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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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18)プリナの小さな冒険~前編~

翌日は私以外の皆は街に出掛ける事になった。

朝食の時間イルクが街に行きたいと言い出したのだ。


「オレさ、前世でベーシストだったんだよ。記憶戻ってからずっと楽器触りたくてたまんないだけど、この世界にベースってあるのかな?」

「どうだろう?オーケストラはありそうだけど。ウッドベースならあるかもよ?」

「部屋に置けるかよ…」

「街に行けば楽器屋さんがあるんじゃない?実際に見てくれば?なかったらギターでもバイオリンでもウクレレでもチェロでもある楽器を極めれば良いよ。まだ15歳なんだし。みんな似たような形してるじゃん」

「いくらなんでもおおざっぱ過ぎるだろ!!全然違うだろーがっ!!」


皆に突っ込まれた。カロは呑んでいた水を吹き出した。同じような形で弦があって似たようなもんじゃないの??残念ながら私は楽器の知識が無いんだからしょうがないじゃない!!楽器なんて音楽の授業でやったリコーダーとピアニカとカスタネット、後はカラオケでタンバリンとマラカスやった位だもん。カラオケでは「リズム感無さすぎ」って周りに取り上げられたけれど。



イルクは食後に街に出て楽器を見に行く事に決めて馬車を借りに行った。王都の街に出るのが初めてのイルクにカロが付き添いで一緒に行く事になった。

ポリーも実家に取りに行きたい物があるそうで私の食器やティーセットなんかも見繕って来てくれるって。メリザは生地屋さんで欲しい物があるから一緒に街に行きたいと言った。


「プリナはどうする?一緒に行く?」

「私はパスするよ。さすがに1日カラスを独り部屋に置いておくのは可哀相だし。部屋をバタバタ飛び出してそろそろ外に出してあげたいからカラスと散歩して遊ぶ事にする」

「1人で寂しくない?私も一緒に残ろうか?」

「大丈夫!皆で楽しんで来てよ!あ、お土産にお菓子買ってきてくれたら嬉しいな」

「…分かった」


メリザもポリーも心配してくれたけど目的があるのに私に付き合わせるなんて申し訳なかったからお一人様満喫アピールして送り出した。


「良い子で留守番してろよ」


出掛ける時にカロが頭を撫でて言ってきた。何で子ども扱いするかな!?前世じゃ最年長なんだぞ!?いつも失礼なんだから!!


皆を見送ってから部屋に戻る。

今日は夕食まで1人。入寮初日にカロとメリザに出会って、それからイルクとポリーと出会って、ずっと皆と一緒にいたから独りで過ごすのは初めてだ。1人ランチはちょっと淋しいかも知れないけれど考えてみれば前世じゃお一人様だったんだっけ。


庭園は他にも人がいてカラスが怖がられるかも知れないので反対方向に歩いてみることにする。カラスはピョンピョン跳んでたまに木に飛んで行ったり戻って来たりしながら着いてきた。


しばらく歩くと不思議な木を見付けた。前世でテレビで見た縄文杉のような太くて大きな立派な木。青々とした葉っぱが繁り幹も葉と同じ青々とした今まで見たことがないとても美しい木だった。


「きれーい………」

「聖樹を見るのは初めてですか?」


見惚れていたら男の子の声がした。振り返ると黒髪の綺麗な顔をした男の子がいた。穏やかな声だった。


「聖樹?」

「精霊が宿るとされている樹ですよ。この国にはいくつも生えていてその地域を守っているのです」


ヒルド村にも聖樹は森にあった。でも大きいけれど普通の木だったよ?前世にも神社なんかにご神木があったから同じようなモノだと思ってた。普通ご神木は柵があって直接触れられないけれどこの樹は遮る物がなかったので抱き付いてみた。いつか縄文杉を見に行きたかったんだよなぁ。叶わなかったなぁ…。

聖樹は表面はヒンヤリしているのに抱き付いていると身体の中が暖まるような気がした。すごく気持ちが良くて瞳を閉じて温もりを味わう。


「あったか~い…」

「暖かい?」

「はい!こうしてると何だか身体の奥から暖まります」


男の子は私を不思議そうに見ていた。


「王城にはこの樹より更に大きな聖樹があるのですよ。この国が生まれた時からあるそうです」

「へぇ~」

「貴方にもいつかお見せしたいですね」


そう言うと立ち去って行った。平民の私がお城に見に行くなんてあり得ないのにね。もしかして貴族の子に見えたのかな?なんちゃって、ないない!!私は心の中で独りツッコミして、聖樹から身体を離すとまたカラスと散歩を続けた。


・・・・・・・・・・・・


「誰と話してたんだ?」


黒髪の少年に見事な金髪の少年が声をかけた。側には赤色の髪と青色の髪、緑色の髪をした少年達が立っている。


「さあ。私を知らなかったので恐らくは入学したばかりの平民の子でしょう」

「平民だってお前の事は知ってるぞ?」

「今年は地方からも優秀な学生が複数入学したと聞いているので地方出身者かも知れませんね」


黒髪の少年は苦笑いで答えた。


「なるほど。それで何を話していたんだ?あの娘が聖樹に抱き付いて驚いていたようだが」

「聖樹が暖かい、と」

「は?樹が?暖かい?」

「ええ。変わった子でした」

「それは確かに変わっているな」


少年達はそのまま歩き去っていった。


・・・・・・・・・・・・


私はてくてく歩いていた。そろそろ寮に引き返そうかと思っていると女の子の叫び声が聞こえてきた。


「きゃあぁぁぁぁぁ!!」


慌てて駆け付けると女の子が震えて腰を抜かしていた。立てないようだ。


「どうしたの!?」

「へ、ヘビ………!!」


彼女が指差す方を見ると小さな白いヘビがいた。なんだ、まだちっちゃいじゃん。田舎育ちを舐めんなよ!?

私がヘビを掴むと


「きゃあぁぁぁぁぁ汚い!!!」


と叫んですんごいスピードで走って行ってしまった。なんだ立てるんじゃん!!


「白蛇は神様の遣いなのにね。失礼な人だったね」


あれ、白蛇が神様の遣いなのは日本だけなのかな?まぁいいや。


掌サイズのヘビはとても大人しい。さてと。この子をどうしよう。都会育ちの人はヘビに慣れていないのだろう。もしまた見付かったら虐められるかも知れない。寮の前にはフクロウが来るので食べられちゃうかも知れないし寮に連れて行くのは危険だろうな。

辺りを見回すと大きな森が見えた。狩猟練習用の森があると言ってたもんな。ついでにカラスも森に帰せるかも。


私は森に向かって歩き出した。








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