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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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69)友達に向けられた悪意

翌朝の食堂。


「ポリー。次はスープね!あーんして」

「あーん」

「次はパンね!はい、あーん」

「あーん」

「次はこっち!ゆで玉子だよ!あーん」

「あーん」


「ポリー、目一杯今の状況楽しんでるよな」

「プリナの嬉しそうな顔…」

「お世話係が嬉しいんだろ。いつもされる側だったから」

「ほら、プリナも食べな?あーんして」

「えっ、あーん!…ってまたニンジン!?たまには自分で食べなよ!」



騒がしい朝食を終えて今日の授業が始まる。

シャルル様には放課後に時間を取ってもらった。


ポリーは両腕が使えないので私が代わりにノートを録ったり荷物を持ったり大忙しだ!



「この腕じゃ当分ダンスは踊れませんわ」

「大丈夫だよ、ポリー嬢。僕の肩に腕を置いてくれたら後はリードするよ。僕に身を任せてくれれば良いからね」

「ありがとうございます」


ポリーはダンスの授業は見学するつもりだったけれどパートナーの公爵子息は代役を申し出た子を全て断ってポリー以外の女の子とは踊らなかった。

端から見るとまるで恋人同士が踊っているようで、笑顔で見つめ合って踊る2人に思わず見惚れてしまう。


「プリナ?ダンス中に余所見しちゃダメだよ」

「!シャルル様、すみません」

「ふふ、いいよ。あの2人はとても良い雰囲気だね」

「はい」


周りを見るとポリー達に見惚れてるのは私だけではなかったようで…ん?ポリーをずいぶん憎々しげに見てる女の子達がいる…。さっき公爵子息に相手を断られた子達だ。


「プリナ。また余所見してるね」

「シャルル様、あの子達…」

「ん?…ああ、ずいぶんとポリー嬢を凝視してるね」

「………」


もし。ポリーが狙われた理由が公爵子息のパートナーが理由なら………

怪我を理由にパートナーを辞退させるのが目的だったとしたら………?


今度こそ踊れなくなるようにポリーに何か仕掛けて来るかも知れない。


ポリーが危ない!!


「プリナ、顔が真っ青だよ?少し休む?」

「シャルル様………」


私の異変に気付いたカロとエクレアのペアも駆け寄ってくれて、教師の承諾を得てから4人で移動した。授業中のため誰も居ない休憩室に入ってドアの鍵をかけた。メリザもダンスを止めて来ようとしていたけれど、目線で残ってもらうように伝えて、頷いて了承してくれた。


「プリナ、一体どうしたの?」

「顔色が悪い。医務室に行かなくて良いのか?」


まだ確定じゃない。

考え過ぎかも知れない。

間違っていたら疑った女の子達に失礼だ。

でも女の子のポリーに向けていた憎悪に充ちた目は…


私が震えているのに気付いたシャルル様は私を椅子に座らせると肩を抱いていてくれた。


「…あのね。私の勘違いかも知れない。」

「うん」

「見当外れかも知れない、けど…」

「うん。ゆっくりで良いから話してごらん」

「…ポリーが何故狙われたのか判ったかも……そして誰が襲ったのかも…判ったかも知れません」


皆が驚愕したのが分かる。


「プリナ…」

「シャルル様も見たでしょう?あの女の子達の目」

「…ああ、物凄く荒んだ目付きだったね」


私は皆に自分の考えた事を伝えた。

そして、ポリーがまた狙われる可能性があることも。


「ポリーに怪我させてまで公爵様と踊りたがってる女がいるってことね?」

「…確かに今日彼にパートナーの変更を申し出ていたね」

「…でも断られた。しかも自分のパートナーはポリーだけだとキッパリ言われて」

「今度こそ、確実に踊れなくさせるって言うのか…?」

「…分からない。けど…」


あの目はまだ諦めてない。

憎くて憎くてたまらない目だ。

私はあの目を知ってる。

あの目で見詰められたから。


「この後は…また私達は3人になります」

「ああ、令嬢達の湯浴みの時間だね?」

「直ぐに行動するかは分かりませんけど…私とメリザだけではポリーを守れないかも知れません」


「話はよく分かった。僕もポリー嬢が心配だ。彼女も僕の大切な友達だからね」

「シャルル様…」

「だったら私の部屋においで。3人とも私の部屋で湯浴みすれば良いよ」

「エクレアの部屋に?」

「シャワールームはあまり人目につかない場所にあるでしょ?だったら私達貴族と行動したら良いよ」

「エクレアの意見に賛成だな。相手が貴族の女の子じゃオレには手出しが出来ない」

「…そうだね。同じ女性の方が側に居やすいだろうね」


「…プリナが今日相談したいことがあると言ってたのはこの事と関係ある?」

「…ある、かも知れません」

「そう…」


シャルル様はしばらく考え込んでしまった。


「彼はうちのクラスでは最高位の家柄だ。彼の相手を何がなんでも得ようとする人間がいてもおかしくはない」

「許せない…!!ぶったぎってやる!!」

「エクレア、まだ私の憶測に過ぎないから…」

「プリナの顔色と震える姿を見れば只事じゃない事くらい分かるよ!よっぽど恐ろしかったんでしょ!?女の顔が!!」


シャルル様が肩を抱き寄せてくれて、エクレアが私の手を握り締めた。


「制服の件と今回が同一犯か未だ分からないけどさ、ポリーの件は敵が分かってるからこっちも手が打てるじゃない!!」

「…うん。そうだよね」

「ちょっと待って。同一犯って、まだ他に何かあるの?……!それが今日の相談事かい!?」


私は黙って頷いた。

シャルル様の表情が険しくなる。


「…放課後まで待てないな。今から部屋を取っておくから湯浴みが終わったら皆で談話室に来てくれ。ロベルトとダニエルにも来てもらえるように伝えておくよ」

「…はい」

「分かりました」

「承知いたしました」


「…そろそろ授業が終わるね。僕達も戻ろう」


シャルル様の声で皆が立ち上がって部屋を出る。


「…エクレア嬢はプリナ達といる時はいつもあんな感じなの?」

「!!…あ…それは…あの………そう、です…。申し訳ありません、シャルル様の前では猫を被っておりました…」

「あれが君の地なの?」

「!!…う……そうです…。申し訳ありません…。先程はつい油断いたしました…」

「ふふふ、謝る必要はないよ。プリナ達は僕の大切な友達だよ?プリナが大切に思っている人なら僕にとっても友達だよ。エクレアも僕の前で取り繕う必要はないからね」

「はい…」


エクレアの顔が真っ赤になった。





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