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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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24)一番出会いたくない人

夕食の時間。

悪役令嬢のガブリエラ達が寮へ戻って来たのでエクレアは貴族と一緒。遠目からでも疲れた顔をしているのが解る。


「え~何その罰ゲーム!ズルい!私もプリナ抱っこしたかった!」

「重いよ!?」


ポリーは私のことが大好きだね!でもあんな羞恥プレイは二度とやりたくないよ。


「プリナ!連絡事項だよ~他の女の子達も聞いてね」


カイリーが私達のテーブルにやって来た。


「学生証作るんで明日女子生徒の顔写真を撮影するんだって。明日は朝から制服着用するように、とのことです。学園から指示がありました。ちゃんと伝えたからね!」

「分かった!教えてくれてありがとう!」


この世界に写真があるんだね!もしかして幕末志士が撮ってたような長時間動いちゃいけない写真機なのかな?時代設定が適当なゲームの世界だから深く考えちゃいけないね。


『んっ、思い出した!入学早々イベントがあるんだった!主人公が学生証を落として王子様が拾うの。確かゲーム最初の共通イベントだったよ』


なるほど。イベントのための設定なのか。

凄い。ストーリーありきでこの世界が作られている。


「髪型はどうする?3年間使うから可愛く撮りたいよね」

「私はいつも通りで良いよ」

「プリナはいつも三つ編みだよね。たまにはポニーテールなんかも良いんじゃない?」

「三つ編みが一番邪魔にならないんだよ。ポニーテールはダメ。前に振り向いた時に可愛い弟の顔面にヒットしちゃって大泣きされた事があって」

「あ~ポニーテールは凶器になるよね…」

「プリナは下ろした方が可愛いんじゃない?」

「えぇ邪魔だよ~。直ぐにボサボサになっちゃうし」

「ハーフアップにしたら?邪魔にならないよ」

「不器用だから他の髪型に出来ないの!くせ毛だから三つ編みが一番なのよ」

「私がスタイリングやってあげる!明日は可愛くしてあげるから!」

「良いよ良いよ!可愛くなりようがないし!誰も喜ばないから!」

「大丈夫、オレらが喜ぶ」

「そうだよ!可愛いプリナが見たい!」


皆からの圧力に負けて夕食後は私の部屋でヘアスタイル検討会になった。ダレトク?


「やっぱり!ポニーテールも可愛いじゃん!」

「うん!似合ってるよ!」

「アップは?」

「あ、大人っぽくて良いね!」

「次は編み込み。どう?」

「お嬢様っぽくて可愛い!」


皆誉め殺し作戦か!?って言う位褒めちぎってくれる。前世も今世でもろくにお洒落してこなかった私は恥ずかしくてされるがままだ。


「男性目線だとどう?」

「似合ってれば何でも良いんじゃない?」

「そりゃそうだけど、好みって言うものがあるでしょ?」

「オレは昔からポニーテールが超タイプ」


イルクはポニーテール好き。なるほど。


「オレはショートカットが好み」


カロはショートカットが好き、と。


「カロはこの世界での無茶振りしないでよ!…もう明日は私の好みで下ろすことにします。ハイ決定!!」

「私も賛成でーす」


明日はメリザとポリーの希望に沿うことになった。



翌日。

真新しい制服に袖を通した。サイズを見るために試着はしたけれどちゃんと着るのは初めて。

白い小さな襟の付いたベージュのワンピース。襟元には赤いリボン。胸の部分には金色の飾りボタン。ウエストより高い位置で後ろに同色のリボンを結ぶ。カーテシーが出来るようにふわりとしたボリュームのあるロングのドレススカート。同色の丈の短いボレロ。部屋でクルクル回ってみる。お嬢様っぽい!!

スカートが広がるのが楽しくて無意識にクルクル回ってたら髪をセットするために来てくれていたメリザとポリーにバッチリ見られた。


「プリナにキュン死にさせられる~!!」

「うん。カロ達がいなくて本当良かったよね」


2人も真新しい制服がとても似合っていた。メリザはセミロングのダークブラウンの髪を内巻きにセットしていて女の子らしい!ポリーは赤みがかった金髪のウェーブを活かしたハーフアップでとても華やかでステキ!農民出身の私と違って都会育ちの2人は同じ制服姿でも洗練されてるような気がする。貴族と一緒にいても遜色ない!!


メリザは私の耳の上までの髪を纏めて襟のリボンと同じ赤いリボンを結んでくれた。


「うん!やっぱり可愛い!!私の見立て通り!」

「うん!女の子らしくてすっごく可愛いよ!」

「ありがとう…」


照れる。


「はにかむプリナ!か~わ~いい~っっ!!」

「プリナを独り占めした~い!!」


2人とも美的感覚がおかしくない?大丈夫?

普通の私は2人の瞳にはどう映ってるんだろう。

…あれか。ペットのわんこに服着替えさせてる感じか。愛情を感じるのでまぁいいか。



平民は朝食後の午前中、午後から貴族が写真を撮るんだって。貴族は支度に時間がかかるからなんだって。制服着るのにそんなに時間がかかるものかな?


食堂の入り口でロベルト様と遭遇してしまった。


「プリナさん、おはようございます。今朝は一段と可愛らしいですね。貴族のご令嬢方にも見劣りしませんよ」

「アリガトウゴザイマス」


さすが貴族!よく歯の浮くような台詞が言えるね!


「ごきげんよう、皆さま。まぁプリナさん、今日はとても素敵ですわ」

「エクレア!様!今朝もお一人ですか?」

「えぇ。皆さま朝から写真を撮るためにお忙しいの。私は朝食を終えてからで十分ですけれど」

「制服着るだけでしょう?」

「皆さま入浴されていますわ。その後お肌を整えるためにエステティシャンの施術を受けられますの。それからヘアメイクですから朝食の時間も惜しいのですわ」

「うへぇ。たかだか写真1枚撮るのにどんだけ…。成人式の写真じゃあるまいし」

「うふふ。私も同意見ですわ」


「おっ、プリナ!可愛いじゃん!」

「イルク!おはよー!ありがとう!」

「黙ってれば令嬢に見えなくもなくもなさそうだな」

「おはよーカロ。それ褒めてる?」

「どうだろうね?」


いつも通り皆でワイワイお喋りしながらの食事を終えた。


写真撮影は別館で行われる。平民にも一応身だしなみチェックの時間が与えられ、別館の広間で順番に呼ばれるまで待機。誰も用意されているお茶に手を付けない。メイクが落ちるのを危惧しているそうな。メイク?皆メイクしてるの!?


「さっきプリナが嫌がったんじゃない」

「そうだよ!ヘアセットしたら直ぐに動き回っちゃって」

「2人はメイクしてるの?」

「普段からしてるよ~」

「ウソ!!知らなかった!!」


アラサーだった私から見れば10代なんてメイクは必要ない!肌の若さと美しさで十分に綺麗なのに!!メイクでは勝てない美しさをわざわざ隠すなんて勿体無い!!その内嫌でもメイクしなきゃならなくなるのにね!


「プリナ・リンカさん、どうぞこちらへ」

「はい!」


私がトップバッターだった!


「行ってきま~す」

「行ってらっしゃ~い」

「綺麗に撮ってもらえると良いね」


2人に声を掛けて、手櫛で軽く整えてから撮影室に入る。


あっという間に撮影が終わった。終了後は寮へ戻るように指示されたので1人先に帰る。


一旦外に出て寮へ歩いていると突風が吹いた。うわっ、前世の井戸から出てくる幽霊さんみたくなっちゃったよ!前が見えない!!


「ククッ…」


男の子の笑い声が聞こえる。


「…失礼。髪がボサボサだ」


声の主の気配が近付いて来て優しく手櫛で髪を直してくれた。


「…これで大丈夫」

「あ…ありがとうございます…」


見上げると金髪碧眼の美少年が微笑んでいた。


「…やっと会えたね。プリナ・リンカ嬢」


誰?何でこの人私の事を知ってるの?

















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