3)私のいる世界について
食事会にて。
「ねぇ。ここは何ていう国?」
初めてこの世界について知りたいと思った私は思い切って尋ねてみた。すると姉の婚約者のテガーさんが教えてくれた。
「ここはダントン王国だよ。」
「ダントンオウコク?」
何て事!!聞いた事もない国名に驚愕した。ここは私がいた世界じゃなかったのか!!てっきりヨーロッパかなんかだと思ってた…。あ、でも時代が変わっただけなのかも?それとも私が知らないだけで世界地図にもないような国なのかも?日本史なんて選択するんじゃなかった…。
「えーと、王様がいるの?」
「そうだよ。王様の下に貴族様がいて、ここはゼノンド伯爵様の領地なんだよ。時々大きな馬車で領地の視察に見えるだろう?」
「うん。たま~に大きな馬車が通るの見るよ。皆お辞儀してるよ。中にいる人は見たことないけど」
「ああ、そうだね。次の収穫祭では伯爵家のご子息様がいらっしゃるそうだよ」
「テガーさんは会った事あるの?」
「ご子息様なら領都でお見掛けした事があるけど、伯爵様は普段は王都にいらっしゃるからお会いした事はないよ」
「オウト?」
「王様のいらっしゃるエラドニールという街だよ」
「ふーん」
「プリナも大人になったら都会にお嫁に行ったらどうかしら。村から出たことないでしょ?」
姉がニコニコ言ってきた。確かにこの村には同じ年頃の男の子がいなくて大人達が相談しているのは知ってる。いつか隣村にお嫁に行くことになるのかな…とは思ってた。
「プリナはまだ13歳だぞ?いくらなんでも結婚なんて早すぎるだろう」
父が窘めるとタガーさんが
「でも貴族様はお早いウチから婚約者が決まっているそうですよ。相手は早目に決めた方が安心かも知れませんよ。村にはふさわしい相手はいなさそうですから」
「ううむ…」
冗談じゃない。13歳なんて前世じゃ中坊だよ!?前世だって未婚のままだったのに!!
私が黙っていると姉が聞いてきた。
「プリナはどうしたい?」
「そんなのまだ考えた事も無いよ…」
「そりゃそうだ」
皆が笑いあって直ぐに話題が姉の結婚式についてに変わったので私はそのままモクモクと食べながら今の状況について考えていた。
まだ分からない事だらけだけれど恐らくここは前世とは違う世界なんだろうな。
まぁ子どもの頃からファンタジー小説は好きだったし異世界があるとしても受け入れられるけれど、何で私は前世の記憶があるんだろう。この記憶を活かして生きて行けって事なのかな?
そう言えばこの村では馬車すらほとんど見掛けた事がなかった。馬は高価なのでヒルド村には村長さんのところにしかいない。長距離移動はほとんど牛車だ。私は村から出たことがないけれど都会に行けば自動車は走っているんだろうか。…無さそうな気がする。時代背景的には中世のヨーロッパのようなものなのだろうか。
今までこの世界で生きてきて魔法があるとは聞いた事がない。精霊は見たことはないけれど存在するらしくて感謝の祈りは大地の精霊に捧げる。八百万の神様がいる日本で生まれ育った私なので違和感はない。神様と精霊は違うかも知れないが自然の恵みに感謝する気持ちは同じだよね。
ふと。前世で愛読していた異世界転生物語だとかファンタジー小説を思い出した。
え。もしかして私にも何だかすごい才能があったりするの!?
あ、でもよくある物語だと貴族に生まれたりしてドロドロの恋愛劇に巻き込まれたりするよね。とりあえず私は庶民…というより村民の田舎娘だから貴族のゴタゴタに巻き込まれたりって事はないか。あ、でも普通の女の子がある日特別な能力に目覚めてイケメン貴族に選ばれたりする話はあったような…。もしかして私聖女だったりするのかしら?あれ、でもこの世界でも聖女なんて聞いた事がないや。乙女ゲームに転生とかもあったよね。となるとここはそういった世界なのかも?チクチョウ、ゲームはやったことが無いんだよ!!ここがゲームの世界だとしても世界観も分からないじゃないか!!!
でもでも…いつかドラマチックな物語の主人公になるのかも☆私のドラマはもうすぐ始まるのかな?
私の世界はこの村が全てだと思ってた。広がっても隣村だろうと思っていたのに!!
何だかドキドキしてきた。
1人ゴチャゴチャと混乱しています。