70)談話室での密談
「ヤバい~!!シャルル様に本性バレた~!!超ヤバい!!マジどうしよう~!!!」
1人悶絶しているのはエクレア。
今はエクレアの侍女がポリーの湯浴みをしてくれている。
「もう諦めなよ。今さら取り繕っても意味ないよ」
「そうだけど!!「エクレア」は淑女なのよ!15年間貴族令嬢として生きてきたのよ!!私の15年を返して!!」
「えぇ~?私のせいかなぁ」
「そりゃそうでしょ!?もう貴族社会で生きていけない…」
「シャルル様は優しいから別に人の悪口を言い触らしたりしないよ」
「そうね!シャルル様超カッコいいね!!超優しい!!超ヤバい!!」
ヤバいはエクレアの口癖なのかな?
かの子の口癖だったのかもね。
私達はレッスン終了前にホールに戻って、ポリーを連行するように説明無しで強引にエクレアの部屋に連れてきた。その後私とメリザがシャワールームにダッシュで制服を取りに行って急いでエクレアの部屋に戻って来た。かなり走ったよ!
初めて入った貴族の部屋は凄かった!!感動した!!
広さも調度品も私達の平民の部屋とは何もかもが違っていた!
私とメリザはシャワーを借りて先に湯浴みを終えたエクレアの髪を整えていた。
「エクレアの髪は綺麗ね!さすが貴族のお姫様!」
「当然よ!お金かければこんなもんよ!」
「わあ~ムカつく!さすが貴族令嬢!」
「みんなお待たせ~」
ポリーが湯浴みを終えたのでお手入れしてから談話室へと向かった。
「ねぇねぇポリー、公爵様と良い感じだったね~グフフ」
「プリナったら下品な笑い方しないで!彼らの思惑は前に聞いたでしょ?平民の私達を選んだ理由を!それだけよ!」
「そうかな~?ダンス中ずっと見つめ合っちゃってさ~!み~んな見惚れてたよ~!」
「もう!からかわないで!」
ふざけあいながら談話室に入ると、そこにはシリアスな雰囲気が漂うメンバーが揃っていた。
カロ、イルク、シャルル様、ダニエル様、そしてロベルト様。
「お忙しいところ集まって頂いて、すみません」
「何を言うんです!私の友人が被害に遭ったのですよ?私に出来る事は何でも協力しますよ」
「そうだぞ?状況次第ではウィルとセルゲイも巻き込むから」
「ありがとうございます!ロベルト様、ダニエル様」
皆が着席したところで早速本題に入って制服の事件について話した。そのあとの囮捜査についても。そしてポリーが被害に遭った図書館での事件と、今日の女の子達の敵意に気付いた事まで。
「…それじゃ制服の件は誰がターゲットなのか分からないのか」
「今回ポリー嬢が被害に遭った事で君達平民を狙った可能性が高くなったのか…」
「同一犯とは限らないだろ?」
「たかだかパーティーでのダンスパートナーにそこまで執着するものでしょうか」
「ロベルトは甘い!!お前だって令嬢達に散々アプローチされてきて困っただろーが!」
「………ああ、そう言えば、そうでした……あれは恐怖でしたね…」
ロベルト様は自分で自分の身体を抱き締めて遠い目をした。
そんなに凄かったんですね。伝わりますよ、ロベルト様。
「学校ばかりで事件が起きているのは何故でしょうか」
「?どういう事ですか?」
「…寮だって食堂だって、日常生活を共にしているのだから別に学校内である必要はないんじゃないかと思いましてね」
「学校ばかりで事件が起こる理由…」
「シャワールームの実行犯は女性でしょうが男性の共犯がいるのかも知れませんね。寮は男性女性は別棟ですし、食堂のある棟は異性の出入りはチェックされますから」
「なるほど…」
さすがロベルト様とシャルル様、私達は気付かなかった着眼点だ。
優秀な方々がブレーンに居てくれると頼りになるな。
「平民であることが襲う理由なら同じ平民のカロト君やイルク君では守れない場合があるかも知れないね」
「!………そうですね」
カロとイルクが悔しそうに肯定する。
「女子だけの場面はわたし…じゃなかった、わたくしが徹底的にサポートいたしますわ!」
「頼むぞ、エクレア嬢」
「はい!お任せ下さいませ!」
ダニエル様の言葉にエクレアが力強く頷く。
「休み時間や放課後、念のためプライベート時間も僕達と過ごすこと!特にプリナ」
「は、はい」
「君は何度も狙われているんだよ?僕から離れないでね?絶対に1人にならないこと!分かった?」
「はい!分かりました!」
シャルル様に言われて私が頷くと優しい笑顔を見せてくれた。
「私は学年が違うのでお側にいることは叶いませんが…不審な行動をとる輩がいないか生徒会として見廻りを強化いたします」
「ロベルト様、ありがとうございます」
「ウィルとセルゲイにもオレから話しておくよ。言ったら休み時間に毎回そっちのクラスに行くとか言い出しそうだけどな。言わない方が本当はよさそうだけど、蚊帳の外に置いといたら後でグチグチ言いそうだからさ」
「確かに言い出しそうですね」
「オレはシャルルに会いに行く体で出来るだけそっちに行くよ。他所のクラスの人間の方が客観的に見えるかも知れないしさ」
「ダニエル様…、ありがとうございます」
「担任教師には言わないのですか?自分のクラス内で問題が起きているのですから相談なさったら協力して下さるのではないでしょうか?」
「あ…かりんとう先生には言いたくありません」
「かりんとう…?ああ、ヨーカン先生ですね。何故ですか?」
「ヨーカン先生はダメです!!」
メリザが大きな声を出したので男性陣はビックリしていた。
「ヨーカン先生はプリナを溺愛してるんです!!」
「…………………は?」
「ヨーカン先生はいつもプリナの事を「僕のお姫様」って呼んで暇さえあれば頭を撫でて愛でようとするんです!!」
室内の気温が一気に下がった…気がする。
王子様達から何やらどす黒いオーラが発生してる…気がする。
「…………………何だと?」
「おのれ、教師の分際で………!!」
「教師でありながら不埒な真似を……!!」
あー、これは激しく誤解してるね。
メリザの言い方も悪いよ!
「えーと、違います!皆さんが想像したような感じじゃないですよ?」
「何が違うと言うんだ!?「僕のお姫様」なんて僕も言ったことがないのに…!」
どうしよう。
自分の口から3歳児扱いされてるなんて絶対に言いたくない。
そのままかりんとう先生の所に抗議に行きそうな王子様達を何とか宥めて、話を逸らすことに努めた。
「あの!!守りについては分かりました!でも、これだと犯人も犯人の目的も掴めません!!こっちからも攻めないと!」
「プリナの気持ちは分かるが危険に晒すような事はしたくない」
「でも犯人を見付けない事にはいつまでも解決しません!皆さんお忙しい方々なのに…ずっと巻き込んで付き合わせるなんて出来ません」
「大丈夫だよ、プリナ。僕は君とずっと一緒にいたいんだから」
「そうだよ、オレも会いに行く理由が出来て嬉しいんだからさ」
「私も他学年の階に行ける理由が出来て嬉しいですよ」
…ダメだ。
メリザ達の過保護が伝染しちゃったみたいだ。
結局。
夏休み前まで、つまり終業式パーティーが終わるまで、ずっと私達は皆の協力体制でガードされながら過ごす事で決定した。




