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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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19)プリナの小さな冒険~中編~

私は森の中を進んだ。とても静かで人のいる気配もなくたまに鳥の鳴き声が聴こえる位。入り口近くだとまた誰かに見付かるかも知れないのでヘビを森の奥で放そうと考えていた。


辺りを見回すと沢がある。ヘビにも水場が良いかと思い水の流れに沿って更に歩くと深い青色の沼があった。


「この辺で良いかな?」


沼の畔にしゃがんで両手で抱えていたヘビをそっと地面に降ろすとずっと大人しかったヘビが急に暴れ出した!


「えっ!どうしたの!?ケガしたの!?」


私はどうしたら良いのか判らなくてその場を動けずにいると、ヘビの身体が白く光り出した。その光がどんどん強くなり眩しくて周りが何も見えなくなってしまった。

少し経つと光が収まったので、眩んだ目を開くと…何とヘビが大蛇になっていた!!側には透明の脱け殻が落ちている。


「ヘビってこんな風に脱皮するんだ…!っていうかいくらなんでも大きくなり過ぎでしょ!?」


ヘビはトグロを巻いて身体を持ち上げるとじっと私を見てきた。ヘビの目ってよく見るとつぶらで可愛いのね。身体を持ち上げたヘビとしゃがんでいた私の目線の高さが同じだったので間近でジッと見詰めていると、ヘビがペコリと首を下げた。まるでお辞儀をしているみたい!


「もしかしてお礼してくれてるの?」


話し掛けるとまるで私の言葉を理解しているように頷いた。


「フフッ。それじゃお礼の気持ちとしてあなたの脱け殻をプレゼントしてくれる?」


私がお願いするとヘビは頚を伸ばして脱け殻を引き寄せて私の前に持ってきた。ヘビの脱け殻って金運のお守りになったよね?


「ありがとう!遠慮なく貰っていくね!あなたが出会った時に小さな身体で良かった!最初からその大きさだったら私もさすがに叫んで逃げちゃってたよ」


私は脱け殻を手にとって立ち上がった。私が手を振るとヘビは沼の中に潜っていった。


「カラス~」


カラスを呼ぶと何処かから私の足元に飛んできてカーと鳴いた。そう言えば私の部屋で一度も鳴き声出さなかったね。カラスは利口だから空気を読んでいたのかも。


「元気に飛べるようになったし、寂しいけどあなたともここでお別れするね。私の後を着いてきちゃダメだからね!」


カラスが頚を傾げて「カァカァ」と鳴いた。


「また会いに来るから!元気でね、バイバイ!」


手を振って私は来た道を走り出した。カラスは追い掛けてこなかったけれど「カァカァ」と鳴いている声がずっと聴こえた。可愛い私のカラス。どうか元気で。泣きながら振り返らず走り続けた。




「来た時は一本道だったよね?こんな所さっき通ったっけ?」


それほど奥深くまでは入らなかったはずなのに気が付いたら森の中で迷ってしまっていた。


「私が森に入った事を誰も知らないし…このまま森の中で遭難しちゃったらどうしよう!!」


それにお腹空いた…。もうとっくにランチの時間を過ぎているだろうな。走ったせいで体力も無くなってしまった。

とりあえず何か食べられる物はないか探しながら森の中を歩く。とその時、ドサッッ!!!と大きな音がした。ビックリして恐る恐る音に近付くとワニらしき生き物が落ちていた。


「きゃあぁぁ!!ワ、ワ、ワニ!!!」


さすがにワニは怖い!!!逃げたいけど恐怖で足が動かない!!!


が、そのワニらしき動物はリンゴの実をシャクシャク食べ出した。見上げると木にリンゴがたくさん実っている。さっきの大きな音は木から落ちたっぽい。地面にリンゴがいくつも落ちていた。


「よく見たらイグアナかぁ!!良かったぁ~肉食獣じゃなくて!」


ホッとしてイグアナがリンゴを食べるのを見ていたらイグアナが私に気付いてリンゴを分けてくれた(多分)。


「ありがとう!お腹空いてたんだ!」


私は有り難く貰ったリンゴを食べた。少し酸っぱいけれど瑞々しくて美味しい!しばらくイグアナと一緒にリンゴを食べていた。


イグアナのお陰で小腹が満たされたのでまた出口を探そうと立ち上がるとイグアナもノッシノッシと歩き出した。歩く姿が可愛い!…あれ?少し前で振り返って私を見てる。また少し歩くと振り返って私を見る。


「え?もしかして私に着いてこいって言ってるの?」


イグアナは少し歩くと振り返るという動作を繰り返して私も後を着いていく。どうせ帰り道も分からないんだしなるようになるか!


どの位歩いたんだろう…。イグアナの歩くスピードだからそんなに距離は無いかも知れないけれど。イグアナは深い茂みの中へ入っていく。私も見失わないように追い掛けた。


すると茂みを抜けたところに燃え盛る炎のように真っ赤な木があった。これも聖樹なのかな?。柳のような枝に秋の楓のような紅い葉が生い茂り、風に揺れる姿はまるで蝋燭の炎のようだ。


またしても聖樹に見惚れていると炎の一部がふわりと降りてきた。よく見たら樹と同じように炎のように真っ赤な大きな鳥だった。火の鳥がいたらこんな鳥なんじゃない?もしかしたらこの鳥こそが火の鳥なのかも!身体は真っ赤なんだけど白鳥のように優雅で美しくて、恐怖感はなかった。


鳥はふわりと翔んで少し先の木の枝に止まった。鳥に誘われるように鳥が飛んでいく後を追い掛けた。イグアナの時と同じように少し先まで飛ぶと私を待っている、というのを繰り返して訳も分からず見失わないように鳥を追い掛けた。幸い真っ赤な鳥は遠目でも目立つので迷う事はなかった。


気が付くと森の先に建物が見えてきた。出口だ!!やっと森を抜け出せた!!


私は枝に止まっている鳥を見上げて声を掛けた。


「出口が見えたからここまでで良いよ。ここまで案内してくれてありがとう!!」


すると鳥は私の足元に降りてきて、羽繕いをすると長い羽根を咥えて私に差し出した。羽根ペンに出来そうな大きな羽根だ。


「これをくれるの?すごく綺麗だね。ありがとう!」


私は鳥の嘴から羽根を受け取ると髪をほどいて結っていた水色のシュシュを差し出した。


「素敵な羽根をくれたことと、ここまで助けてくれたお礼に。良かったらどうぞ」


鳥は嘴に咥えると器用に自分の頚にシュシュを掛けた。真っ赤な身体に水色のシュシュが映える。


「すごく可愛いよ!!…ホラ、あなたはとても目立つから早く森の奥にお帰り。イグアナにもお礼を伝えてね。もしもまた会えたら今度はあなたの好きな物を贈るね!」


鳥も私の言葉が分かるのか頷くとふわりと舞い上がりそのまま飛び去っていった。羽ばたく姿もとても美しかった。見えなくなるまで見送ってから森の出口に歩き出す。


ポケットの中にはヘビの脱け殻と真っ赤な羽根。


ヘビは私が助けたかも知れないけれどイグアナも鳥も無償で助けてくれた。この森の住民達は皆なんて優しいんだろう!!学園の人に森の住民のことと真っ赤な聖樹についてもいつか聞いてみよう。


もう部屋に戻ってもカラスが居ないのが寂しいけれどまた会いに行けば良いよね。森の住民達もきっとカラスを受け入れてくれるね。


大切な友達に私の今日の大冒険を話さなきゃ!

皆きっと驚くだろうな。皆を連れて行ったら森の住民達は会ってくれるかな?


やっと森を抜けて寮に向かって歩いていると私を呼ぶ声が聞こえた。


「プリナ~!!!」


遠くからカロとイルクが走って来るのが見える。


「あ!カロ!イルク!お帰り~」

「お帰り~、じゃない!!!」


いきなり二人にガッシリ抱き締められた!


「心配したんだぞ!?部屋に行こうと思ったら居ないって言われるし食堂にも来てないって言われるし、寮母さんに聞いたら午前中に出掛けてから未だ戻って来てないって聞いて」

「学園内に居ることは分かってるからずっと2人で園内を探し回ってたんだぞ!!」


2人にギュウギュウ抱き締められてどれ程心配してくれていたのかが伝わった。イルクは目を真っ赤にしていた。

心配かけたのは本当に申し訳ないけれど…こんなにも心配してくれる人がいてくれて本当に嬉しい。心がくすぐったい。


「ごめんなさい…。あと心配してくれてありがとう」

「無事に見付かったからもう良いよ。それより何処に行ってたんだ?」


ぐぅ。


話す前に私のお腹が鳴った。


「…お土産にお菓子買ってきたから。とりあえず寮に戻ろう。寮母さんも心配してたんだぞ」

「メリザ達が帰って来る前に見付かって本当に良かったよ」


2人と手を繋いで寮に帰る。今日に限っては子ども扱いされても文句は言えないな…。


「私ね、いっぱい話したい事があるんだよ!」

「うん。全部教えて」

「オレらも聞きたい」


空は夕焼けに染まっていた。










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