52)無事に帰って来れました
私が目を覚ましたのは翌日の午後だった。
「プリナ!!気分はどう!?目覚めて良かった…!」
メリザが私の手を握っていて、カロは壁に寄り掛かり、ポリーとイルクは私のお腹の辺りで眠っていた。
「プリナ…1人にしてごめんね…。無事で本当に良かった…」
「…心配かけてごめんね…」
声が掠れて言葉にならなかった。
「プリナ、水飲んで」
未だボンヤリした頭でカロに身体を支えられて水を飲んだ。身体に染み渡っていく感じがする。
「…ありがとう」
やっと小さな声を出せた。
「今までのこと教えて…」
「先に診察受けてからな?今医者を呼んで来るから」
その後医者が来て診察を受けて、寮母さんが温かいスープを持ってきてくれたのでゆっくり食べた。ピッチャーにレモン水を用意してくれて一生懸命飲んだ。やっと頭がハッキリしてきた。
私はカロにお姫様抱っこで居間に連れて行ってもらい目覚めたポリー達も一緒に話を聞くことにした。
「重いでしょ?ごめんね…。ふふ、私、人生2度目のお姫様抱っこだ」
「…もう何度もしてるよ」
「今何か言った?」
「…何でもない。気にすんな」
皆から聞いた話は…
・私はクラスメートの女の子と別れてから教室に戻って来なかった。
・直ぐに彼女を問い詰めたけれど、彼女は私と研究室の前で別れてその後は知らないと言った。
・研究室に探しに行ったけれど私は見付からなかった。
・夕食の時間になっても戻らず、シャルル様が彼女を問い詰めたところ彼女は
「見知らぬ男性にナンパされて着いて行った。後ろ姿しか見ていないので誰だか分からない。その男性と逢い引きしているのではないか」
と言った。
・皆もシャルル様も彼女の話は信じなかったけれど、学園の判断で門限時間までは待つことにした。
・それでも戻って来ず、不在の男子生徒がいないか点呼をしたが全員揃っていて該当者は誰も居なかった。
・校門には門番がいて学園を出た形跡がなかったためウィル様が学園内捜索隊を結成した。
・研究室棟をメインに探したが見付からなかった。
…そして今は誰も使用していない取り崩し予定の旧館を捜索したところ、地下から物音が聞こえてきて駆け付けたら鍵がかかっていたためカロがドアを蹴破った、とのこと。
私が見付かったのは日も昇った翌朝だったそう。
「オレらもウィル様達も皆プリナが見付かるまで一睡も出来なかったよ…」
「本当にごめんなさい…」
「無事に見付かったんだからもう良いの!プリナが見付かるまで生きた心地がしなかったよ」
「本当に…。カロがプリナを抱えて戻って来た時は皆で泣き崩れたんだよ…本当に良かった…」
直ぐに医者が診察して、極度の疲労と軽い脱水状態と診断されたそうだ。
「…私、旧館にいたの?」
「ああ。立ち入り禁止で鍵もかかっているからプリナがいる可能性は低いと判断されて後回しになっちゃったんだよ」
「プリナはどうしてあんな場所に行ったの?」
私は事の経緯を伝えた。…皆の顔がどんどん険しくなっていく。
「あの女…!!!」
「誰だ!その男!!!許さない!!!絶対にボコボコにしてやる!!!」
皆の怒りが落ち着いてから、話を続ける。
「その男はあの女の差し金か?」
「まぁグルだろうね」
「あの女に指示した人間は誰だろう」
「何で誰も入れない旧館の鍵を持っていたのか、どうして建物の中の事を知っていたのか…」
「…分からない事ばっかだね…」
「あの女、プリナが知らない男にホイホイ着いて行った尻軽女だって言ったのよ!?許せない!!!」
「ウィル様達ももちろん信じてないよ!?もしも下らない事言ってくる奴がいたら私達が片っ端から叩きのめすから!!」
「…ありがとう」
「…プリナ、まだ身体が辛いだろ?もう少し休め」
またカロに抱き上げられてベッドに戻った。
私が布団に入るとカロは私の頭を優しく撫でてくれる。
「来てくれて、見付けてくれて、ありがとう」
「守るって言ったのに…守れなくてごめん…」
「もう…ちゃんと守ってくれたよ?ありがとう」
「…今はゆっくり休んで」
カロは私のおでこにキスをした。
小さい時はいつも父さん、兄さん、姉さんもこうして寝る前にキスしてくれたっけ。
「ふふふ、カロお父さんみたい」
私が笑うと顔をしかめた。
何で?大好きって言ったのに。
「…良いからさっさと寝ろ」
「うん」
「…お父さんだって。カロ気の毒に…」
「カロ、頑張れ」
「うるさいよ、2人とも」
「私達も部屋に戻って寝ようか」
「そうだね。安心したら眠くなってきたよ」
「…カロもちゃんと部屋に帰るんだよ?プリナを独り占めしたいだろうけど」
「そうそう。プリナにずっと着いていたい気持ちは判るけど、カロが一番寝てないんだから」
「…分かった」
私にも皆にも長かった1日がやっと終わった。




