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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
75/137

75)このタイミング!?

夏休みに突入。

多くの貴族が王都に邸宅を持っているので朝から帰省ラッシュで寮は賑やかだ。

お隣さんのカイリーも王都出身者なので今朝早くに帰省した。

門は貴族達の馬車で大渋滞だ。


私は平民組とウィル様、ダニエル様、セルゲイ様、シャルル様、ロベルト様とで緑の聖樹のある庭でドロケイ中。

ウィル様がやっと時間が取れて「皆で鬼ごっこがしたい」と言ったので、門とは反対側で人目に付かないだろうと庭で遊ぶ事にしたのだ。

私は泥棒役で茂みの裏に隠れている。

かくれんぼは得意だもんね!


息を潜めていると、背後に人の気配が近付いて来たのが分かった。

見付かっちゃったか!捕まる前に逃げなきゃ!


「…あんたのせいよ」

「!!?」


振り返るとミサキだった。

何でいつもミサキと遭遇しちゃうの…!?

私は逃げられるように後退りする。


「……」

「今朝エクレア様に物凄い剣幕で怒鳴られたの」

「誰にも見られてなかったはずなのに」

「………」

「シャルル様とも踊れなかった」

「………」

「何であんたは怪我してないの?」

「………」

「エクレア様に睨まれたらクラスの高位貴族達とも上手くやれないじゃないの」

「………」

「2学期になって私の立場が悪くなってたらどうしてくれんの?」

「………あなたにはあなたを好きな味方がいてくれるじゃない」

「みんな大した家の子じゃないもの」


取巻きに対して本当に失礼な子だな…。


「エクレア様を取り成して欲しいの」

「…………」

「あんたは勝手に足を滑らせて、バランスを崩して勝手に落ちたんだって。私はたまたま近くにいただけだって。私はあんたの事故とは無関係だって説明してよ」

「…………無駄だよ……………」


エクレアは全部知ってるもの。

それまでのミサキが私にしてきた事も全部。


「エクレア様に嫌われたらこれからクラスで上手くやっていけないの!お願い…!私を助けて!!」

「…………」


人を突き落とそうとしといて、よくそんなことを頼めるね。

私の宝物をゴミと笑って踏んづけて。

メリザが作ってくれた大切な物だと知っていて嘲笑ったんだ!

許せる訳がない!!


私が無言で睨むと、ミサキの表情が鬼のように変化した。


「…全部あんたのせいよ!!あんたはいっつも私の邪魔をする…!!」

「!?」


その瞬間ミサキの身体の周りに風が巻き起こった。

凄まじいオーラが見えた気がした。


「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!!!」

「!!!」


ミサキから竜巻が起きて私に向かって来る!

あまりの恐怖に足がすくんで動けない…



逃げられない!!!


「今すぐ私の前から消えろーっ!!!!」


ミサキが叫んだ。

その時、私の前にネズミ達とクロールが立ちはだかった。


「みんな!?…良いから早く逃げて!!!」


それでも皆は私を守るように盾になる。

そんな小さな身体じゃ吹き飛ばされちゃうよ!!


誰か!!この子達を守って!!

私の大切な友達を助けて!!!


誰か…!!!!



竜巻が目の前まで来て思わず目を瞑った瞬間、物凄い爆音が辺りに響いた!!


「!?」


目を開けると、アニメや映画で見たことがあるようなドーム型の膜が私達を囲うように張られていて竜巻を跳ね返していた!


「……!?」


それでも竜巻の力が強くてこのままじゃ膜が押し潰される…!!


「何やってんだ!!?」

「これは…!!」

「プリナ!!!」


皆の声が聞こえて駆け付けて来る。


…と、竜巻が消えた。


膜もいつの間にか消えた。


私は腰が抜けてその場にヘナヘナと座り込んだ。

ネズミ達とクロールが私を囲んで心配そうに見上げてくる。


みんなが無事で良かった……!!


「プリナ!!今物凄い音が聞こえて…!!」

「プリナ!!一体何が起きて……ミサキ!?」


ミサキが足から崩れ落ちて、そのまま意識を失った。





今日この日。


ミサキが「精霊の御遣い」として覚醒した。



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