67)不人気ではありませんでした
捜査3日目。
今日は授業が終わると昨日の話し合いで皆に言ったように、私は人気の少ない庭のベンチの木陰でクロールと一緒に本を読んでいた。草むらにはボディーガードのこののチームが隠れている。
「…其処にいるのはプリナじゃないか。珍しいな、1人か?」
「!セルゲイ様」
名前を呼ばれて本から顔を上げるとセルゲイ様が1人で立っていた。
「セルゲイ様こそお一人なんて珍しいですね!今日はウィル様とご一緒じゃないんですか?」
「ウィル様はこの後1日中執務室に籠る予定なんだ。だから久々に鍛練でもしようと思って向かっているところだ」
「真面目なセルゲイ様らしいですね」
「…そうしているとプリナも深層の令嬢に見えるな」
「えぇっ?平民の私がですか?うふふ、この学園には本物の深窓のご令嬢が山ほどいらっしゃるのに!」
「…確かに令嬢は山ほどいるが、果たして「深窓のご令嬢」かどうか」
「?」
セルゲイ様は私の隣に腰掛けた。
「今日は天気が良くて外は気持ちが良いな」
「そうですね。クロールも嬉しそうです」
「ああ、クロール殿も一緒なのか」
セルゲイ様はクロールと会釈を交わすと私の手元の本を覗き込もうとした。
「プリナは何を読んでいるんだ?」
「えっ。あの…これは…その…いわゆる恋愛小説です…」
「ほぉ。プリナは恋愛小説などを読むのか」
「…はい。たまには」
これは架空の王子様と護衛騎士とのラブロマンスだけどね!
この世界にも需要があったことに驚きだよ!
夢中になって読んじゃったよ。
ウィル様とセルゲイ様で想像しながら読んでました!…なんて言えない。
「…最近はウィル様がお忙しくてなかなか時間が取れず、食事会も実現出来なくてすまないな」
「本当にお忙しそうですもんね。ウィル様もたまにお見掛けすると随分お疲れのご様子です」
「ああ。…何より君達と過ごせないのがストレスのようだ。僕もそうなのだが…」
そう言うセルゲイ様の顔をよく見ると目の下に隈が出来ている。セルゲイ様も相当お疲れらしい。私はセルゲイ様の隈にそっと触れて顔を見つめた。
「!!」
「…セルゲイ様、目の隈がすごいですよ?ちゃんと眠れてますか?」
「…あ、ああ大丈夫だ…あり、ありがとう…」
セルゲイ様は顔を真っ赤にして突然立ち上がった。
「読書の邪魔をしてすまなかった!また皆で鬼ごっこをしよう。森にも行こう」
「はい!また遊びましょうね!シロップ達も待ってると思いますよ」
「ああ。………プリナは以前誘拐された事があるんだ。1人でいるのは危ないかも知れん。気を付けろよ?何かあれば相談してくれ。きっと力になる」
「ありがとうございます。引き止めてしまってすみませんでした」
「いや、僕がプリナと話したかったんだ。…では僕はもう行くよ」
「はい。鍛練頑張って下さいね」
「ありがとう。…ではまたな」
セルゲイ様は軽く手を上げて鍛練場へ歩いて行った。
「セルゲイ様と2人でお話ししたのは初めてだな…」
後ろ姿を見送ってからまた本を開くと其処に影が落ちた。
「あなた平民?見掛けない顔よね。何故あなたのような平民がセルゲイ様にお声掛けされるの?」
顔を上げると知らない女の子達がいた。
影の正体は彼女達の日傘だった。
「セルゲイ様は寡黙な方で私達貴族にも滅多にお話しして下さらないのに」
「平民のくせに生意気ね!」
あちゃーまたか!
プリナは魔物に遭遇した!プリナは魔物に取り囲まれてしまった!
「セルゲイ様はウィリアム殿下の護衛をなさってて将来有望な方なのよ!あなたみたいな平民が軽々しく話せるような方じゃないのよ!分かってる?」
「…えっと、すみません…?」
「ねぇ!そんなことよりセルゲイ様は鍛練場へ向かわれたわ!こんな平民放っておいて早く行きましょう!セルゲイ様の勇姿を目に焼き付けなくては!」
「はっ!そうね!無駄な時間を過ごしてしまったわ!」
彼女達はそう言うと早歩きでセルゲイ様を追いかけて行った。
「はぁー。セルゲイ様のお陰でまた余計な虫がやって来たよ…」
私達の中にセルゲイ様を攻略した人は居なかったので実はセルゲイ様は一番情報が少ない。キャラの中では人気がないのかと思ってたけれど。
ごめんね、そんなことなかったね。
セルゲイ様だってイケメンだもんね。強くて真面目で優しくて。私ならセルゲイ様を選択してたかもなぁ。
興味が持てなくてチュートリアルしかゲームを見なかったくせに、そんなことを思った。
「あの子達も嫌がらせとは関係無さそうか…」
「カァ」
「だね。クロールもそう思うのね」
「カァカァ」
結局今日も私にはそれ以上の動きはなかった。
けれど夜に皆で集まった時にポリーがネラワレタ事を聞かされたのだった。




