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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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41)プリナの夢

どれくらい泣いていたのだろうか。30分ぐらい?1時間くらい?もっと?


「プリナ」


優しく私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

カロとイルクが手にランタンを持って側に歩いて来た。


「1人で大丈夫だって言ったのに…」


泣いた事で冷静になれたので心配して森まで来てくれた事を素直に受け入れられた。


「ありがとう…」

「お、ホワイトタイガーもいるのか」

「カラス、久し振りだな」

「プリナの側にいてくれてありがとな」

「大蛇もありがとう…うわぁ!!」


2人は私の側に座って森の住人達に話し掛ける。ヘビは頭を撫でたカロにギュウと抱き着いた。


「…落ち着いた?」


お母さんトラの頭を撫でながらイルクが言った。


「だいぶ」

「…そっか」


「帰ろう。メリザもポリーも本当に心配してるよ。ここにいる皆と同じ位。一緒に森に行くってきかなくて止めるの大変だったんだぞ?」

「…うん」


カロが先に立ち上がって私の手を引っ張って私も立ち上がった。


「みんな、ありがとう」


森の住人に見送られながら、カロとイルクに手を繋がれて寮に帰った。



「プリナ~!!」

「帰ってきてくれて良かった!!」

「心配かけてごめんね…」


部屋に戻るとメリザとポリーが泣きながら飛び付いてきた。2人と一緒にまた私も泣いた。


私の眼が真っ赤で他の人に見られたくなかったので夕食は皆だけで行ってもらった。鏡で見てみると古代遺跡の人形のように目の周りが腫れて目が開かなくなっていた。


「これはひどい…」


温めた方が良いのか冷やした方が良いのかタオルを手にして悩んでいると窓をコツコツ叩く音がした。


窓に近付くとフクロウがいた。


「あなたはいつも部屋の前の木に来てる人!?」


人じゃないけど。


窓を開けるとフクロウは私の部屋に入ってきて私の腕に留まった。


「ごめんね…最近は夜に窓を確認してなかったけど、いつもずっと来てくれてたの…?」


フクロウは嘴に何かを咥えていて下ろすとそれを私に差し出した。


「何だろう…?ってきゃああ!!ネ、ネズミ!!?」


私が飛び上がって尻餅をついて後退するとフクロウはピョンピョン飛んで私の前まで来た。瞳がキラキラしてる。あ、これは家の犬と同じだ。「褒めて褒めて」って言ってる!


「…もしかしてお見舞い持ってきてくれたのかな…?うん、ありがとう…でもこれはあなたのご飯でしょう?ちゃ…ちゃんと食べてくれるかな…?」


フクロウはしょんぼりした。


「あなたの気持ちは嬉しいよ?とっても。でも私は食べられないから…ええと、心配してくれてありがとう」


頭を撫でるとフクロウは目を閉じて気持ち良さそうに頭を寄せてきた。そしてネズミを丸のみするとまたすり寄ってきた。


「あなたもずっと私を見守っていてくれてたんだね。…でも何で?あなたは私をいつから知ってたの?」


フクロウは私から離れると窓から外へ飛んで行ってしまった。

フクロウの知り合いはいないんだけど、何処かで出会っていたのかな?考えても分からない。


「プリナ!ただいま!食堂でプリナのご飯もらってきたよ!お腹空いたでしょ!?」


皆が部屋に戻ってきた。急いで戻って来てくれたんだね。何だかまた泣きそう。皆が心配しちゃうからもう泣かないけれど。


私の夕食はまだ温かいハンバーガー。パテが分厚くて食べるのが難しい!挟んであるトマトに苦戦していると皆が私の顔を見て吹き出した。


「ケチャップ付いてるよ」


メリザが私の口周りを拭いてくれた。

いっつも子ども扱いなんだから。


ボリュームのあるハンバーガーを2つ食べ終わってから、皆に職員室での事を話した。


「…プリナに似た3歳の女の子かぁ。可愛いんだろうな~!!私も写真見たい!!」


メリザの言葉に笑っちゃった。


「…プリナはそんなに泣くほどショックだったの?」

「…分かんない」


ポリーの入れてくれたホットミルクをコクコク飲んで考える。


「…私もかの子の話を聞いて自分の事を考えたんだよ?」

「うん」

「私もプリナとして農家の子に生まれて、ずっと村で一生生きていくんだと思ってたし一生農民でいるんだと思ってた」

「うん」

「でもね…私はちゃんと好きな人のお嫁さんになりたい。ちゃんと恋をしてお互い大好きだと思える人と結婚したいと思ったの。それが前世でも出来なかった事なの」

「…それがヨーカン先生だったの?」

「分かんない。でもプリナ・ヨーカンになりたかったよ」

「………」

「結婚式は村の伝統的な民族衣装じゃなくて真っ白なウエディングドレスが着たかった」

「……………」

「先生と結婚したらこのまま王都に住むことになるのかな、って。そしたら家族皆を王都に招待しなきゃ、とか」

「…………………」

「先生と結婚したら…先生は歴史の先生だから私も一生懸命勉強して一緒に研究したりするのかなって」

「………………………」

「そんなことを夢見たの」



「……よく分かった」

「?」

「…プリナの恋愛観、結婚観が小学生並だってことが」

「………は?」


失恋したての私にいくらなんでも酷すぎない!?


反論しようとするけど皆ウンウン頷いてるし!!


「もう今日は早く寝ろ」

「前世でも初恋は実らないって言われてるでしょ?さっさと初恋終わらせられて良かったじゃない」

「…皆もっと私を慰めてくれても良いんだよ?」

「要らない要らない」


そうですか。私の失恋はそんなに軽いですか。


「ほら、さっさと寝ろ」

「そうそう!一晩寝れば明日にはスッキリしてるって!」

「そうだよ。早く寝な」


皆が部屋を出ていく。

森の皆の方がずっと優しかったよ!?


最後に出て行こうとしたカロが立ち止まってドアの前で振り向いた。


「…なあに?」


いつものように私の頭を撫でる。


「プリナ自身が3年あるって言っただろ?」

「…言ったね」

「焦んなくていい。ユックリ好きになりな」


皆が居なくなって静かになった。


私はお風呂に入ってから冷たいタオルを目に被せてベッドに入った。


皆が言う通り今日は早く寝よう。


まだ胸は痛むけど、早く元気になろう。



私の初めての恋はそうして終わった。



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