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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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26)しり取りで人を陥れるのはいけません

「こうなるとエクレアも巻き込みたいよね」

「うん、でも貴族のお嬢様が探検には付き合えないでしょう?」

「ブレーンとして協力してもらえるだけで充分だよ」


ランチを食べながら今後の事を話していた。貴族のエクレアは午後から写真撮影のため食堂には来ていないようだ。

午前中の話し合いまでの事を伝えておきたかったな…。



では、ランチを終えて探検開始!


「ヘビさんまでのルートは一緒?」

「まあ沼までは一本道だからな」

「やった!」


今日は前をカロとイルク、私を真ん中にメリザとポリーが並んで歩いている。


「ヘビさーん!こんにちは!」


沼に着いて今日も声を掛ける。しばらくすると茂みからリボンを着けたヘビさんがやって来た。

皆は昨日も会っているのでさすがに腰を抜かすような事はなかった。


「もしかしてリボンを失くしたくなくて沼に入れなかったの?」


ヘビさんがコクンと頷く。


「かわい~い~!」

「蛇と会話出来るプリナって凄い…」

「もうイチイチ驚いてるのがアホらしくなってきた…」


「あのね、この森に真っ白な聖樹があるんだって。ヘビさんは知ってる?」


ヘビさんは小首を傾げた。


「知らないみたい」

「蛇って人間の言葉が分かるんだね…」


ヘビさんは情報が無さそうだったので沼を離れて探検を始める事にした。


「それじゃ昨日とは逆方向に進んでみるか」


道が無いので童話のように木に目印を付けながら進む。深い茂みのため歩くのが大変!


「また歌いながら歩こうか?熊さんに出会うやつ」

「止めてー!!プリナが歌うと本当に出会いそうな気がする!!」

「まっさかぁ~」

「いいや、プリナなら有り得る」


皆から反対されたので、皆でしり取りをしながら歩く。


「…ジェラート」

「トレンチコート」

「またト?えーと…トビラ!」

「ライト」

「うわっまたト!トンネル」

「ル…ルビー」

「ビになるの?イになるの?」

「イで良いよ」

「じゃあ糸」

「またトかよ!ん~、トマト」

「またト!?イルク意地悪だよ!」

「ホラ、次プリナだよ」

「ト…ト…トラ!」

「ラッパ」


と、近くでガサガサ茂みが揺れた。


「静かに!確認するから女の子達は下がって」


途端に緊張が走る。イルクが音のする方へ近付きカロは私達の前に立とうとする。その時私の耳元に「ブーン」と虫の羽音が聞こえた!


「は、ハチ!?やだぁ!!」


慌てて逃げようとして前につんのめってしまった。


「プリナ!」


前に転がりそうなところをイルクに支えられて何とか倒れずに済んだ。ふぅ。


「…あれ?猫?」


茂みにいたのは少し薄汚れた白い猫だった。ミーミーと小さな声で鳴いている。音の正体だった。


「うわぁ可愛い!!」


思わず猫を撫でてしまう。身体を見ると後ろ足から血が出ていた。


「可哀相に、この子ケガしてるよ。ちょっと待ってね」


私は水筒の水を猫の足にかけて血を流した。痛かったのか猫が暴れた。


「ごめんね、痛かったね」


傷口を洗ってからハンカチを巻いた。


「はい、おしまい!よく頑張ったね」


それからメリザに頼んで私の手に水筒の水を溢してもらって手をお皿代わりにして猫に水を与えた。猫は私の手から水を一生懸命飲んだ。


「喉が渇いたよね~鳴きすぎて声枯らしちゃってたもんね」


水を飲んだら猫は足をびっこ引きながら歩き出した。ミーミー、とさっきより大きな声で鳴けるようになった!良かった!


…そこへ大きな影が凄い速さで飛んできて私達の前で止まった!大きな真っ白な身体。テレビのサーカス映像で見たことがある。


「ホワイトタイガー!!!!?」


私の背丈位あるトラは真っ直ぐ猫の側へ行き猫の首を咥えた。猫のお母さんだったみたい。


「猫じゃないし!!」

「そうか!…まぁでもトラはネコ科だし」

「そういやプリナ、しり取りでトラって言ったよな!?」

「やっぱりプリナのせいじゃん!!」

「そんなぁ!トマトで回してきたイルクを責めてよ!!」


トラのお母さんは子トラを咥えて歩き出した。5メートル位先で止まって私達を振り返って見てる。これには覚えがある!


「えーと、トラのお母さんが私達に着いてこいって言ってるよ?皆どうする?」

「マジか…」

「何かもう行くしかない感じ」

「…だね」


お母さんトラはユックリ歩いてくれるので私達も間隔をそのままにして着いて行く。

それからしばらくトラの後を追って歩き進むと…そこには聖樹があった!!


…薄紫色の。


「幻想的…!!何て綺麗な樹なの!!」

「聖樹だよね?…間違いなく」

「ラベンダー色、で合ってる?」

「オレにもラベンダー色に見える」

「これを真っ白に見間違えた可能性ってあるかな…?」

「…ないだろうな」


私は聖樹の美しさに見惚れてしばらく動けなかった。ふと気が付くとトラは聖樹の根元に寝そべっていた。


「トラのお母さん、ここまで案内してくれてありがとうございました!お陰でこんなに綺麗な樹を見られました!」


お母さんトラのお腹の下からケガをしていた子トラが私の側まで歩いて来てくれた。私は子トラの身体を撫でながら話し掛けた。


「お母さんに会えて良かったね。ケガ早く治ると良いね」


私は立ち上がって周辺を見渡した。

葉も幹や枝も薄紫色の樹は本当に美しい。


「ラベンダー色だから聖樹もラベンダーの香りがするかな?」


樹にそっと触れてみる。それから思い切って幹を抱き締める。残念ながら香りは普通の木の匂い。

それでも心が安らぐような気がする…。


「この樹もとっても気持ちが良いよ」


皆も私と同じように樹に触れてみる。


「本当だ…心地良いね」

「ベッドの中にいるような安心感があるよ」

「このままここで眠ってしまいたい…」


ラベンダーの香りはしなかったけれど同じ位リラックス効果はあるのかもね。


皆でタップリ聖樹を堪能した。


「…そろそろ帰ろうか」

「そうだね。イルク、帰り道分かる?」


するとお母さんトラが立ち上がって歩き出した。来た時と同じように数メートル前で立ち止まって振り返る。

皆も慣れたのかトラの後を着いて行くと、ヘビのいる沼が見えた。


「トラのお母さん、ここまで送ってくれて本当にありがとうございました!またお母さんと小さなトラさんに会えますか?」


トラは尻尾を振って、そのまま茂みの中へ戻って行った。


「プリナといると本当に退屈しないよ」

「ヒヤヒヤさせられたけど、結果的にはステキな物が見られたから良かった」

「…プリナ、これからは道中に生き物の名前を出すの禁止な」

「私のせいじゃないでしょ!?」

「絶対にプリナのせい!!」

「でもトラさんに会えなかったら聖樹も見付けられなかったよ!?」

「…それはそうだね」


「日が傾く前に戻ろうか」

「うん。…さすがに3日連続で森の探検して疲れた…。カロ~おんぶして~」

「はぁ?ったく、しょーがないなぁ」


カロがしゃがんでくれたので遠慮なく背中に乗る。


「ねぇ」

「ん?」

「…今日の薄紫色の聖樹のことは王子様達に伝えた方が良いのかな…?」

「あ~…どうするかなぁ…」

「真っ白な聖樹はなかったね…」

「もう少し森の中調べた方が良さそうだな…プリナ?…寝たな」


「連日森の中をを歩いたし、王子に会って疲れてたんだよ。このまま今日は寝かせてあげようよ」

「夕食はどうする?」

「一応夕食前には声掛けるよ。それで寝てたらプリナが起きた後で食べられる物を何か持っていくわ」


「それにしても、やっぱりプリナは普通に生きるのは難しそうだね」

「大蛇にイグアナ、赤い鳥にホワイトタイガーだもんな…」

「ゲームキャラクターじゃないのに、この世界に大きな影響を与えそうだよね…」

「…私達でプリナを守ろうね」

「おう」



皆の心配も知らず。

私は夕食も食べずに朝までグッスリ爆睡しましたとさ。






















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