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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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51)家族ぐるみの新しい友達

ノートの運搬自体は問題なく終わった。

階段を昇ったり降りたり、渡り廊下を通ったり。案内されてもいない研究室棟の中をよく迷わず歩けるなぁ…とは思ってた。


「ここですわ」


案内された研究室に入り机の上にノートを置いた。


「私は鍵を返却するので職員室へ参ります。あなたには教室に戻る近道を教えて差し上げますわね」


近道があるなら最初からそっち使えよ…と心の中で突っ込む。とは言えここまでの道のりを迷わず戻れる自信もなかったので教えられた道を行くことにした。


「ちょっと、そこの君!」


歩いていると知らない男の子に声を掛けられた。


「私ですか?」

「そう、君。荷物を運ぶのを頼まれたんだけど両手が塞がっててさ、ドアを開けるの手伝ってくれる?」


見ると確かに彼は大きな箱を両手で抱えていた。


「それくらいなら良いですよ」

「助かる!場所はここの地下なんだ。着いてきて!」


そして階段を降りて、ある部屋の前で立ち止まり言われた通りドアを開けた。すると、


ドンッッ!! っと背中に衝撃があって、振り向くと箱ごと部屋に押し込まれた。そしてそのまま鍵を閉められ閉じ込められたのだった。


「…ここはどこだろう?」


彼は地下と言ってた。確かに窓が無い。

物置部屋のようで辺りは荷物が散らばっている。部屋の電気を探して付けたけれどほの暗い。

ドアに耳を当てて外の様子を伺うも人のいる気配が全くしない。


「かくれんぼならこないだ皆とやったのにな…」


とりあえず丈夫そうな箱に座った。


「誰か見付けてくれるかな…」


皆はクラスメートを追及するだろうけれど、彼女がこの場所を知ってるかどうかは分からない。

彼女が仕組んだのは間違いないと思うけど、閉じ込めた彼との関係も分からない。

クラスメートは実行犯だけど誰が差し向けたんだろう?ガブリエラ?ミサキ?それとも他の人?一緒にいるところを見たことが無いのでミサキの取り巻きではないと思うけれど…。



どの位時間が経ったのかな。窓も時計も無いから時間の経過が分からない。


「お腹空いた…」


部屋の中を探したけれど食べ物は無さそう。人が使っていた様子も感じられなかった。


すると物陰から素早い動きでネズミが出てきた!


「きゃあぁぁ!ネズミ!!!」


ネズミは農家にとっては収穫物を食い荒らす天敵だ!

咄嗟に箱の上に乗り上げて逃げた。

ネズミは部屋の角からじっと私を見てる…。


「…騒いじゃってごめんね。別にあなたが嫌いな訳じゃないの」


話し相手もいなかったのでネズミに話し掛ける。


「あなたはこの部屋の住民なの?ここが何処だか分かる?」


チーチー。


「…ごめんね。あなたの言葉は分からないや」


チーチー。

キーキー。


声が増えた。

するともっと大きなネズミや小さなネズミが出てきた。


「家族で住んでたんだね。お家にお邪魔しちゃってごめんなさい」


ネズミはしばらく部屋の隅に固まっていたけれど少しずつ私に近付いて来てくれた。


「側にいてくれてありがとう…」


皆も心配してくれてるんだろうな。

早く安心させてあげたい…。

早く皆に会いたいよ。

心細くなって涙がポロポロ出てきた。


「うーっ…」


嗚咽が混じる。


「怖いよぉ…寒いよぉ…お腹空いたよぉ…」


どうしよう。涙が止まらない。

いつ皆が迎えに来てくれるか分からないから、こんな泣き顔を見せたくないのに。


私が箱の上に体育座りで泣きじゃくっていたらネズミが私の周りに来てくれた。


「慰めてくれてるんだね。ありがとう。優しいね」


ネズミをそっと撫でた。

…ネズミって病原菌とか持ってるんだっけ?触って大丈夫かな?

良いや。病気になっても。

こんなに優しくしてくれてるのに自分勝手な人間だな…。



だんだん身体を起こしているのも辛くなって箱の上で横になって丸くなった。


「疲れた…」


ネズミ達は箱から降りてドアを家族皆でガリガリ削り始めた。


「助けようとしてくれてるの?…ありがとう…」


私はガリガリ削られる音を聞きながらだんだん意識が遠退いていった。




バターン!!と大きな音が聞こえた。


「プリナ!!?やっと見付けた…!!!」


カロだ。

カロは私をギュウと強く抱き締めた。


「どうやって此処が分かったの…?」

「イルクとダニエル様、セルゲイ様で手分けして探してたらガリガリ音が聞こえたんだ。それでドアを蹴破ったら…プリナがいた」

「ネズミさんの家族が助けてくれたの…」

「…そうか」

「皆は…?」

「メリザとポリーはプリナの部屋で待っててもらってる。シャルル様は念のため教室に居てもらった。ウィル様は執務室で医者の手配とか警備の人間を集めたりしてるよ」

「…そっか…。カロ、見付けてくれてありがとう。…カロ?」


カロはずっと強い力で私を抱き締めたまま離さない。震えてるのが伝わる。


「ごめんね…」

「…何でプリナが謝るの」


カロの顔を見上げるとカロが泣いてる。

私はカロの頬に手を触れる。


「泣かないで…」


カロがもっと強く抱き締めた。

カロはいつでも温かいね…。


遠くから足音が聞こえる。


早く皆に会いたい。

私は大丈夫だったよって安心させてあげたい。





そのまま私は眠りに落ちた。

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