40)たった1日で終わりました
翌朝。
私はメリザ、ポリーと一緒に起きた。
昨夜は2人が私と一緒に寝てくれたのだった。家のベッドよりはずっと大きいけれど、さすがに3人で眠るには狭かった。真ん中で寝た私は寝返りも打てなかったので身体がカチコチだ。
「おはよう、プリナ。よく眠れた?」
「おはよう。2人のお陰でグッスリ眠れたよ!ありがとう」
「それなら良かった。うふふ、3人だとちょっと狭かったね」
順番に顔を洗って2人は着替えるために部屋へと戻って行った。念のため湿布を貼ってもらった足は腫れもなくて普通に歩けた。ちょっと捻っただけだったしね。
朝食を終えて教室に入った。
「ごきげんよう!体調はもうよろしいの?」
「エクレア様!おはようございます!もうスッキリバッチリです!」
「それは良かった!でも無理はなさらないでね」
「プリナ!大丈夫か!?心配したぞ!」
「シャルル様!おはようございます!お陰さまでスッキリバッチリです!ご心配お掛けしました」
「元気なら良いんだ。何かあれば直ぐに言ってくれ」
「ありがとうございます」
高位貴族のシャルル様やエクレアが声を掛けてきてくれた事で他のクラスメート達も次々に声を掛けてきてくれた。まだ入学3日目なのに目立っちゃうよ。私は未だ他のクラスメートの顔も名前も覚えてないのに…。
「プリナ!」
今度は誰だ!
振り返ると皆が道を開けてウィル様とセルゲイ様、ダニエル様がやって来た。
「ウィル様!おはようございます」
「プリナ!ああ、おはよう。昨日倒れたとシャルルから聞いて本当に心配したんだ。私も直ぐに見舞いに行きたかったのだが…すまない」
「ご心配お掛けしてすみませんでした。お花、ありがとうございました」
「プリナ、無理はするなよ?」
「ダニエル様、ありがとうございます」
「プリナ。元気になって良かったな」
「セルゲイ様も…皆さんありがとうございます」
そういえば皆さんいつの間にか私のこと呼び捨てだ。皆で遊んだ時からかな?私は気にしないけど、これって問題ないのかなぁ。
さすがに王子様達が揃って私に声を掛けたので周りのどよめきが凄い。学校では距離を置こうと密かに考えていたのだけれど王子様達は皆の前で親しい事をアピールしてきやがった!人の気も知らないで!もうヒッソリと地味に学園生活を送るというのは絶望的だな…。
なんて心配してわざわざ隣のクラスから来てくれた友達に対して言う事じゃないね。反省。
私が王子様達と親しいと思った知らない人達が続々話し掛けて来て超ウザイ。ウィル様が声を掛けてくる前に話し掛けて来てくれた人達はまだ好意的だったけれどウィル様後の人達は明らかに違った。貴族に対して失礼しちゃいけないと思うとスルー出来ないけど下心アリアリの人の相手をするのはキツい!早く授業始まって!!
「どうしよう…プリナの顔がどんどん険しくなっていく…」
「可愛いプリナのおでこにアオスジが…」
「…この状況じゃなぁ。さすがにプリナに同情するよ」
「オレらじゃ追い払えないしなぁ…」
そこへ鐘がなってやっと周りの人達が離れて行った。ふぅ。やれやれ。
「皆さんおはようございます」
かりんとう先生!ああ、1日振りに見る先生は輝いて見える…!食堂でウィル様達を見て感嘆していた皆さんごめんなさい!!皆さんの気持ちが理解出来ました!
「プリナちゃん、体調は大丈夫?何かあれば直ぐに言うんだよ?」
「はい!先生!ありがとうございます!」
先生が教室を出る前に声を掛けてくれた!プリナちゃんだって!!きゃあ!!
朝から先生と話せて幸せ!!きっと今日の運勢は最高に違いない!
「プリナって分かりやすいな」
「バレバレだよね…」
「前世じゃマンガや小説好きだったみたいだし教師と生徒の禁断恋愛だ~とかシチュエーションに萌えたりしてんじゃない?」
「そこまでは考えてないよ、たぶん」
休み時間。
かりんとう先生に会いに…じゃなかった、質問をしに職員室に駆けていく。
「先生!質問良いですか?」
「プリナちゃんか。どうぞ?」
「あのさっきの授業で…」
そこで先生の机に飾ってある写真に眼が留まった。
「…先生。この写真は…」
「え?…あぁ、僕の娘だよ。恥ずかしいところを見られちゃったな」
「…お子さんがいらしたんですか……」
「うん。3歳なんだけど可愛い盛りでね!僕の天使だよ!抽斗にも写真があるんだけど見るかい?」
ニッコニコで先生がいくつも写真を見せてはお子さん自慢をしてくる。私がアリルの話をするのと同じだ…。
「プリナちゃんは僕の娘とソックリでね。よく動き回ってクルクル表情が変わって」
「私はお子さんと似てるんですか…」
「うん!僕のお姫様にソックリだよ!」
3歳児とソックリとか。
あぁ、「お姫様」ってそういう意味だったのか…。
私は質問も忘れて教室へと帰った。
「プリナ、今日は1日変だよ?何かあったの?」
「え…?」
声を掛けられた事に気が付くと私は自分の部屋にいた。
「休み時間に教室に戻ってきてからずっと変だよ?私達が話し掛けても上の空だし」
「シャルル様が話し掛けてきてくれても聞いてないし」
「食堂でウィル様が声を掛けてきてくれたのにも気付かないで行っちゃうし」
何も覚えてない。
「…ごめんなさい」
「謝らなくて良いけど、一体どうしたの?」
「…ヘビさんに会ってくる」
「えっ、今から森に行くの!?もう夕方だよ!?危ないよ!!」
「…行く」
私は立ち上がって部屋を出ようとするとポリーに腕を採られた。
「待って!行くならカロ達も呼んでくるから!その前に制服着替えなきゃ!!」
「1人で行く。心配しないで。大丈夫だから」
「プリナ…」
私は着替えて今度こそ森に出掛けた。
「ヘビさん…」
私が沼の畔にしゃがんで声を掛けると沼からヘビがあがってきた。
「ヘビさん…私、失恋しちゃった…」
私がボロボロ泣き出すとヘビが身体に巻き付いて抱き締めてくれる。
「ヘビさん…」
私はヘビの身体を抱き返してワンワン泣いた。
「カアッ」
「カラス?…カラスも来てくれたの…?」
カラスの身体を撫でる。
カサッと音がして振り返るとイグアナも来てくれた。
「イグアナさんまで…ありがとう」
イグアナの頭を撫でる。
ガサッと大きな音がして音の方向を見るとトラの親子も来てくれた。
「うぅ~、トラさんも来てくれたの…?皆ありがとう…」
お母さんトラは私の顔を舐めて涙を拭いてくれる。
私は優しい森の住人に囲まれて涙が枯れるまでずっと泣いていた。




