27)ダウン
目が覚めると部屋のベッドだった。頭が重い…。
森に行ってヘビさんに会って、そのあと猫に会って、そのあとトラのお母さんに会って、薄紫色の聖樹に連れてってもらって、そのあとは…
寝ちゃったんだね。
起き上がろうとすると凄く怠い。それでも何とかベッドから出て窓を明けると朝もやで視界が霞んでる。どれだけ寝たんだろう?…その割りに疲れが取れてないな。
お風呂に入らずそのまま眠っちゃったのでシャワーを浴びた。やっぱり身体が重い…。
ソファーでボーッとしてるとノックの音が聞こえる。フラフラしながらドアを開けるとメリザとポリーがいた。
「おはよう」
「おはようプリナ!…どうしたの?」
「寝過ぎかなぁ?朝から怠くて」
「顔が赤いよ?熱があるんじゃない?」
メリザがおでこに触れる。メリザの手、ヒンヤリして気持ちいい…。
「ちょっと!!マジで熱あるよ!?ほら、ベッドに戻ろう!」
「熱…?」
メリザに腕を引っ張られてベッドに寝かされた。
「髪が濡れてない?」
「今シャワー浴びたから」
「熱があるのにシャワー浴びたの!?」
「昨日そのまま寝ちゃったんだもん…」
「今どんな感じ?怠い以外は?」
「頭がガンガンする…。あと寒い」
「これはまだ熱が上がりそうだね。私、寮母さんに言ってくるね」
ポリーが部屋を出て行った。
「何か欲しいものはある?」
「お水…」
「わかった!ちょっと待っててね」
メリザがお水を持ってきてくれて一気に飲んだ。
「美味しい」
「昨日から何も食べてないでしょ?何が食べたい?」
「プリン…プッチンするやつ」
「プリン?プリンね。ごめんね、プッチンするやつはちょっと無理かなぁ」
「プリナ!寮母さんがお医者さんを呼んでくれるって。午後になるそうだけど」
ポリーが戻って来た。桶に水を入れてタオルを濡らすとおでこにタオルを置いてくれる。ヒンヤリ気持ちいい。
「ありがとう。2人は朝ごはん食べてきて」
「…うん。分かった。行ってくるね」
2人が部屋を出て行くと部屋が静かになる。目を閉じる。暑いのに寒い。風邪かな…。独り暮らしの時は心細かったけれど今は皆がいてくれる。
「お母さんのスープが飲みたい…」
村を出て初めて家が恋しくなった。アリルが居ないから感染る心配がなくて良かった。「ねえちゃ」と私にベッタリの可愛い弟を思い出す。熱を出すとホットミルクを作って看病してくれたモーラ姉さん。固い私のベッド。藁の匂い。チーズの匂い。これがホームシックかな?
気が付くとカロとイルクが居た。
「目が覚めたか?」
「うん」
「メリザとポリーは食堂でプリナが食べられそうなモン頼んでくるって」
「お水」
「分かった。起き上がれそうか?」
イルクが身体を支えてくれて上半身を起こす。そのままイルクが背もたれ役にになってくれて寄り掛かる。カロが水の入ったグラスを持ってきてくれた。
「疲れが出たんだよ。今日はユックリ寝てな」
「今日こそ真っ白な聖樹を探さないと…」
「今日は外出禁止。食堂までも行けないヤツが何言ってんだか」
「窓の外にカラスが来てるみたいだぞ?さっきから鳴いてる」
「本当?窓まで連れてって」
「歩けそうか?」
「抱っこ」
「………分かった。ほら」
イルクに窓まで連れて行ってもらって外の木を見ると確かにカラスがいた。カラスは私に気付くと部屋まで飛んできた。嘴には小さな花が付いた草を咥えていた。
「お見舞いに来てくれたの?心配してくれてありがとう」
草を受け取って身体を撫でる。カラスはじっと私の顔を見てまた飛んで出ていってしまった。
「プリナ、もうベッドに戻ろう?」
イルクが私をベッドに寝かせる。そのまま離れようとしたイルクの腕を掴んだ。
「ダメ。一緒に寝んねして」
「えぇ!?さすがにそれは無理!!メリザ達に殺される!!」
「やだ。寝んね!」
「無茶言うなよ…。側に付いててやるから」
「寝んね…」
「はぁ…。カロ、プリナに添い寝しても良い?」
「ダメ」
「ただいま!スープ持ってきたよ!プリナの調子どう!?」
メリザとポリーがやって来た。
「ヤバい」
「え!?どうしたの!?」
「イルクの方が顔真っ赤じゃない?」
「プリナに添い寝をせがまれてるんだよ…」
「…良いじゃん。添い寝してあげれば」
「プリナ、ほら、スープだよ。食べられそう?」
「あーん」
私が口を開けるとメリザが食べさせてくれる。
「ヤバい…!超可愛い!!」
「…だからヤバいって言ったじゃん」
スープを食べ終わるとポリーが擦りおろしたリンゴを持ってきてくれる。
「プリナ~リンゴだよ。はい、あーん」
「あーん」
ポリーがニコニコして食べさせてくれる。
「何この可愛い生き物は…!」
「だからヤバいんだって」
「お水」
「ハイハイ」
カロがグラスに水を持ってきてくれる。
水を飲んだらお腹いっぱいになったのもあって眠くなってきた。
「一緒に寝んね」
「無理!」
急いで離れようとするカロの手を掴む。
「寝んねして」
「カロ、諦めて」
「プリナのお願い聞いてあげて」
「えぇぇ…皆いるのに恥ずかくて死ねる」
「2人きりの方が良いの?」
「違うよ!?そう言う意味じゃない!!」
「寝んね…」
「あ~もう分かったから!!」
カロが一緒に横に寝てくれて布団の上からポンポンしてくれる。
「早く寝ろ」
「うん」
私はまた目を閉じる。ポンポンのリズムが気持ちいい。
「プリナは弱ると甘えん坊になるんだね…」
「赤ちゃん返りしてるのかな?」
「昨日の帰りにおんぶをお願いしてきた時点でもう体調が悪かったのかもね」
「あぁ、そう言えば…」
皆の声が遠くなっていく。
私が目を覚ますと横にカロが寝ていた。
「うわぁぁっっ!!何で!?」
私の声でカロも目を覚ました。腕をあげられる。ん?私がカロの手を掴んでる!!
「眠ってる間も離してくれなかったんだよ。覚えてないの?」
「ごめんなさい…」
カロがおでこをくっ付ける。
「よし。だいぶ熱が下がったな。何か欲しいものは?」
「お水」
カロが水差しを渡してくれて飲んだ。
「今何時頃?」
「もう夜だな。午後に医者が来て診察してったよ。環境の変化に疲れが溜まってたんだろうって。シッカリ休めば直ぐに良くなるってさ」
「カロがずっとついててくれたの?」
「離してもらえなかったし。メリザ達は居間にいるよ。顔を見せに行くか?」
「うん」
「歩けそう?」
「大丈夫だよ」
「抱っこして行こうか?」
「えっ?」
罰ゲームで仕方なさそうに抱っこされたことはあるけど、カロからそんなこと言うなんて!!
「プリナ、顔真っ赤だよ。…良かった」
「…1人でも歩けるけど…抱っこしてくれるなら、抱っこして?」
お願いしたら今度はカロが真っ赤になった。
「まだ治ってないのか…!」
「なあに?どういうこと?」
カロは抱っこしてくれるのかと思ったら私をベッドに入らせた。
「皆に会わせてくれるんじゃないの?」
「やっぱりダメ。まだ無理」
起きた時と同じようにカロも横になる。布団の上からポンポンしてくれる。何だか落ち着くね。またウトウトしてくる…。
「早く元気になれよ」
「うん…」
「早く良くなっていつものプリナに戻ってくれよ」
だんだんカロの声が遠くなる。
「いつものプリナじゃないとこっちの身がもたないよ」




