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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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78)主人公の処遇に関する報告

「ポリーは王都の実家に帰らないの?」

「親は帰って来いってうるさいけど、帰ったら無理やり婚約者と会わせられそうで面倒臭いの」

「ああ…」

「逆に寮から近いんだから日帰りで行こうかと思ってるよ」


夏休みに入っていつもより給仕さんの少ないラウンジでランチ時間までお茶をしながら、私は皆に今後の夏休みの過ごし方について聞いていた。


「メリザは?馬車で半日で帰省出来るんだよね?帰らないの?」

「うーん、帰っても良いけど王都の方が便利なんだよね~。学園の食堂の方が美味しいものが食べられるし」

「分かる!…カロはどうするの?」

「オレは帰ったら死ぬほどこき使われるのが分かってるから帰りたくない」

「ふふ、なるほど!イルクは?」

「オレもなぁ…。馬車で2日かかるし正直面倒臭い」

「ふーん」


本人が帰省する気が無いなら温泉に行くのは無理そうかな?


「そう言うプリナは?帰ってこいって手紙が届いてたでしょ?」

「馬車で往復10日もかかるんだよ!?5日も馬車に乗り続けるのキツイんだよ…。とんぼ返りも辛いし」

「確かに遠すぎるね~」

「それに………皆と会えなくなるのが寂しい」


私が真っ赤になって素直な気持ちを言うと、メリザとポリーがその場で身悶えした。


「くぅ~プリナ、超可愛い!!キュン死ぬ!!」

「可愛い過ぎるぅ!!持って帰りたーい!!」

「お前らは良いよな…」

「ふーんだ!悔しかったらカロも今の気持ちを表現してみれば!?」

「カロ、頑張れ」

「うるさい」


皆で盛り上がっているところにロベルト様がやって来た。


「皆さんお揃いで、丁度良かったです」

「ロベルト様!どうしましたか?」

「昨日の件で皆さんにお話を伺いたいと思いまして」


そう言えば王子様達はミサキを連れて直ぐに何処かへ行ってしまって私達の事情聴取はされなかったんだ。

私は皆に補足されながら昨日の事を説明した。


「あのおん…ミサキ…様はあの後どうなったんですか?昨日の事は何て言ってるんですか?」


先ず初めに質問したのはカロだ。


「彼女は昨日の件はほとんど記憶が無いと言っています」

「………」


そりゃあ私を殺しかけたかも知れないなんて言えないよね!


「…ただ、どうやら彼女は周りの精霊の力を支配する能力があるようです。特に風を集める力が強いようですね」


竜巻起こしたもんね!

あれは風の精霊の力なのか。


「今はどの位の力があるのか彼女を調査しています。学園の施設では賄えませんので今日中に王宮へ連れて行く予定です」

「王宮…ですか?」

「かつてない状況なので。ダントン王国にとって彼女は重要人物となり得ますから」

「そうなんですね…」


王宮に行けると聞いて、きっと今頃ミサキはウハウハだろうね。

国のV.I.P.扱いなんて彼女の虚栄心を十分に満たす事だろう。


「プリナさんがヒントを与えて下さいました」

「ヒント?」

「はい。パーティーで精霊の御遣いの話が出たでしょう?彼女がそうである可能性がある…と考えています」

「………」


私達はミサキが精霊の御遣いとして覚醒するって知ってたから驚かないけれど、他の人達にとっては青天の霹靂だったに違いない。


「彼女は能力の調査をするならウィル様とシャルルに着いていて欲しいと要請して来ました」

「うそ!やっぱり!?」


あ、つい本音が出ちゃった。

予想通り自分からご指名したんだね!本当に図々しいね!


「ウィル様はご多忙であることを理由に拒絶なさいました。シャルルも拒否すると言ってきました」

「断られたんだ!?ミサキが!!ざまぁ!!」


カロは私よりももっと盛大に本音を暴露した。

貴族の前ですよ?人の事を言えないけれど。


ロベルト様もミサキの本性に薄々気付いているので私達の失礼な発言にも何も言わなかった。


「…ですが彼女は我が国の重要人物であるかも知れませんので、彼女の要望を完全に無視する事も出来ません」

「…………あぁ、そうですよね」

「仕方なく…ウィル様、シャルル、セルゲイ、ダニエル、私の5名で交代で調査を手伝う事に致しました。彼女もそれで納得しました」

「うわぁ…」


すっごく嫌そう!渋々どころじゃなく、本当に苦渋の選択だったみたい。

ロベルト様はいつも穏やかで笑顔を絶やさない人なのに、こんな露骨に不快感を表すなんて!


端から見ればいわゆる「逆ハー」ってやつだけれど、残念ながら周りの王子様達はこの状況をあまり好ましく思ってないみたいだね!



「私からお伝え出来る事は以上です。皆さんから何か聞きたい事はありますか?」


皆で顔を見合わせる。

何かあったような…?


「!そうだ!1つご相談したいことがあったんでした!」

「何でしょう?」

「昨日シロップがドラゴンに脱皮しちゃったんですけど」

「…………………は?」

「あれ?シャルル様やダニエル様から聞いていませんか?」

「…昨日はトルマリーノ嬢の押し付け合い…じゃなかった、えー、その…彼女の助っ人を決めるのに忙しくてそれどころじゃありませんでした。何しろシャルルの拒否反応が凄まじくて…」


押し付け合ったんですね…。

言い直しても遅いですよ?もう聞いちゃいましたから。


「申し訳ありません。えー、シロップと言うのは沼にいた大蛇でしたか」

「そうです!シロップが脱皮したらドラゴンになっちゃって、沼じゃ狭すぎて可哀想なんです。何処かシロップがノビノビ出来る引っ越し先はないかと思って」

「…待って下さい。プリナさんは今ドラゴンと仰いましたか?」

「?はい」

「ドラゴンと言うのは伝説上の生き物です」

「そうなんですか?でも私達の前で脱皮して変身しましたよ?私達とシャルル様、ダニエル様も見てました!ね?」


皆も頷いて答える。


「ドラゴン…。ドラゴン…?目の前で…?」

「?はい」

「…それは本当ですか?なにかの見間違いではありませんか?」

「違います!皆も見てるんですから!ね?」


また皆が頷いて答える。


「うわぁぁぁ~っっっ!!!」

「!?」


突然ロベルト様が叫び出した。


「オレも…オレも見たかったぁぁぁぁ!!!」


あ、そっちですか。

ロベルト様も普段は自分のことをオレと言ってるんですね。


「あんな自分勝手で傲慢な令嬢の相手をするよりオレも森へ行きたかったーっっ!!オレだって伝説のドラゴンを間近で見たかったぁぁ!!!チキショー!!!」


私達はドン引きです。

ロベルト様もずいぶんと猫を被ってらしたんですね…。素顔を垣間見れました。


精樹の時も1人森へ行けなかったことを物凄く悔しがられてたと聞きました。

ロベルト様は伝説とか調べるのがお好きなんですもんね。


ロベルト様が落ち着くまで、私達はモクモクとおやつを食べていた。



「………大変失礼致しました。あまりの衝撃につい我を忘れてしまいました」

「…どうかお気になさらず」

「シロップ殿の住み処探しについて承りました。現在の大きさを確認したいのですが、近々森へご一緒してもよろしいですか?」

「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」



一刻も早く見たいとロベルト様はその日の内に時間を作ってしまった。

ロベルト様の未知なるものへの熱意は凄かった!



午後からまた皆で森に行く事になった。

昨日あれだけ拗ねちゃったから、2日続けて会いに行ったらシロップも喜んでくれるかな?







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