28)記憶にございません
朝目が覚めるとカロが隣で寝ていた。
「きゃあぁぁぁ!!!何でカロがいるの!?」
私の叫び声でカロが起きた。
手が上がる。ん?私がカロの手を握ってる!!
「やっぱり離してくれなかったんだよ」
「やっぱりって!?えっ?何!?」
「おはようプリナ!体調はどう?」
私の叫び声が聞こえたらしくメリザとポリーが寝室に入ってきた。
「おはよう!元気だよ!皆もいてくれたの?」
「さすがに2人きりには出来ないし、お医者さんと寮母さんにお願いして私達もプリナの部屋に泊まったの」
「そっかぁ。ありがとう」
カロがベッドから出ておでこに触れる。
「熱下がったな。起きられそうか?」
「うん。大丈夫」
「歩くの辛いなら抱っこしようか?」
「はぁ!?何言ってるの!!」
真っ赤になる私を見て皆がホッとしたような顔をする。
「良かった。元に戻ったね」
「うん。いつものプリナだ」
「嬉しいような淋しいような」
「メリザ、何言ってるんだよ…」
皆がよく分からない事を言う。
「プリナは昨日のこと覚えてる?」
「えっ?昨日?昨日は…起きたら身体が怠くて、シャワー浴びて、寝てたらカラスが来てくれて…あ、スープとリンゴを食べた気がする。美味しかった!」
「あーんしたのは?」
「あーん?あーんって何?」
「プリナはイルクに抱っこせがんだんだよ?」
「そうそう。添い寝もお願いされたんだよ、プリナに」
「はぁ!?まさか、私がそんなこと言う訳無いよ!!」
「マジか」
「覚えてないんだ…」
「寂しいようなホッとしたような」
何だか皆が悲しそう?
「あの~私、もしかして皆に何か迷惑かけちゃった…?」
「ううん、ぜ~んぜん!!何にも!!ね?ポリー」
「うん!全く!むしろ幸せにしてもらったと言うか…至福の時間を過ごせたと言うか!ね?カロ」
「そこでオレに振るなよ!」
皆はまだ居間で寝ていたイルクを起こすとそれぞれの自室に戻って行った。私も汗かいたからサッパリしたいし!私はバスルームに行って温めのお風呂にユックリ入った。
窓を開けると今日もカラスが来てくれていた。
「おはよう!昨日はお見舞いありがとう」
カラスは「カアカア」と鳴くと部屋には来ず飛んで行ってしまった。私の元気な顔を見たら安心したのかも。
朝食の時間。
「はい、プリナ。私のオムレツ美味しいよ!一口どうぞ?」
「メリザ…1人で食べられるよ?」
「良いから良いから!はい、あーん」
ニコニコしてるメリザを見るととても断れず、メリザのフォークからパクっと食べた。
「美味しい?」
「う…うん」
「プリナ!今日のマフィン、ベーコンが入ってて美味しいよ!食べてみて!ほら、あーん」
ポリーも笑顔で一口大に千切ったマフィンを私に差し出す。私はポリーの手から食べる。
「ね、美味しいでしょ?」
「うん」
「プリナ、はい、あーん」
今度はイルクがフォークでニンジンを差し出す。ついつい食べる。ん?
「…ちょっと!イルクはまたニンジンを寄越して!!」
「や、どさくさに紛れて良いかな~って」
「お前らプリナを餌付けするなよ…」
カロが呆れて言う。
「ふんだ!悔しかったらカロもプリナに寄越しなさいよ!」
「なんでだよ」
昨日寝込んだから皆いつにも増して過保護になってるんだね。ここは甘えておこう。
「今日はこれからどうしよっか」
「プリナは病み上がりなんだから寮で大人しくしとけ」
「1日寝てたから元気だよ!?探検出来るよ!学校が始まる前に聖樹を見付けたいし」
「ダメ!」
むぅ。
「明日は入学式なんだから、体調回復に専念しようね」
「そうだよ?体調万全で迎えたいでしょ?」
皆から外出を止められてしまった。
「じゃあ…緑の聖樹なら見に行っても良い?パワー貰えそうだし近いし」
「うーん…そこまでなら良いか…。ヨシ、じゃ皆で行こう」
皆で構内の聖樹まで行く事になった。
私達が聖樹を目指して歩いていると寮の玄関から校門に向かって歩くピンクの髪の女の子が来た。
「…あの子が主人公かな?」
「だろうね」
女の子は私達を一瞥するとプイッと顔を反らした。
「感じわるーい…」
私達の横を通り過ぎる際に彼女はサイドから後ろへ髪を手で靡かせた。その時に何か光る物が落ちた気がした。
足元を見たら金色のイヤリングが落ちている。
「あの~落としましたよ」
私が拾って彼女に声をかけると侍女らしき人が気付いて彼女に声をかけた。彼女は振り返って私達をキッと睨んだ。何かを言いかけたが、ハッと口を閉じて急に笑顔になった。
「まぁ!ご親切に!助かりましたわ」
そう言って私に近付いてくる。
その時玄関から別の貴族らしき集団が出てきた。
「まぁミサキ様!…さすがですわ。平民にもお優しくて」
「本当に。どなたにも親切になさって。淑女の鏡ですわ」
「あら、皆様いらしたの?いらしたとは気付かずお恥ずかしい姿をお見せしてしまいましたわ」
集団はそのまま先に校門へ歩いて行った。ミサキと呼ばれた彼女は遠ざかるまで集団を笑顔で見送ってから私を振り返るともう片方のイヤリングも外して投げ付けてきた。
「…差し上げますわ」
「は?」
「だから、そのイヤリング。あなたにあげると言ったのよ」
「え、要らないです」
私が拾ってイヤリングを手渡そうとすると思いっきり扇子で手を叩かれた!
「いたっ!!」
「要らないって言ってるでしょ!?平民が触ったモノなんてこの私が触れられると思ってるの!?あげるって言ってるんだから、貰っておきなさいよ!!」
「いえ、結構です。ちゃんと受け取って下さい」
「はぁ!?だから、そんな汚れたモノ要らないのよ!!良いから喜びなさいよ!あんたみたいな平民が一生買えないような高級品なのよ!あんたには分不相応な代物よ!!」
「だから、要りませんてば。後で泥棒扱いされたら困るし」
「どこまでも生意気ね!平民のくせに!」
彼女は私の手のイヤリングを手に取って放り投げた。
「ほら、拾って来なさいよ。拾って持ってきたら受け取って差し上げるわ」
「………」
「もう良いよ、プリナ。行こう」
彼女は侍女からハンカチを受け取って手を拭くとそのハンカチもポイした。
「これも汚れたから差し上げますわ」
そして侍女を従えて校門へ歩いて行った。
「…オレあんな奴を応援したくないなぁ」
「ガブリエラと良い勝負なんじゃない?」
「プリナ。元気出して」
「ハンカチどうしよう…」
「えっ?良いよ、そんなの放っておけば」
「落とし物箱とか学校にあるのかな?とりあえず寮母さんに拾った、って言って渡して来るね!」
私は辺りを探してイヤリングを見付けて、ハンカチとイヤリングを寮母さんに預けた。寮母さんには外の話し声が聞こえていたみたいで黙って受け取ってくれた。
私も皆も主人公を応援するべきなのか迷いだした。
王子様達よりも主人公に関り合いたくないなぁ…。
カロが私の手を取る。
「…赤くなってる。ほら、さっき叩かれたところ」
「あ~忘れてたよ。もう痛くないよ?」
手をヒラヒラ振って何ともないアピールをしたけれどカロは眉間に皺を寄せると、いつものように手を握った。
「怒ってる?」
「怒ってるよ」
「…ごめんね」
「何でプリナが謝るの」
「…分かんない」
それから聖樹に着くまで誰も話さなかった。




