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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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87)王都観光

翌日、私達は朝食を済ませると学園の馬車を借りて王都に出発した。


「王都は入学式の前に買い物して以来だ~!」

「プリナは私達と買い物した時の一度だけなんだ」

「そうなの」

「オレが楽器探しに来た時もプリナは1人留守番したんだもんな」

「そうだ、それで行方不明になってオレらにメチャクチャ心配かけたんだよな?」

「うっ…それはもう良いじゃない。森に探検に行ったお陰でミドリーノや森の住民達とお友達になれたんだし」

「あんま心配かけんなよ」


カロが私の頭を撫でながら説教して来た。

いつも心配かけてる自覚はあるので素直に頷く。



王都に着いて馬車には帰ってもらって、ヘレス商会を目指す。


「ポリーちゃーん、あーそーぼー、って言えば良い?」

「それじゃ小学生だろ」

「あ、着いたよ!…まだ開店前みたい」

「そりゃまだ朝早いからな」


お店の裏に回って住居側の呼び鈴を押すと女中さんらしき人が出てきた。


「どちら様でしょう?」

「おはようございます。私はメリザ・シルグアと申します。私達はポリー様の王立学園の友人です。ポリー様はいらっしゃいますか?」

「お嬢様の…。少々お待ちを」


メリザが代表で挨拶すると女中さんは一旦家の中に戻って、少ししてから応接間に通された。


「ここでお待ち下さい」

「ありがとうございます」


私達にお茶を出して女中さんは出ていった。

ポリーは平民とは言え商家のお嬢様だ。使用人もいるんだね。


しばらくすると登頂部が寂しい男性と恰幅の良い女性が入って来た。


「ようこそ、ヘレス商会へ。私は店主でポリーの父親だ」

「私はポリーの母です。娘がお世話になってるようで」


私達も立ち上がって自己紹介をした。


「まぁ皆さんも王立学園の奨学生なのね!娘は学園ではどう?」

「君達も将来を買われた優秀な学生なんだな!いやぁ、頼もしい!」


ニコニコ話してくれるけれど、ポリーを呼んでくれる気配がしない。


「すみません、ポリー様はどちらに?」

「娘は休暇中は花嫁修業に忙しくてな!この期間に婚約者殿と親睦を深めなけらばならないもんで」

「娘は婚家に望まれて夏休みの間はお相手の家で生活する事になりましたのよ」

「!!」


まずい!!先手を打たれた!!


「実は私達は同じクラスのローレンガム伯爵ご令嬢と親しくさせて頂いておりまして、本日伯爵家に招待されているんです」

「!?」


カロが平然と嘘を吐いた。


「まぁ!伯爵家の…?」

「それはそれは!家の娘がいかに優秀かということだな!ガハハ!」

「ローレンガム伯爵ご令嬢とのご縁で先日はシルバードレット公爵ご令嬢ともお茶を楽しみました」

「!!公爵家のご令嬢だと!?」


ポリーのご両親の目の色が変わった。


「昨日は学園に見えられたエメラルドレアン伯爵ご令息、オニキスール伯爵ご令息とも歓談致しました」

「貴族のご子息様とも親交があるのか!?」

「はい。皆様私達平民とも親しくして下さいます」


カロはさすが前世で営業マンやってただけあるね!ハッタリが板に付いてる!

最初のエクレアの呼び出し以外は嘘は吐いていないしね。隣でハラハラするけれど。


「伯爵家のご令嬢にお招ばれとなれば無碍には出来ん…。ポリーを呼んで来なさい」

「…畏まりました」


機嫌を良くした父親がやっと女中さんに指示を出した。


カロ、グッジョブ!!!


やっと現れたポリーはたった1日でゲッソリと窶れて青白い顔になっていた。


「ポリー!!」

「みんな…来てくれてありがとう…!」

「ポリー、今日は伯爵家からのお誘いがあったそうだ。お友達と行ってきなさい」

「!はい、お父様」


ポリーの連れ出しに無事成功した!



「はぁ~、助かった………」

「間に合って良かったよ!変態ロリコンくそキモ男の家に行かされそうだったんでしょ!?親御さんに聞いて超焦った!」

「そうなの!監視されて1人じゃ逃げられなかったよ…」


伯爵家に向かわず王都を散策して目撃されても困るので観光スポット巡りをすることにした。


先ずは王立美術館。

王立学園の生徒手帳の提示でタダで入れる!


『これは…前世のピカソみたいだね…』

『前世も現世でも理解出来ねーな…』

『これはダリっぽいね!』

『うーん、こっちもオレには理解不能…』

『私は好きだよ!』

『あ~プリナなら理解出来そうだもんな、頭の中似てるんじゃね?』

『そうかな!?私、天才画家と同じ才能あるかな!?』

『…ゴメン、今のは褒めてない』

『?』

『あ、こっちの絵は風景画だよ!分かりやすい』

『本当に…。目にも心にも頭にも優しいね、やっぱり見たままに理解出来るのが一番良いよ…』

『同感』

『これはシャガールみたいな色彩!私この絵大好き!!』

『…うん、プリナは好きだろうね』


みんなで1枚1枚の絵をジックリ見るのはとても楽しかった!



次に向かったのは王都タワー!

前世のエッフェル塔のようなフォルムで階段で上まで登れると聞いて行ってみる事にした。


「…キツイ………」

「現世では高層階がない建物ばっかだもんね…」

「プリナ、大丈夫か?オレが抱えようか?」

「…大丈夫…。1人で…昇れる…」


皆でゼーゼー言いながら階段を上がると王都全体を見渡せる絶景が待っていた。


「わあ~!キレ~イ!!」

「あ、あれが学園かな?」

「こうして見ると大豪邸ばっかだね」


王都が森に囲まれているのが分かる。

広大な森の先に一際大きな巨木が見える。


「!あれがお城かな?聖樹が見えるよ!」

「本当だ!おっきいね!」

「いつか王城の聖樹も見てみたいね」

「…ミサキがいるぞ?」

「………卒業までにチャンスがあれば」



お腹が空いたので近くのカフェでランチにした。

私とポリーは日替わりパスタ、メリザはボルシチ、カロとイルクはハンバーグセットを注文。


「…ラーメンが食べたい」

「そういうこと言うなよ」

「パスタがあるならラーメンだってあるはず」

「…食べたくなるから止めろ」

「雑な設定の世界だから探せばあるかもね」



そしてランチを終えると王都から少し離れた場所にある公園でノンビリ一休みする事にした。


「広いねぇ」

「緑と芝生が綺麗だね!」

「静かで気持ちいい…」


皆でマッタリしていると鳩が寄ってきた。


「…ごめんね、鳩さんにあげられるようなおやつ持ってきてないの」


エサをねだりに来たのかと思って謝ったが鳩は側を離れる様子はなかった。


私は立ち上がってプラプラと歩くと何故か鳩も着いてくる。可愛いなぁ。


ふと1本の樹が気になり近付いてみた。樹に触れてみる。


「この樹、聖樹だ…」


「えっ?こんなところに!?」

「普通の木にしか見えないけど?」

「ロベルト様もほとんどの聖樹は他の樹と変わらないって言ってたでしょ?」

「そうだけど…」


皆は半信半疑だ。


「よし!ここで校外学習をします!」

「…………………は?」


私は辺りをぐるっと見回した。


「誰か、お手伝いしてくれる人ー!!」


呼び掛けると鳩が仲間を連れて飛んできた。

そしてクロールの仲間のカラスも数羽飛んできてくれた。小枝からリスも駆け下りて来た。もちろんポケットにいるシロップもお手伝いしてくれる!


「みんな、よろしくね!」

「クルックー」

「ポッポー!」

「カアカア」


緑の聖樹と同じように公園の聖樹に抱き着く。静かに聖樹の気が身体の中を流れていくのを感じる。そしてチャージ完了して、両腕を空に掲げてボールを持つイメージを浮かべると…



「…!!」

「プリナ…すごい…!!」

「マジか!!」



全く光ってはいないけれど、手の中には透明なボーリング大の球が出来ていた。


誤字・脱字報告をありがとうございました!

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