56)王子様 VS 悪役令嬢 VS
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私達が森から帰って来るとガブリエラが森の入り口の前に1人立っていた。いつから待っていたんだろうか。私達が一緒にいることをどこで聞いたんだろう?
「ウィリアム殿下」
「…ガブリエラ嬢か」
私達平民組はその場をそっと離れようとしたがキッと睨まれて動けなくなった。
「ウィリアム殿下。何故あなた様はこのような下々の者達と行動を共にされていらっしゃるのですか」
「…そなたは私の交遊関係に口出しする気か」
ウィル様は不快感を隠そうともせずに言った。
「ウィリアム殿下。私は殿下の身を案じているのです。殿下はこの国の貴きお方。そのような方がこんな平民共と同じく過ごすなど決して許されません」
ガブリエラは私達に目を向けた。思わずビクッとした。美人の目力は迫力がすごいね!
「そこの者!…プリナ・リンカと言いましたか」
「!は、はい」
「私は先日忠告いたしましたわね?殿下はお前のような下賎の者が気安く近寄れるような方では無いと。身の程を弁えろ、と」
「…」
「殿下は公平でお優しい方です。お前自身が立場を弁えて節度ある距離を保ちなさい!」
「…」
「今すぐこの場を立ち去りなさい。そして二度と殿下に近付いてはなりません。その薄汚い身を殿下の瞳に晒してはいけません。聞こえてますの?…早く行けと言ったのよ、このドブネズミ!!」
「いい加減にしろ!!」
ウィル様が声を荒げ、私の前に立ちはだかる。
ダニエル様、セルゲイ様、シャルル様、ロベルト様も静かに私達の前に立ってくれる。
「プリナ達は私の大切な友人だ。彼女を侮辱すると言う事は私を侮辱する事と同じだ」
「ウィリアム殿下!」
ガブリエラはウィル様に一歩近付いた。
「私は殿下のために申し上げているのです!殿下がこのような身分の卑しい者共といては殿下の名を汚します!私は殿下の婚約者として、貴族の身として殿下の名誉を守らねばならないのです!」
「私の名誉だと?…私がプリナ達といることで何が汚れると言うのか」
「殿下!?下賎の者の名など…!!」
「先程も言っただろう。プリナは私にとって大切な人だ。ここにいる者は全て私の大切な友人だ。友人を貶すような事は私が許さない」
「殿下!」
「ここは学園だ。何が問題あると言うのだ。私とここにいる皆は同じ学園で共に学ぶ生徒同士。少なくともこの学園内では対等な関係である!」
ウィル様が私の手を取って私に微笑んだ後、ガブリエラに冷たい目を向けた。
「そなたが立ち去れ。今そなたの顔を見るのは大変不愉快だ。私の大切な友人を侮辱するな!!今すぐ私の視界から失せてくれ」
「殿下…!!」
ガブリエラが悲鳴のようにウィル様を呼ぶ。ウィル様は無視して私の手を引いて歩きだそうとした。が、私は動かなかった!
「…プリナ?」
「…さっきから下々の者とか下賎の者だとか卑しい者だとか」
ガブリエラを睨み返した。
「あなたねぇ、平民をさっきから下に見てるけど、あなたがいつも食べてるパンや野菜やお魚、お肉は誰が作ってると思ってんの!?あなたが今身に付けてるドレスや靴も!!み~んなあなたの言う平民が作ってるの!!」
「平民平民って言うけど、その平民があなた達貴族の生活を支えてるんだよ!?分かってる!?」
「…この平民風情がこの私に物申すとは…!」
「ノブレス・オブリージュって知ってる!?私達平民の暮らしを守る事が貴族の役目でしょうが!!」
「昔、遠い国では国民が飢えに苦しんでるのに貴族や王様は贅沢を止めなくて、国民は怒って革命を起こしました!王様も王妃様も国民の前で断頭台で処刑されました!」
「…!」
「王様達が公開処刑された時に国民は歓喜の歌を歌いました!その歌が後の国歌となったそうですよ!」
「……」
「王族はまだ小さい子どもも全員処刑されました!王家の血筋を残すと王族復興を考える人が出てくるかも知れないから!」
「…!」
「国民を守らなかった貴族達も処刑されました!その国は王政も貴族制度も廃止したんです!」
「…!」
「その国は共和国になりました!」
「共和国?共和国とは?聞いた事がないぞ…!?どこの国の話なんだ!?」
「えっ……だから、えーと、遠い国の昔のお話です!」
「その遠い国は国のトップの大統領を国民が国民の中から選びます!皆平等です!」
「皆が平等…」
「王族や貴族のいない国だと…?」
ガブリエラだけじゃなくウィル様や皆もショックを隠しきれないでいる。メリザ達平民組は私を白い目で見てる。日本から見たら遠い国じゃんか!
「私は別に国が豊かで、平和で、安定した生活が出来るなら国のトップが何でも良いと思います。王様でも皇帝でも大統領でも総理大臣でも」
「…」
「でも国のトップは国民みんなが幸せに暮らせるように国を支えていかなきゃいけないんです!国民…平民が豊かじゃなければ国は栄えないんです!」
「…」
「ガブリエラ!様!あなたが見下している平民がこの国を支えてるんです!それを忘れないで」
「………」
ガブリエラはその場でへたり込んでしまった。
…これで少しは思い上がりを考え直してくれれば良いけど。
気持ちよくなってきて私は前世の知識を活かした演説?を続ける。
「あのね!革命のきっかけは国民がどれだけ飢えに苦しんでいるか分からなかった王妃様の言葉なんですって!国民の叫びを訴えた人の進言を聞かなかったからなんです!」
「「国民はパンすら食べられないのです」と国民を助けようとした人の言葉に王妃様は「パンが食べられないならご飯を食べれば良いじゃない」って言ったんですって!」
「プリナ!!違う違う!!」
「あ~あ、せっかくここまで良いこと言ってたのに…」
「えっ違った?」
「ご飯じゃないだろ…」
「台無しだよ、プリナ…」
「えっ!えーっと、何だっけ…そうだ!「パンが食べられないならケーキを食べれば良いじゃない」って言ったんだっけ!?…と、とにかく国民の生活を知ろうともしなかった王妃様の返答に国民の堪忍袋の緒が切れたんですよ!!」
「…」
ちょっと間違えちゃったけれど、まぁ主にマンガで得た知識だからしょうがない!
気を持ち直して…
「えーとですね、つまり私が何を言いたいかというと、貴族も平民も皆で国を作ってるって事です!平民に嫌われたら貴族も王族も終わりって事ですよ!!」
ガブリエラも王子様達も打ちひしがれてしまった。ここまで皆にショック与えるつもりはなかったんだけどね。元が国民主権の国に生まれた人間だからね!ガブリエラの言葉にいい加減頭に来たんだよ!
「…私達はそろそろ行こうか」
「そだね。…ウィル様、ダニエル様、セルゲイ様、シャルル様、ロベルト様。私達はお先に失礼します」
「……あぁ」
私達は貴き身分の方々を残して寮へ帰った。
「プリナ、さっきちょっとカッコ良かった」
「エヘヘ。ホント?」
「…でも人に聞かせる時は内容を間違えないようにね?」
「はぁい。ごめんなさい」
「これでどこの国か突っ込まれたらどうする?」
「遠い国で誤魔化すよ!大丈夫!バレないって」
「…プリナは本当に行き当たりばったりなんだから」
私達はそれぞれの部屋に帰った。
悪役令嬢もこれで少しは改心してくれたら良いな…。




