82)突撃!貴族の晩ご飯
夕食に呼ばれて食堂に行くと、寮でウィル様達との食事会のような豪華なメニューが振る舞われた。
色とりどりの野菜にサーモン?の入ったサラダ、伊勢エビ?やホタテ?など新鮮な魚介類の盛り合わせ、カボチャのポタージュ、舌平目?のムニエル、フォアグラ?のステーキ何とかソースなど。
この1食だけでカロリー半端ない。
貴族はいつもこんな食事なんだね!知ってた!
ウィル様達とフルコースを食べ慣れてて良かった…。初めてだったらマナーも判らなくて緊張して食べられなかったかも。
伯爵ご夫妻も交えて学園での生活などを話して、とても和やかに過ごした。
食後は部屋に戻って湯浴みをした。メリザとポリーが手伝うと言ってくれたけれど侍女さんが私の手伝いをしてくれた。お嬢様ってこんなに至れり尽くせりなんだね!
翌日は、私達がエクレアのお屋敷にいることを聞き付けたガブリエラが遊びに来てお茶会をした。
ガブリエラは本当に優しい笑顔を見せるようになった。人間変われば変わるもんなんだなぁ…。
「皆さんは男爵令嬢について何かご存知?」
「男爵令嬢…ですか?」
「ええ。先日王宮に招かれたのですけれど、殿下は突然現れた類い稀なる能力者のお相手でお忙しいと、お会いすることが叶いませんでしたの」
「…ああ………」
何て言ったら良いか。
婚約者よりもミサキが優先されるとは…。
「聞くところによると、あなた方のクラスメートの男爵令嬢がそのお相手だそうですの。殿下のお側にいらっしゃる方について教えて頂ける?」
「…………それは」
皆ますます言葉を失くしてしまった。
ここにいる全員が彼女を嫌っているんだもの。
「…私達は平民なので、教室でもほとんど接点が無くて…」
「私も男爵令嬢とは親しくしておりませんの。ただ一部の方々にはとても好意を持たれているご様子でしたわ」
「…そうですのね」
ごめんなさい。これ以上話すとミサキの悪口大会になります。
「えっと…先日学園でロベルト様からお聞きしましたが、ウィル様だけでなく、ロベルト様、シャルル様、ダニエル様、セルゲイ様と日替わり交代でお相手なさるそうですよ?」
「そうです!ウィル様…殿下も仕方無くお相手なさってるんですよ!」
悲しげに目を伏せたガブリエラを見ていられなくて、ついつい余計な事を言ってしまった。
私達が必死にフォローしようとしてるのが分かったのか、ガブリエラは苦笑いを浮かべた。
「…存じておりますわ。王宮をお暇する時にその方をお見掛けしましたの。男爵令嬢から私にお声掛け下さいましたわ」
「えぇ!?しょうわ…男爵令嬢から公爵令嬢であるガブリエラ様にですか!?」
エクレアが驚愕した。
私達だって、貴族社会では目上の者から下の者に声を掛ける、逆は許されないって知ってる。ミサキが知らない訳がない。
「いくらなんでもガブリエラ様に対してあまりにも失礼ですわ!」
「…周りにいた人は誰も諌めなかったのですか?」
「男爵令嬢は我が国にとってとても大切な特別な方なのですって。一介の貴族に過ぎない私とは格が違うそうですわ」
「ミサ…男爵令嬢がそんなこと言ったんですか!?ガブリエラ様に!?」
いくらなんでも失礼過ぎるだろーが!?
ミサキのやつ、どこまで上から目線なんだ!!!
「場合によっては殿下と私の婚約も解消されるそうですわ。…それほど重要な方ですのね」
ミサキが望めばウィル様と結婚するってこと!?
私達はあまりの事に言葉を完全に失った。
「殿下に相応しい方なら私は構いませんの。…ですが…男爵令嬢は以前の私を見ているようで…。私はあんな風に周りを見下していたのですね」
「…ガブリエラ様は変わられましたわ」
「男爵令嬢もいつかは相応しい方になられると?」
「………………」
直ぐ様エクレアが労ったけれど、ガブリエラの言葉にまた何も言えなくなってしまった。
「ごめんなさいね。何だか愚痴になってしまいましたわ。こんな話は誰にも打ち明けられなくて…。夏休み中に皆さんとお会い出来るのを楽しみにしてましたのに」
「…お気になさらないで下さい。ミサ…男爵令嬢の態度は目に余るものがあります」
「ありがとう…。私こんな風にリラックスしてお話し出来るのは初めてですの。皆さんとお知り合いになれて本当に良かった」
「ガブリエラ様…」
「私達もガブリエラ様とこうしてお話し出来て嬉しいです」
ガブリエラはその後王都に用事があると帰って行った。
『あの女、もう本当にマジで絞めたい!!!何であんな最低女が「精霊の御遣い」なのよ!!?』
エクレアは炎を吹けそうな勢いで吠える吠える。
私達も同感だけれど。
『ウィル様達も自分の思いのままにしそうだな』
『誰もあの女を止められないんじゃな…』
『ガブリエラを見下すってどんだけ!!』
『これはもう何がなんでも王子様達に勇者になってもらわなくちゃ!!』
『あの性悪女が天下を取ったら皆不幸になるよ!!』
私もガンガン吠えるとシロップが私の真似をして吠えた。そしてライター位の炎を吹いた。
「…えっ?シロップ?今あなた火を吹いたよ?」
「…さすが小さくても立派なドラゴンだな」
シロップは嬉しそうに頬擦りしてくる。
「すごいすごい!シロップはお利口さんね!私も火を吹きたい気分だったよ!私の代わりに吹いてくれたんだね!シロップは本当に優しい良い子ね!」
「ガオ!」
「!!?みんな聞いて!!今シロップが喋ったよ!!!」
「シロップの声、初めて聞いた…」
「ドラゴンって吠えるんだ…」
「シロップ~!!か~わい~い~!!」
私はさっきまでの怒りも忘れてシロップの小さな身体をぎゅうぎゅう抱き締めた。




