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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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38)転生者の願い事

目が覚めると私の寝室。

昼間先生に恋して、意識を失って、熱出して…。

ボンヤリ思い出しているとメリザが部屋に入ってきた。


「あ、目が覚めた?」

「うん、たった今起きた…あれ?」

「おはようプリナ!」


隣にポリーが寝てた。


「ごめんね!!私また迷惑かけちゃった!?こないだのカロみたいに!」


こないだ熱を出した時はカロの手を離さなかったらしくて朝まで付き合わせちゃったんだよね。今度はポリーを掴んでいなかったと思うけど…。


「ううん!私がプリナと一緒に居たかっただけ!看病してたら私もいつの間にか寝ちゃったみたい。ついウッカリ、プリナの布団に入っちゃったの!きっと寒かったんだわ」

「そっか!ずっと着いててくれてありがとう」

「フフ、どういたしまして!」

「ついウッカリ、ねぇ…」


2人とも起き上がる。


「プリナ、熱は?」

「多分もう下がったよ。知恵熱みたいなもんだったから」

「それなら良かった」


居間に行くと部屋一面お花畑のようだった。色とりどりの花で溢れかえってる!


「何この花!!」

「午後にプリナが倒れて運ばれたって聞いて心配したウィル様やダニエル様、セルゲイ様、シャルル様、ロベルト様からそれぞれお見舞いの花が届いたのよ…。エクレアも心配してた」

「大袈裟だよ…恋の病なのに」

「……自分で言っちゃうのか」


「カロとイルクは居ないね」

「先に夕食に行ってもらってるよ。カロ達が戻って来たら私達も行こう」

「うん。起きるまで待っててくれてありがとう」

「良いの!やっと私も添い寝出来たし!」

「ポリー、欲望が駄々漏れだよ?」

「欲望?」

「プリナは知らなくて良いことだよ」


豪華な花を見ていると小さな花束がポツンとあるのを見付けた。


「…あぁ、それ。先生が寄越したやつ」

「先生が!?嬉しい…!」


私が先生の小さな花束を思わず抱き締めると2人は微妙な顔をした。


そこへノックが響いてドアを開けるとエクレアがいた。


「プリナ!!倒れたって大丈夫なの!?」

「エクレア!私の部屋に来て大丈夫なの?」

「同じクラスの友達が倒れたのよ!心配に決まってるじゃない!!友達のお見舞いに来て何が悪いのよ!!」


どうしよう!すごく嬉しい!


「心配かけてごめんね。あのね、これは恋の病なの」

「恋の病…?…ってプリナが!?誰に!!?」


顔が熱くなる。


「かりんとう先生…を、好きになったみたい…」

「かりんとう?……って担任のヨーカン先生!?何でまた!!!」

「エクレアもそう思うでしょ?」


皆でソファーに座り直して今日の出来事を話す。


『あんな冴えないイマイチのダサくてパッとしない普通の男のどこが良いのか……』

『そこまで羅列しなくても良くない?』

『ウィル様はどうすんのよ…』

『だから、さっきメリザ達にも話したけど、私はアラサーだった前世の記憶があるんだよ?ウィル様は私からしたらガキんちょなんだって』

『あんたも今はそのガキんちょなんだけど?』


エクレアははぁ~っ、と長い溜め息を溢す。


『私も前世は26歳だったからプリナの言いたい事もまぁ分かるけど』

『そうだよ!エクレアだって大人だったんだから、ガキンチョに恋なんてしないでしょ?』

『私は貴族として15年この世界で生きてきて婚約者もいる立場だから。イケメン観賞位しか生き甲斐がなかったのよ』

『エクレアも婚約者がいるの?』

『貴族同士の政略結婚よ。相手は同じ伯爵。卒業したら結婚が決まってる』

『…そうなんだ』

『貴族に生まれちゃったんだから、もう諦めてるよ。でもつまんなくてね~!前世は女優としてずっと夢を追いかけてたから』

『舞台女優だって言ってたよね?』

『そう。最後まで売れなかったけどね。お金がなくて稽古とバイトに明け暮れて。辛い時もあったけど夢があったから楽しかった』

『……………』

『最後の公演になっちゃったけどさ、舞台の評判が良くて打ち上げで飲み過ぎちゃったら急性アルコール中毒で倒れちゃって、私の人生おしまい!笑っちゃうでしょ?』

『………………………』

『せっかく生まれ変わったのにさ、18歳で親が決めた人と結婚だよ?18歳なんて前世じゃ親の反対押し切って家出同然で上京した歳だって言うのにさ』

『…お酒飲みながら話したいね』

『ホ~ント!飲まなきゃやってらんないよ!』


お酒は無いので皆でメリザの淹れてくれたお茶を飲む。


『まぁシナリオ通りになったら結婚も出来ないんだけどさ』

『エクレア…』

『貴族として前世じゃ考えられないような贅沢して豪華なドレス着て、それなりに今の人生も楽しんでるけどね!』

『エクレアは何かしたいことがあるの?』

『ん~そうだなぁ…。…皆もこっちに来て座りなよ』


振り返るとカロとイルクが部屋の入り口付近に立っていた。


『カロ!イルク!いつから居たの!?』

『ごめん。声掛け辛くて』

『フフ、気にしなくていーのに』


メリザが2人の分のお茶を淹れる。


『さっきのプリナの質問だけどさ、私は私の名前を遺したいんだ』

『名前?』

『そう。前世は木村かの子。女優として有名になり損ねちゃったけどエクレア・ローレンガルムとして名を遺せないかな…。何でも良いの。女優じゃなくても』

『今がエクレアで前世はかの子で。前世は和菓子、今は洋菓子で、美味しそうな名前だよね』

『違うの!!私本当は「かのん」だったんだって!親が「歌音」って名付けようとしたらババアが日本人なら子が付く名前にしろって難癖つけてかの子にされちゃったの!!もし「木村歌音」だったら女優として大成出来たかも知れないのに!!』

『……』

『何よ!?あんただって佐藤桃子でしょ?普通の名前じゃんか!キラキラネームに憧れなかったって言うの!?』

『あ~うちは前世の父が大ファンだったアイドルから付けたってお祖母ちゃんから聞いた。メチャクチャ可愛くって当事ものすごい人気だったんだって』

『うちも!!今日子の名前はパパが子どもの頃から大好きなアイドルから付けたってママから聞いた!』

『実は私も…お母さんの若い頃に憧れたアーティストから「あゆみ」って名付けたんだって…』

『オレは…父親が野球好きで。オヤジのヒーローから「英雄」って付けたんだって』

『漢字がもうヒーローって意味じゃない。それでポジションは?』

『…ポイントガード』

『は?』

『オレが子どもの頃バスケが流行ってたんだよ!だからバスケ部だったの!!どうせなら寿とか楓が良かったよ!!』

『お父さん可哀想…』

『野球部に入ったら坊主頭にしなきゃなんなかったんだぞ!?無理だろ!?』

『…イルクの名前の由来は?』

『オレは…両親が崇拝してたアーティストの曲名から「紅」の漢字にコウの読み方を当てたって』

『…皆の親の想いが伝わってくるね……』



「かの子」の話からこの世界でやりたい事を考えようと思った。

かの子は名前を遺したいって言ってた。

私は何がしたいのかな?

やっぱり前世で出来なかった事かな?

ちゃんと恋愛して、大好きな人のお嫁さんになりたい。

村に帰って同じ農家に嫁ぐんだってずっと思っていたけれど、せっかく生まれ変わってそれが本当にやりたい事なのかな…。


プリナ・ヨーカンになりたい。


先生の事を思い出してまた顔から火が出ちゃった!


先生に好きになってもらえたら良いな…。



「プリナ、遅くなっちゃったけどご飯食べに行こう!」

「うん!」



私達は食堂へ行った。








野球のポジションにもセンターが存在することに後から気付いたのでカロのバスケのポジションをポイントガードに変更しました。

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