44)イベント回避のためには
翌日。
私達は早起きして皆が移動する前に教室へ行った。
早朝の構内は当然誰も居ない。
「よし!ミッションコンプリート!」
無事に生徒手帳をミサキの机に返却出来た。
「眠い…」
「お疲れ様。じゃ、まだ早いけど食堂へ行こうか」
「皆、付き合ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
皆で食堂のテーブルに着く。
ミッションを終えてもまだ早い時間で食堂はガラガラだ。
「次はどんなイベントか分かる?」
「エクレア情報によると…。庭園だとウィル様、図書館でロベルト様、音楽室でシャルル様、美術室でダニエル様、体育館でセルゲイ様のイベントがあるって。主人公が何処に行くかでキャラとのイベントが発生するみたい」
「ウィル様と庭園で2人でお茶した覚えがある!」
「ロベルト様に本を取ってもらって話した…と思う」
「シャルル様は自分のためだけにバイオリンを演奏してくれた気がする、ダニエルは一緒に絵を描いたと思う」
ポリーは顔が好みでダニエル様を攻略したと言ってたのに、実際にダニエル様と知り合ったら超塩対応になったね…。
「皆よく覚えてるね!すごいねぇ」
「いや、エクレアが場所言ってくれたからな。ロベルトと図書館ってヒントがあったから思い出せたんだよ」
「なるほど…」
「私もそうだよ。放課後に主人公が何処に向かうかなんだよね。選択肢イベントなの」
「ふぅん」
私はイルクが差し出したフォークのエビを食べながら聞いていた。
「ヒントが「放課後」だけじゃいつイベントが起こるか分からないね。ここはスルーかな」
「ミサキを常に監視する訳にもいかないし、ってゆーかミサキの行動なんてどうでもいいし」
「ミサキじゃなくて攻略キャラのウィル様達の行動を把握すれば良いんじゃない?」
「そうだね。ウィル様に予定を聞いたら喜んで教えてくれそうだ」
ポリーがバゲットを一口大に千切っては差し出してくるのでモグモグ食べて口を挟めない。
「じゃあしばらくゲームを気にしないで好きに過ごせるってこと?」
メリザがくれたベビーコーンを食べながら皆に聞いた。
「…プリナ、もう無意識だろ?」
「何?何の話してるの?」
「…何でもない」
カロは何だかため息をついてる。
「まぁ次のイベントに関しては王子様達から情報を得るしかなさそうだな」
朝食を終えて教室へ向かっていると廊下でウィル様、ダニエル様、セルゲイ様に会った。
「プリナ!良いところで会えた」
「ウィル様!どうしました?」
「今日はやっと時間が取れたんだ。皆で夕食を一緒にどうかな?」
「私は大丈夫です。…皆も平気?」
メリザ達が笑顔で頷いた。
「では今夜迎えに行かせるから。楽しみにしているよ」
「僕達も楽しみだ」
「また遊ぼうな!」
ウィル様達が去って行くのを見送って教室へ入る。
「…また食事会だって」
「ウィル様メチャクチャ嬉しそうだったね」
「こないだの食事会が楽しかったんだな。オレらも楽しかったけどさ」
・・・・・・・・・・・・
私達の様子を少し離れた場所から見ている人がいた。
「…あの者達は誰?」
「隣のクラスの平民共です」
「…何故殿下と親しげに話してるの?」
「…すみません。分かりません」
「あの者達の名前を調べなさい」
「畏まりました、ガブリエラ様」
・・・・・・・・・・・・
放課後。
帰り支度をしているとエクレアが1人で私達のところへ近付いてきた。
『今日ガブリエラにプリナ達について聞かれたよ。ウィル様に近付く平民達の名前を調べなさいってね』
「えっ!?」
『ごめんね、私もガブリエラから命令されたら拒否出来なくて。私じゃなくてもいずれは分かる事だから名前を教えたよ』
『それは仕方ないよ。気にしないで』
『今日廊下でウィル様達と話してるところを見掛けたらしいよ。こないだもクラスが違うのにわざわざこちらのクラスに来てた事も知ってプリナに目をつけたみたい』
『ああ…なるほど』
『私で出来る範囲で抑えてみるけど。ガブリエラとその取り巻き達にはくれぐれも気を付けてね』
『分かった。ありがとう。私にこうして伝えるのも勇気がいったでしょ?』
『ガブリエラとクラスが離れた事で割と自由になれたから。でもガブリエラは筆頭公爵家の令嬢だから誰も逆らえないの。ごめんね…』
エクレアは周りに気付かれないようにそっと私の手を握ったので私も握り返した。
「ではごきげんよう、皆様」
「ごきげんよう、エクレア様」
エクレアが自然な動作で私達から離れて、他の貴族の子達と帰って行く。
どうやら私自身にイベントが発生するようだ。
…トラブルと言う名の。




