84)王子様達の課外授業
馬車に揺られて学園に到着!
緑の聖樹に着いた。
「そういえばミサ…男爵令嬢は何を怖がってるんですか?」
「あー、何か「未知なる力」が怖いんだってさ」
良かった。危険な訳じゃなさそう。
王子様達に抱き着くための言い訳だったりして。
「それじゃ、王城でやってるみたいにして下さい」
「分かった」
シャルル様とダニエル様は聖樹に手を触れて瞳を閉じる。
「…こうして聖樹のパワーを感じながら…」
「えーっと…聖樹の気を体内に流して…」
それから2人は両腕を万歳するように掲げて、次に目の前に見えない球を作った。
「…この手の中にパワーを集めるんだ」
端から見てると何も起こっていない。
「…ミサ…男爵令嬢が同じ事をするとどうなるんですか?」
「うーんと、毎回じゃないけど、風が起こるよ」
「こないだは近くの噴水の水が揺れてたな」
「ウィルと修行中は松明の炎が揺れてたらしいよ。それが風の力を集めたのか炎の力を動かしたのかは分からないらしいけどね」
私達もシャルル様、ダニエル様と同じ事を試してみた。
…やっぱり何も起きない。
そりゃそうだよね。ちゃんと分かってました!
「キュッ」
「キーキー」
「ん?ネズミさん達も来てくれたんだ!」
学園に残っていたボディーガード達が集まって来た。今日は数チーム分の人数がいる。
「そういえば、ミサキの力が覚醒した時にみんなが助けてくれたんだよね?あの時はありがとう」
「キーキー」
「?みんなも一緒に修業をやってくれるの?」
「キュッキュッ」
「分かった!一緒に頑張ろうね!」
皆が私の周りを取り囲んで、私は同じ動作をもう一度やってみることにした。
聖樹に今度は抱き着いて全身に温もりを感じる事にする。やっぱり気持ちいい…!
そして目を閉じたまま、身体を樹から離して、両腕を空に向かって掲げて、それから両手でボールを持っているイメージを浮かべる。
「!!プリナ!!」
「プリナ…!!」
目を開けるとネズミ達も小さなおててを私に向かって伸ばしている。
みんな小さな身体で一生懸命特訓してる姿がメチャクチャ可愛い!!
「そっちじゃなくて!」
「えっ」
「プリナ、周りをよく見てごらんよ」
「周り?」
言われて辺りを見ると私とネズミ達に薄く光った膜が張られていた。
「わあ!ネズミさん達すごい!!」
「彼らの力なの…?プリナじゃなくて?」
私はやっぱり何も感じなかったけれど。
ネズミ達は力を集める事に成功したみたい!
「シャルル様、ダニエル様!何となく感覚が分かった気がします!今度は一緒にやってみましょう!」
「…あ、ああ」
「分かった、やってみるよ」
今度は私は2人の間に立って2人と手を繋いだ。
「ネズミさん達、今度は2人にパワーを集めてくれる?」
「キュー」
「キーキー」
2人は私と同じように聖樹に抱き着いてから同じ動作をした。
「うわぁ!!」
「今までと全然違う!!」
2人の声で目を開けると2人の体を風が包んでいて、2人の髪は逆立っていた。両手の中にはゴルフボール位の光の球があった。
「…コレ!男爵令嬢より凄いよ!?」
「本当だ…!彼女は球を作れた事が無いからね」
集中力は王子様達の方が上なのかも知れない。
頭にセクハラ浮かべてる誰かさんより煩悩が無いのかもね!
「ネズミさん達の力を借りたらシャルル様やダニエル様も精霊の力を借りれるんですよ!」
「…僕達にも出来る…?」
「そうです!きっと、ネズミさん達は私達より精霊と仲良しなんですよ!みんなともっと仲良くなれば、もっともっとパワーを借りられるようになりますよ!」
「…プリナの力じゃなくて?」
「うん。私は何にもしてないよ!ネズミさん達の協力のお陰だよ」
2人は自分の中にパワーが集まった感覚が不思議だったみたいで、目がキラキラして紅潮して興奮が収まらないようだった。
「…プリナと一緒なら修業も楽しいのに…」
「ああ…。プリナが精霊の御遣いだったら良かったのにな…プリナなら抱き着いてきても大歓迎なんだけど」
「うふふ!私はセクハラなんかしませんよ!」
「セクハラ?」
「嫌がる異性に無体を働くことですよ」
「セクハラ…。確かに…」
次にメリザ、ポリー、エクレア、カロ、イルクも順番にやってみた。皆も力を集める事は出来なかったけれど、薄い光を纏う事には成功した。
ネズミ達はさすがに集中力を使い切ったらしくグッタリしている。
「皆さまお疲れ様でした。ネズミさん達もお疲れ様。助けてくれてありがとう」
「キュッ」
「キュッキュッ」
「お忙しいとは思いますけど、これからもお休みの日に一緒に修業してみませんか?私達もシャルル様やダニエル様、ウィル様達のお力になれるかも知れないです」
「うん!絶対に来るよ!すごく気持ち良かったし、何よりプリナ達に会いたいよ!」
「オレも来るよ!男爵令嬢の顔ばっか見てたらストレス溜まるんだ!今日はメッチャ癒された!ウィル達にもここに来るように言っとく!」
「そうですね!5人で共有した方が良いと思います!」
日が傾いて来たので修業を終えてエクレアのお屋敷に帰る。
シャルル様もダニエル様も来る時と違って顔に明るさが戻っていた。
「プリナ、ありがとな!オレにも精霊の力を集める感覚が掴めたし、何より楽しかった!」
「僕も!令嬢との修業もここで活かせると思えば頑張ろうと思えるよ。それに夏休み中もこうしてプリナ達と会えると思うと嬉しいよ」
「ふふ、頑張って皆さまも精霊の力をもっと感じて力を集められるように一緒に頑張りましょうね」
「うん!」
「ああ!」
2人はこうして笑顔で帰って行った。
「私も一緒に修業出来て楽しかった!プリナ、ありがとう」
エクレアも笑顔だ。
「プリナも疲れたろ?今日は早く休めよ」
カロは私をいつの間にか抱っこして歩き出す。
「!?ちょっとカロ!人前で抱っこは禁止だって」
「良いから。今日はいっぱい動いたんだから」
「プリナ、ここは大人しくしてカロの言うこと聞いてあげて」
「そうだよ?カロはプリナを構えなくてストレス溜まってんだから」
「そうそう!カロはエクレアの邸に来てからずっとプリナ不足なんだよ」
「みんな、うるさい」
「あ~従者達には私から説明しとくわ」
「エクレアまで!?」
私は抵抗を諦めて大人しく抱っこされていることにした。
打撲自体は数日でかなり痛みも無くなったんだけどな。
でも言われてみれば確かにちょっと疲れたかも。
「森の聖樹の場所が判れば森で修業出来るんだけどなぁ」
「プリナは森の方が精霊の力を集められると思う?」
「うん。森自体のパワーと、森の住民達にも協力してもらえれば」
「そんな気がするね、確かに」
その日は夕食までの間、ずっとカロに抱っこされたまま過ごした。




