85)王子様達の課外授業(2)
シャルル様とダニエル様が訪れた数日後、ウィル様とセルゲイ様がお忍びでエクレア宅にやって来た。
お二人ともシャルル様達と同じようにゲッソリと窶れていた。
「プリナ…会いたかった……」
「ウィル様!?」
「殿下!!」
ウィル様は私の手を両手で掴むとフラフラと倒れ込んできて、セルゲイ様に支えられて何とか体勢を整えた。
「修業大変そうですね……」
「ああ…。これも王族の務めだと理解しているが…朝も夜もトルマリーノ嬢と共にいると気が滅入る…」
「えっ?ずっと一緒なんですか!?」
「男爵令嬢は王宮住まいだからな。食事を共にしたいと仰せだ。お茶の時間も必要だと言っては殿下…ウィル様と過ごす事を要求してくるんだ」
「うわぁ……」
他の王子様達は自宅に戻れるけれどウィル様だけは逃げ場が無いんだ…。
皆も涙を禁じ得なかった…。
「しかもあの女は何のお許しもなく勝手に殿下をウィルと名前で呼ぶんだ!…僕が無礼であると注意したら「あの平民共も呼んでいる!」と難癖を付けてきてな…!」
「それは…何だかすみません…」
「プリナが謝る事ではないよ。しかし王宮の何処にいても気が休まらず参っている」
ウィル様は私の隣に座ると私の手を握って肩に寄り掛かってきた。
「プリナの隣は癒されるな…。トルマリーノ嬢が
同じ事をしてきても不快にしか感じないのだが」
思わずウィル様の頭をヨシヨシと撫でた。
「今日こうして外出してくるのも骨が折れてな。着いていきたいと駄々を捏ねる令嬢を宥めるのに苦労した」
「ウィル様は公務だと伝えて、後はロベルト殿にお任せしてきた」
セルゲイ様、ロベルト様に丸投げして逃げて来たんだ…!
ロベルト様、また叫んでそうですね。
「では早速学園へ行こうか。ダニエル達から話は聞いている」
「はい。お疲れのところすみません」
「何、プリナ達と過ごせる方がよっぽど気持ちが晴れるよ」
そうして皆で馬車で学園に移動。
聖樹のところに行くとボディーガード達と今日はクロールも来てくれていた。
「こんにちは!きょうもお手伝いよろしくね!クロールも参加してくれて嬉しいよ!」
「キーキー」
「カアカア」
「うん!みんなで頑張ろう!」
先ずは私がお手本を見せるために1人聖樹に抱き着いてパワー充電!
そしてこないだと同じように万歳して大気中の精霊に集まってもらうイメージを浮かべて、それから両手で球を作るイメージを浮かべる。
うん、イメージなら完璧!
やっぱり球を作る事は出来なかったけれど、ネズミ達とクロールが私の周りに薄い膜を作ってくれた。
ネズミ達とクロールが万歳して私に向かって手を羽を翳してパワーを送る姿はもう、コレがキュン死にというやつか!という位に可愛い!!!
「美しい光の膜だな…。これが精霊の力か…」
「それにとても優しい光だ。トルマリーノ嬢の放つ力とは大違いだ…」
お二人も私の友達の力に見惚れていた。
凄いでしょ!?可愛いでしょ!?
「プリナの膜もこないだより光が強くなった気がする」
「ネズミ達も慣れてきたんじゃね?」
「今日はクロールもいるからかも」
今度はウィル様とセルゲイ様の間に入って2人と手を繋ぐ。2人も私と同じように聖樹に抱き着いてパワーを受け取る。
協力者のネズミ達とクロールは私達と聖樹を取り囲むように円を作る。
「…プリナと友達になった時を思い出すな」
「ふふふ、そういえば2人でこうして聖樹に抱き着いてお話ししましたね」
「ああ。…あの時よりも聖樹の力が流れて来るのを感じるよ」
「確かに何か温かいものが体内に入って来るような気がするな。プリナが言っていたことが今更ながらようやく理解出来たよ」
それから聖樹から体を離して両手を空に掲げて、両手で球を作ると…
「…これがダニエルやシャルルが言っていた力なのか!」
「…僕にも出来たぞ!」
セルゲイ様の両手の中にはダニエル様、シャルル様と同じ位のゴルフボール程の光の球、ウィル様の手にはテニスボール位の光の球が出来ていた!
「お二人も無事成功~!!」
嬉しくて万歳すると私の真似をしてネズミ達とクロールも万歳した!
すると仲間に入りたいシロップも皆の輪に入って一緒に万歳した!
「ふふ、可愛い!!シロップも仲間入りね!」
「…えっ!?シロップ!?シロップって大蛇の!!?」
「ええっ!!?沼にいた、あの…!!?」
あ、そうか。2人はシロップの脱皮を見たことがなかったんだっけ。
2人にもロベルト様との会話を含めて今までの経緯を説明した。
そして2人の口からはロベルト様には言わないと約束してくれた。バレるのは時間の問題だろうとも言われたけれど。
「ふふ、ドラゴンをこの目で見られるとは、私は幸運だな。それにとても可愛いな」
「僕も伝説上の、空想でしかないと思っていたドラゴンに会えるとは…感無量だよ」
シロップは2人に撫でてもらえてとても嬉しそうだ!
「…シロップは良いな、プリナとずっと一緒にいられて」
「ウィル様…」
寂しそうにウィル様が笑うとクロールが私の肩に飛んできた。
「カァ!カアカア」
「ん?」
「カアカアカアッ」
「えっ」
「カアカア、カアカア」
「本当?」
「…えーと…プリナはクロール殿と何を話しているんだ?」
「あ、セルゲイ様!クロールが伝書鳩の役をしてくれるそうです!鳩じゃないので伝書鴉ですね!」
「伝書鴉?」
「カアッ」
「クロールの足に手紙を結んでくれればプリナに届けてくれるそうです」
「それは本当か!?夏休みの間もプリナと連絡を取り合う事が出来るんだな!?」
「はい、ウィル様!」
「…君達もその…クロール殿と会話が出来るのか…?」
「はい、何となく?」
「と言うか、プリナの友達の言ってる事は何となく分かります」
「いつの間に………」
「カラスのネットワークがあるから、何かあれば私達に伝えると言ってくれてます」
ウィル様とセルゲイ様の表情がパッと明るくなった。
「私は公務もあるから学園まで来るのは他の者達よりも難しいが…プリナと文通出来るなら嬉しい」
「私も嬉しいです!学園に来れる時は直ぐに教えて下さいね!」
「分かった!」
それからウィル様達の時間が許す限り、集中力を高める修業を続けた。
「プリナ達のお陰で私も感覚を掴める事が出来たようだ。感謝する」
「僕も力の流れを感じられるようになったよ。プリナ、みんな、本当にありがとう」
「お二人が頑張ったからですよ!あとは皆の協力があってこそです!」
「キーキー」
「カアカア」
「そろそろ城へ戻らなくてはな」
「…はい」
「王宮でまたトルマリーノ嬢の顔を見るのは憂鬱だが…プリナ達のお陰で英気を養えた」
「僕もまた明日から頑張れるよ」
「はい!王宮での修業を活かしてウィル様達ももっと精霊の力を借りられるように頑張りましょうね」
「ああ、修業も楽しく励めそうだ!」
「僕も先ずはウィル様を目指して光の球を大きくするという目標が出来たよ。ありがとう」
2人は明るい顔を取り戻して王宮へ帰って行った。
「もう夏休み中ずっと家に居れば良いのに…」
「そうもいかないでしょ!エクレアにはご家族にも本当に良くしてもらって本当に感謝してるよ!エクレアと女子会出来たのもパジャマパーティー出来たのもすっごく楽しかった!」
「私も貴族とか忘れて一緒に過ごせて楽しかったよ!またおいでね!両親も喜ぶから」
「ありがとう!」
エクレア宅最後の夜はコッソリ内緒で私の客間にカロとイルクも呼んで夜更かしした。
…多分エクレアの邸の従者さん達は気付いていただろうけどね。
そして翌朝、私達は寮へと戻った。
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