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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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39)ゲーム後の私達の未来について

遅い夕食を食べた後、先に食事を済ませたカロとイルク達とラウンジで合流した。エクレアは私の部屋で話した後は自室に帰っていった。


メリザはミントティー、ポリーはレモネード、カロはコーヒー、イルクはクリームソーダ、私はココアを注文した。


エクレア達と話し合った事で私も皆も騒げる気分じゃなくて会話も少なかった。


最初にメリザが頬杖をついて話し出した。


『さっきのエクレア…かの子さんの話を聞いて私も考えたの』

『うん』

『今の実家は洋品店だし洋服を作る事が好きだから、いつか王都で自分のお店を持ちたいって夢は変わらないんだけどね』

『前に言ってたね』

『前世のお祖母ちゃんが和裁をやってて私もお祖母ちゃんに教わって着物を作ってたの。入院中は暇だったからベッドでずっとチマチマ手縫いしてたんだ』

『すごいね!私は学校の家庭科の実習で浴衣は作った事があるけど先生がビックリするくらい下手だったよ…』

『ふふ、浴衣なら今でも作れると思う。ただ帯が無いのよね…』

『さすがに帯みたいな織物は難しいかもね』

『私は入院中で成人式も出られなかったの。お祖母ちゃんが私の振り袖を作ってくれていたのに…』

『…今日子ちゃんのおばあ様も楽しみにしてただろうね…』

『うん…。だから、この世界で着物を着てみたいなって思ったんだ。そして私の手でこの世界に着物を広めたいの』

『反物はこの世界で探せるかな…?』


メリザが今日子ちゃんの意思も込めて見付けた夢を応援したい。でも着物か…。簡単じゃないだろうな。


『先ずは浴衣にチャレンジしてみるのはどう?』

『え?』

『前世の日本の常識に縛られなくても良いんじゃないかな?帯の代わりに幅のあるリボン使うとか。ほら、子ども用の浴衣ってヒラヒラの帯を蝶々結びにして着るじゃない?それを応用するの!』

『!なるほど…』

『着付だって、子どもの浴衣には中に紐が付いてて紐を両側で結ぶでしょ?大人用にも紐を付けたら誰でも着られるよ!前世のルールなんて無視したってこの世界の人には誰も分からないんだから。前世の海外有名ブランドも着物チックなヘンテコなドレスを作ってたし!』

『…そっか!そうだね!思い付かなかった!!桃子ちゃんすごいね!!』

『ダンスパーティーに浴衣で行くのは難しいけど、終業式イベントには皆で浴衣で行っちゃおうか!』

『それ面白そう!私皆の浴衣を作るよ!』


メリザは新しい目標を見付けて目がキラキラしてる。


『卒業式には袴を作ってみるのも良いかもね!この3年でどこまで実現させられるか分からないけど、前世の私と今の私の人生かけて挑戦する!』


メリザが今までよりももっと良い表情をしてる。

するとずっと私とメリザの話を聞いていたポリーが口を開いた。


『私も今までポリー・ヘレスとしての将来しか考えてなかったけど、かの子さんの話を聞いて私も考えちゃった。私は交通事故だったけど、突然人生が終わっちゃった「高橋あゆみ」は何をしたかったかなって』

『…うん』

『大学生になりたかったし私も成人式で振り袖着たかったよ』

『…………うん』

『私は高校生でまだやりたい事も見付けてなかったから、これからポリーとして学生をやりながら探そうと思う。メリザと一緒にお店作るのも楽しいかも!今の実家は商家だから家を継ぐ時に自分の好きな商売をしたって良いじゃない?』

『ポリーはあんなに嫌がってた家業を継ぐの?』

『私が嫌だったのは親の言いなりになって結婚して商会を継ぐっていう規定路線だから。自分で決めてお店を継ぐならそれもアリかなって。結婚相手は何がなんでも変更したいけどね!』

『私達、まだ入学して学生生活スタートしたばっかだよ?卒業するまで3年もあるんだもの、皆で一緒に未来を考えていけば良いよ』

『ありがとう、桃子ちゃん』

『卒業してもポリーとずっと一緒かぁ。ふふ、楽しそう!私達でこの世界にファッション革命起こせるかもね!』


メリザこと今日子ちゃんとポリーことあゆみちゃんは手を取り合って微笑み合う。


次にコーヒーを飲み干したカロが話し出す。


『オレはこの世界に生まれ変わってずっと今の家業継いで靴職人になることしか考えてこなかったから…かの子さんの話は正直重かった。オレも「小林英雄」の人生でやり残した事がなかったか、カロト・モグワンとしてもう一度ちゃんと考えてみるよ』

『…今度の人生はホワイトな職場で働けると良いね』

『…そうだなぁ。職人になったらかなりブラックかもな』

『カロには長生きして欲しいよ?…今度こそ』

『…ああ。ありがとな、桃子』


カロはいつものように私の頭を撫でて笑った。


するとイルクが突然泣き出した。


『オレは…ミュージシャンとして成功したかった。音楽一本で生きていきたかった』

『…うん』

『オレは最近前世の記憶を思い出したばっかだし正直まだ戸惑ってるけど。イルク・ダナールとしても音楽がやりたい』

『……うん』

『こないだ街へ行った時は楽器屋で何も選べなかったけど、音楽の道で生きられないかジックリ考えてみるよ。かの子さんと同じでこの世界で今度こそ成功したい。卒業までにイルクとして他にやりたいことが見付かるかも知れない』

『…そうだね。前世なら私達高校1年生だもんね。15歳で将来なんて考えられなかったもんね。私は高校生どころか大学生でもやりたい事を見付けられなかったよ?ううん、社会人になってもやりたい事を見付けられなかった。働きながら探すことだって出来たかも知れないのに』

『桃子さん…』

『前世の記憶を踏まえてこの世界でやりたい事を探して見付けて生きていけば良いんだよね!コウ君、私と一緒に探そう!』

『はい!』


『皆と出会ってここがゲームの世界だと知って、ゲームのエンディングの事までしか考えてなかったけど、私達はその後もずっとこの世界で生きてくんだよね』

『うん。私達はこの世界で今度こそおじいちゃんおばあちゃんになるまで生きるんだよ』

『だよね。ゲームばっかじゃなくて、ゲーム後の事も考えつつ先ずは学生生活を皆で楽しもう!花のJKだもんね!』

『オレらの場合は男子だから…DKって言うの?』

『それじゃ部屋の間取りだよね』

『どの世界だろうがティーンエイジャーは悩み多い年頃なもんだよな。悩んだり迷ったらこうして皆で話そう!』

『そうだそうだ!困った時は皆で解決!これ重要』


皆で語り合っていたらあっという間にラウンジの終了時間になったので私達も部屋へと帰り出す。何だか今夜は皆と別れて部屋に帰るのが寂しい。

このまま皆と朝まで一緒にいられたら良いのに。


「プリナ?どうした?」

「何だか名残惜しくて。皆と別れたくないなって思ってた」

「…バカだな。明日も会えるだろ?毎日一緒にいるよ」


カロが私の頭を撫でながら笑った。


でも私達は突然明日が来なくなることを知ってる。私達全員が経験したことだ。

どうしちゃったのかな?今夜は切なくて何だか胸が苦しい。


「ね、ギュッてしても良い…?」

「良いよ」

「ふふ、どうぞ!」


私は皆にお願いして1人ずつ全員とギュッてした。皆笑顔で受け入れてくれた。


「プリナは甘えん坊だから」


うん。今夜は甘えさせてね。

皆大好き。

明日もずっと大好きな皆と一緒にいられますように。





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