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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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8)学園での初めての出逢い

学校は前世で通った大学のキャンパスの比ではなく、とんでもなく広かった。前世じゃ広さをよく東京ドーム◯個分、って表現してたけれどそもそもドームの広さを知らないし、とにかく大きいって事しか分からない。日本人て他のモノで比較するの好きだよね。レモン◯個分とかさ。アレって分かるようで全然分かんないよね、凄さが。ちなみにこの世界ではどんな風に説明するんだろう?


王立学校は貴族のために設立されているので舞踏会が開かれるようなホール、騎士の鍛練場、乗馬のための馬場や狩猟が出来るような森までもが敷地内にあるのだとか。紳士淑女の嗜みってやつですか。授業は選択科目らしいので足を踏み入れる事も無さそう。とは言えダンスは必修科目だって話だからホールは1回は入らなきゃならないのかも。農民がダンスを習得したところで何になるのさ。前世では小学生の運動会でソーラン節、体育祭のオクラホマミキサー、マイムマイム、地元の盆踊り位だよ?あ、友達がサルサやってて誘われて1度だけクラブに行ったんだった!致命的にリズム感がない私は1度のレッスンで懲りて二度と行かなかったけれど。職場の後輩がフラダンスを習ってて何度も誘われたけれど断りまくった!今世はダンスセンスは生まれ持てただろうか。


学生寮は当初は遠い領地の貴族の子息令嬢のために建てられたのだが、王都から通う生徒が皆馬車で通学するため毎日朝と帰りに大渋滞を起こし学校内外問わず苦情が相次いで大問題となり交通対策で全校生徒が入寮する事になったそうだ。

貴族が住まう寮なので居間、寝室に応接室、衣装部屋、仕度部屋、簡単なキッチン、バスルーム、また生徒1人につき侍女や執事等のお付きの者を1人置けるため従者の部屋まであるらしい。

私みたいな平民にはそんな部屋数は必要ないので居間、寝室、キッチン、バスルーム。それでもホテルのスイートルーム位はあるんじゃないだろうか。と言っても前世でホテルのスイートに泊まった経験が無いのでテレビや雑誌で見た知識だけれど。


キッチンはあるが基本的には食事は食堂で食べる事になっている。部屋にキッチンがあるのは貴族は社交界デビューすると公務や夜会があって食事の時間も不規則になるからだって。貴族の子どもがキッチンがあったところで料理なんて出来る訳無いのに…と思ったけれど従者は料理も出来る人を連れてくるものなんですと。食堂で他の生徒、ましてや平民と一緒に食事するのが受入れられない人も中にはいるそうだから、そりゃ必要だろうね。小腹が空いてもちょっと近所のコンビニまで…なんて事が出来ないもんね。つくづく前世の日常はなんて便利だったんだろうと実感する。


学校は16歳から18歳までの3年制で各学年でばらつきはあるけれど50人前後、全校生徒で150人位。全員寮生活なためホテルのような大きさ。女子寮と男子寮は渡り廊下で繋がっていて真ん中に食堂やラウンジがある。上から見たらアルファベットのHの形になっている。女子側と男子側に受付があって申請すれば異性の寮へ行き来可能。ただし部屋への入室は寮母さんの許可がいる。貴族は婚約者がいるとしても年頃の子どもを預かってるんだから当然と言えば当然。普通はラウンジで会う事が多いそうだ。


1階は寮母さんや職員寮で生徒のための部屋は2階以上、平民は2階、貴族は3階以上。前世で住んでたマンションとかも高層階の方が家賃が高かったから分かる。身分の高い人は自分より上の階に他の人がいるなんて状況はイヤだろうしね。


職員さんが上記の事を説明しながら部屋まで案内してくれて部屋の鍵を渡してくれた。


「今期はリンカさんを含めて何名もの大変優秀な学生が入学されたようです。学園としてもとても楽しみにしていますよ」

「あ、ありがとうございます。頑張ります…」


えぇ~。そんなに優秀な生徒が何人もいるのかぁ。私の優秀さなんて前世の高校入学レベルまでだし、本当に秀才がいたら私なんて大したことないって直ぐバレそう…。高校受験のため中学時代は頑張ったけれど高校入って挫折して文系選択した人間だもの。ごめん父さん、こりゃ特待生はムリだわ。領都の人にもごめんなさい。奨学金は貰えなさそうです…。


職員さんに案内された2階の私の部屋は階段上がって直ぐの端っこだった。窓を開けると目隠しのためか並木があって木の隙間から大きなグラウンドが見えた。一通り部屋を見て、着替えてから少ない荷物をクローゼットに仕舞い軽く掃除しているとドアをノックする音が聞こえた。ドアを開くと明るい茶髪の小柄な女の子が笑顔で立っていた。


「はじめまして。今日入寮した子よね?私は隣の部屋に3日前に入ったカイリー・ヘイドンよ。実家はエラドニールでレストランを経営してるの」

「あ、これはどうもご丁寧に。こちらから挨拶に伺うべきでした。はじめまして、プリナ・リンカです。実家はヒルド村で農家をしています」

「あはは、そんな畏まらなくても同じ平民なんだし仲良くしましょ!私はカイリーで良いよ」

「ありがとう!じゃ私もプリナで良いよ」

「プリナね、了解!これから夕食でしょ?一緒に食堂へ行こう」

「うん!」


やった、早速友達が出来た!

寮の豪華さなどを話しながら食堂へ向かった。


食堂は大学の学食をイメージしていたが前世で招かれた友達の結婚披露宴のホテルみたい!田舎の農民な私は、前世も庶民だけれど、披露宴に行った記憶があって良かった…。前世の記憶がなかったらあまりの豪華さに卒倒してたよ。今も足が震えてるけれど。


システムは学食と同じでシェフに注文してトレイを持ってテーブルに着く方式のようだ。テーブルはかなり空いていた。


「ねぇカイリー(初めて名前呼んじゃった!)いつもこんなに空いてるの?」

「そうね~まだ入寮してない人もいるし、時間ずらす人もいるから今のところこんな感じかな」

「入学式までまだ日にちあるもんね」


席取りする必要も無さそうなのでそのまま一緒にオーダー場所まで行く。カイリーは直ぐにメニューを決めて「ジックリ選んで良いからね」と言って受取場所へ先に移動した。


ええと、何にしよう?生まれ変わって村のゴハンしか知らないからドキドキする。他のお宅にお呼ばれしてもパンに野菜メインのスープにパン、チーズと言うメニューは変わらなかった。


本日のメニューと書いてあるボードを見る。え~とメインは…ハーブチキンの煮込み、白身魚の香草焼き、ローストビーフ、パエリア………パエリア!?


『ウソ!!お米がある!!!!!』

『エッ、マジか!!?』


私がこの世界に来て初めてお米の料理を見付けて思わず歓喜の声を上げたら後ろから大きな声が聞こえた。






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