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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
34/137

34)恵みの森

「この先はどうする?トラさん親子と会えた方を目指す?聖樹も見付けたルートだし」

「途中までは覚えてるよ?でもホワイトタイガーに着いていった先は分からないな。目印も付けられなかったし」

「イルクが覚えてないんじゃ無理だね」

「イグアナと会った道を行くか?」

「そうだね、そうしよう!」



そのあと梨の林は見付かったけれどイグアナは居なかった。そのまま先に進んでいく。


「あっ!!スイカ畑があるよ!皆でスイカ割りが出来るね!」

「地域性も季節感も考えなしかよ!おかしいよ、この森…」

「プリナ嬢、これは何だ?」

「スイカですよ!甘くて美味しいです」


お腹は膨れないけど水分補給になるな!1個で十分だよね。セルゲイ様が剣で切り分けてくれた。


「いただきます!…甘~い!」

「美味い!懐かしいなぁこの甘さ」

「プリナ、この黒いのは何だ?」

「種です。プッと吹いて下さい」


私は前世で食べ慣れてるけれど口からペッと出すのははしたないかな?メリザもポリーも指で丁寧に掻き出してる。

ウィル様達はメリザ達を見習って指で種を取り出して食べ始めた。


「プリナもメリザ達を見習って恥じらいを覚えろよ」

「もう今更だよ」


すると甘い匂いに誘われたのかノソノソとイグアナが歩いてきた。


「あ、イグアナさん!こんにちは!イグアナさんもスイカ食べる?」


イグアナにスイカをあげると皮ごと食べ出した。歯が丈夫だね!


「マジでイグアナだ…」

「図鑑でしか見たことないぞ!?」

「これがイグアナか。…大きいな」


ウィル様達はイグアナの登場に驚いてた。

前にもイグアナの話は伝えたのにね。


皆で仲良くスイカを食べる。


「ねぇイグアナさん。この人達が聖樹を見たいんだって。案内してもらえないかな?」


私はイグアナの頭を撫でながらお願いしてみた。イグアナはスイカを食べ終わると歩き出した。少し先で振り返る。


「ウィル様!イグアナさんが案内してくれるみたいですよ」

「君はイグアナの言っている事が分かるのか?」

「着いてこいって言ってます」

「プリナ嬢、先日は疑って悪かった!すまん!!許してくれ!!この通りだ!!」


ダニエル様が謝罪してくれる。

嘘つきじゃないと分かってくれたなら良いよ。


皆でイグアナに着いていく。


「わあっ!!?」

「…きゃあ!!」


ウィル様が足を滑らせて転びそうになる。手を繋がれた私も引っ張られて一緒に転ぶところをセルゲイ様に支えられる。


「セルゲイ様、ありがとうございました」

「セルゲイ、助かった」

「いえ、当然の事をしたまでです」

「…セルゲイ様がウィル様と手を繋いでもらえますか?」

「は?」

「私じゃウィル様を支えられませんし」

「護衛の私が殿下の手を取ることなど!」

「今みたいに転んで怪我でもしたらどうするんですか?」

「……しかし」

「私なら平気だ。それに護衛と手を繋ぐなどみっともないではないか」

「もし転んで、泥んこになった姿を誰かに見られる方がよっぽどみっともないですよ?」

「………」


2人は仕方なさそうに手を繋いだ。すかさずメリザとポリーが私の手を繋ぐ。


「女の子同士が手を繋いでいるのは可愛いけどな…」


ダニエル様がウィル様達を見て言う。


「私達みたいにダニエル様もウィル様と手を繋いだらどうですか?」

「止してくれ!オレは女の子と手を繋ぎたい!メリザ嬢、ポリー嬢、誰かオレと手を繋いでくれないか?」

「イヤです」

「手を繋がなきゃいけないルールじゃないですよ?」


2人はアッサリ振った。ダニエル様がガックリと肩を落とす。


「仕方ない、私と手を繋ぎますか?」

「プリナはダメ!!」

「何で私達以外と手を繋ごうとするの!?」

「だって可哀想なんだもん」

「プリナがダニエル様と手を繋ぐ位なら私達が繋ぐわよ!!」


そして2人はジャンケンをして負けたポリーがダニエル様と手を繋いだ。


「オレは罰ゲームなのかよ…。オレだって殿下ほどじゃないけど人気者のはずなのに…」


ダニエル様がブツブツ言ってる。お願いを聞いてあげたんだから文句言わないで欲しいわ。


イグアナはノシノシとまだ先を行く。

と、イグアナが止まった。イグアナが脇に逸れるので着いていくとキュウリ畑があった。


「イグアナさん、お腹空いたの?」

「また腹の足しにならないな」


皆で収穫してボリボリ食べた。

ウィル様達は丸かじりに抵抗していたけれど。


「マヨネーズが欲しいね」

「オレは塩があれば良いよ」


イグアナは満足したのかまた歩き出した。


「…本当に聖樹まで案内してくれる気があるのか…?」

「森を案内してくれるだけでも十分じゃない?この森は実り豊かだねぇ。誰かが育ててるのかな?イグアナさんがいてくれたら森の中でも生きられそうだね。食べる物に困らなさそう」

「私は帰りたいけどね」


更に森の奥へと進む。かなり歩いた気がする。

ウィル様がグッタリして歩くのが辛そうだ。


「…ウィル様、大丈夫ですか?引き返しましょうか?」

「…いや、大丈夫だ。すまん、普段あまり歩かないものでな。少し疲れただけだ。気にせず進めてくれ」

「殿下、私の背に乗って下さい。私が殿下をお連れいたします」


セルゲイ様がウィル様をおんぶする。


「プリナもおぶろうか?」

「ありがとう。でも大丈夫だよ!」


イグアナが茂みの中に入って行く。もちろん私達も着いていく。

すると拓けた場所があってそこには他の木々とは明らかに違う1本の木が生えていた。



「これは松か…?」

「松に見えるね…」

「1本だけ松とか。この樹も聖樹なのかな…」


「これが聖樹か!!見事だ!!」

「…見たことがない樹だ!聖樹に間違いない!!」

「こんなところに聖樹はあったのか!!」


…ウィル様達は皆さん感動してます。

私達日本人は見慣れた木だけれどこの国では珍しいのかな?まぁ見るからに他の木々と違うもんね。


「イグアナさんが案内してくれたんだから聖樹なんだろうね」

「多分………」

「でも普通の松だよ…?」

「ウィル様達は感動してるみたいだから良いんじゃない?」


「ね、イグアナさん。この樹も聖樹なのかな?案内してくれてありがとう!」


イグアナの頭を撫でる。イグアナが松を見上げている。私も見上げると松ぼっくりがある。


「松ぼっくりが欲しいの?」

「オレが採るよ」


背の高いカロが松ぼっくりをいくつか採って手渡してくれる。


「はい、どうぞ」


イグアナは松ぼっくりを何個かお腹に抱えて丸くなると目を閉じて寝てしまった。


「…松ぼっくりが欲しかっただけじゃないよね…?」

「…どうだろう」


ウィル様達を見るとまだ感動してる。ウィル様はセルゲイ様の背から降りて松の木をペタペタ触ってる。


「王子様がかぶれたりしないと良いけど」

「ま、あれだけ喜んでるんだから良いだろ」

「…赤い聖樹でもラベンダー色の聖樹でもなかったね」

「うん…」



謎は深まるばかりだ。





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