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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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4)私と家族とご近所さんと

前世の記憶を取り戻した私は魔法が使えないかとか精霊の声が聴こえないかとか前世の小説で得た知識を駆使して色々と試してみた。


結果、特別な才能や能力がないことが判った。


文字は日本語や英語とは違うため学習速度は周りと同じだったが数学知識は活かされた。そりゃ微分積分みたいな難しいレベルは学生時代は赤点の私には無理だけれど村人のレベルどころか王都の貴族にも負けないと褒められ村評判の秀才と呼ばれるようになった。四則演算程度で神童扱いされてもね…。数学は異世界でも通用するんだな。学生時代にもっとちゃんと勉強しておけば良かった。高校では文系選択しちゃったしね。文系知識は異世界ではほとんど役に立たない事がよく判ったよ…。


「クートンさーん!こんにちはー」


我が家から30分程歩いたところにお隣さん宅がある。


「おおプリナ、いらっしゃい」


藁を抱えたクートンさんが笑顔で挨拶してくれた。体と同じように大きな心の優しいオジサンで私は大好き。まぁ嫌いな人もいないんだけどさ。


「ウチのチーズ持ってきたよ」

「ありがとな。今日は何を持ってくかい?」

「ミルクがいっぱい欲しい!あとチーズはね…」


前世を思い出したら家の山羊より牛乳と牛のチーズの方がやっぱり好きなんだよね。家族には言えないけれど。


「歩いて疲れたろう?お茶でも飲んでくかい?」


と家に誘ってくれたのでお邪魔することにする。クートンさんのお家はお子さんが皆独立して奥さんと2人で生活していて、近所にお子さんが別居して家業を手伝っている。


「プリナ、悪いが商会に商品を卸すので書類作るの頼めるかい?」

「良いよ~。計算なら任せて」


クートンさんは計算が苦手なのと字が汚いので書類作成は苦手なんだって。私は前世じゃ書道習ってたからね!この世界じゃ特技にも書けないけれど。この世界ではペン先にインクを付けて書くのが主流だ。貴族になると映画で見たような羽ペンを使うらしい。村じゃ見たことないけれど使い勝手が悪そうだ。

書類作成を手伝ったお礼にと多めのチーズと牛乳を頂いた。さすがに重くて1人じゃ運べなかったので牛車で家まで送ってくれた。お手伝いで時間が遅くなったから家まで送ってもらえたのは有りがたかった。


「コレッタ商会がプリナの書類の出来栄えに感心してたよ。そのうち商会から仕事の依頼が来るかもな」

「うーん、お手伝いなら出来るけど家の仕事もあるからなぁ。ま、頼まれたら家族で考えるよ。わざわざ送ってくれてどうもありがとう。クートンさんも気を付けて帰ってね」


牛車が遠くなるまで見送ってから家に入った。


「ねぇちゃ、おかえりなさい!!」


ドアを開けて直ぐに私の天使が飛び付いてきた。両親も既に仕事を終えテーブルに着いていた。


「お帰りプリナ。ずいぶん沢山頂いたね」

「そうなの!クートンさん家の書類作るの手伝ってきたからお礼だって」

「これだけチーズがあれば当分助かるね。牛乳は日持ちしないけどどうするんだ?」

「大丈夫!私が全部飲むよ」

「お腹壊すよ、プリナ…」


家族で食事を終えた後自室に行く。前は姉ちゃんと同室だったが結婚を控えた姉は部屋での作業もあり別室になったのだ。当然だがこの世界に電気はない。明かりはランプか蝋燭だ。でもこの暖かい灯りが私は好きだ。


今夜も精霊の声が聴こえないか、日課になった瞑想をしているとドアをノックする音が聞こえた。


「プリナ、ちょっと良い?」


モーラ姉ちゃんが訪ねて来た。

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