはあちこちに聖樹が生えていると教えてくれたのはウィル様ですよ?」

「…それはそうだが……」

「ま、体験するのが一番です!ウィル様、やってみましょう!」

「あ、ああ、分かった」


ウィル様がやってみたところ前回の私と同じように辺り一面に霧が立ち上った。やはり王子様は能力が高いですね!

続けてダニエル様、シャルル様、セルゲイ様、ロベルト様と試したところ、皆さん霧の発生に成功した。


「これは凄い……」

「何なんだ、この感覚は……」

「僕も感じた…!」

「何と素晴らしい…!!プリナ様、あなた様のお陰です!」


ロベルト様の様呼びを止める方法はありませんか?


「みんなには教えたけれど、私もウィル様達も、ここにいる全員が精霊の御遣いの能力はありません」

「…………」

「だけど、みんなに応援してもらったら私達にも精霊が力を貸してくれるんです」

「…………!」

「私達に出来る事は、人間よりもずっと精霊と仲良しの助っ人達と友達になって仲間になってもらって、精霊の力を借りる事です」

「……………」

「人間なんて本当は無力なんですよ?でもみんなと仲良くなって助け合えば精霊も味方になって力を貸してくれるんです」

「……………」


皆さん無言になってしまった。

私の話を未だ信じられないのかな?


「……プリナは凄いな」

「はい?」

「当たり前のように言うが、他の生き物や精霊が人間に力を貸してくれるなど考えた事もなかった」

「それはウィル様達が都会育ちだからかも知れませんね」

「…どういうことだ?」

「村では常に私達人間が聖樹に守られていることを実感して毎日精霊達に感謝します。いつも側にいてくれてると知っているんですよ」

「………そうか……………そうだな」

「うん…僕も感じた。これからは考えを改めるよ」

「いつも側にいて護られている……」


皆さんにやっと理解してもらえたようです。


それから馬車で待機していた王子様達の従者が呼びに来るまで修業を続けた。

身体全体を精霊の力に包み込まれる感覚はとても感動したらしく、誰もが幸せな表情を浮かべていた。



「プリナ、本当にありがとう」

「?私は何もしていませんよ?」

「いいや、君のお陰だよ。この胸の熱い思いをどう表現したら良いか分からないけれど…プリナと出会えた事が奇跡だと思うよ」

「うふふ、大袈裟ですね」

「大袈裟なものか!」

「…君達と出会えて本当に良かった」

「私達もそう思ってます」

「プリナにも王宮に来てもらいたいなぁ」

「それは嫌です。お断りです。謹んでご辞退申し上げます!」


ミサキと顔を会わせるなんて絶対に嫌!!


「えぇ~!?オレ、プリナと修業したい!!」

「僕もプリナとなら毎日修業でも良いよ!」

「僕もプリナとなら遣り甲斐を感じられる」

「私もプリナ様とご一緒出来るなら何でもいたします!!」


ロベルト様、重い。


「…まぁミサキ…様が精霊の御遣いであるのは事実ですし、彼女に正しく能力を使ってもらえるように、一緒に修業しながら監視して下さい」

「そうです!もしまたしょうわ…ミサキ様の能力が暴走した時はウィル様達で止められるように、皆様にも修業に励んで頂きます!」

「そうか…私達にはそう言う役目もあるんだな」

「僕も更に修業を頑張るよ」

「お願いします!プリナを守るためにも」

「もちろんだ」




寮に帰って、久し振りに皆でご飯を食べた。

夕食後は久々に皆で遊ぶ!


「あ~ぶくたった~煮えたった~煮えたかど~だか食べてみよ~♪」

「むしゃむしゃむしゃ!まだ煮えない!」


室内で出来る鬼ごっこを検討した結果がこれ。

幼稚園以来かも。

道具が要らなくて鬼ごっこも出来る遊びもネタが無くなってきたんだから仕方ない!

…でも幼児のように楽しそうにお遊戯している王子様達がとても可愛らしい!


「トントントン!何の音?」

「オバケの音!」

「キャア~逃げろ~!!」


王子様達はこれが子どもの遊びだと知らないから全力で鬼ごっこをしてくれる。むしろ前世の記憶があるポリーやカロの方が物凄く恥ずかしそうだ。メリザとイルクは全力で鬼ごっこを楽しんでくれているけれど。



「…プリナ!捕まえた!!」


私の腕を掴んだ鬼役のウィル様の笑顔はとても嬉しそうで、イキイキと楽しそうで、幸せそうで、私もすごく嬉しくなったよ。


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