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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
14/137

14)イロイロな人がいます

「お待たせ~!……プリナ、何やってんの?」


それは私がゲーム5連敗して罰ゲームを言い渡され前世でも披露した某アニメキャラのモノマネをして皆が大爆笑している時だった。社会人時代の宴会芸だよ!私の鉄板ネタさ!!


「お~か~え~り~ポリーく~ん~」

「プリナ、それ似てないから!!」

「止めて~似て無さすぎ~!」

「もうムリ~!ヤバい~!」


モノマネは似てるかどうかより堂々と演じきるのが大事なんだってさ!入社1年目で宴会芸の出場命令に泣きそうになってた時に先輩に言われたアドバイスですとも!


「うん。ただいま。」


ポリーは私のモノマネを鮮やかにスルーした。私はダメージを受けた。


「ちゃんと夕食前に戻ってきてくれて良かったよ。馬車借りれたの?」

「ううん。実は実家から自転車持ってきててチャリ飛ばして来た!」

「は?自転車があるの!?この世界に!?見たことないよ!?」

「うん。実家の商会の取引で見付けた時は私もビックリしたよ!即ゲットした!」

「オレも欲しい!!」

「私も!!チャリがあったら街まで行くのも便利だしね~」

「私も一度しか見たことないんだよね。見掛けたら譲って貰えるように親に頼んどくよ」

「お願いします!!」


ラウンジに居た他の生徒達がゾロゾロと食堂へ向かうのが見えたので私達も移動する。


私達が食堂に着くと今まで見たことがない程テーブルが埋まっていた。貴族様も多い。いつもと空気が違う気がする。何だろう?ま、いっか。


それぞれメニューを選んで何とか5人座れるテーブルを見付けて夕食を食べ始めた。


「それでお米はウチには置いてなかったけれど王都の商会を回ったら何とか一袋見付けて持って来た!!ウチでも取り寄せて貰えるように親に頼んできたよ!」

「ほ、本当に…?夢みたい…」

「これでご飯が食べられるんだね!!」

「やったーッ!!ありがとう、ポリー!!マジ女神!!!」


いきなりのビッグニュースに思わず皆で万歳してしまった!嬉しすぎて思わず私の掛け声で5人で一本締めをしちゃった!近くに座っていた人達が驚いていたけど気にしない!!だって念願のお米をゲット出来たんだもの!!


「でね、おにぎりの具なんだけど、子どもの頃から探してるんだけど梅干は未だ見付けられないんだよね。おかかも」

「ねぇ、イルクなら地元でカツオ獲れない?」


いきなり話を振られたイルクは喉に詰まったらしく咳き込んでしまった。


「カツオかぁ。さっき前世の記憶思い出したばっかの人間に無茶振りしてくれるよね。うーん…ウチで獲れる魚で似たようなのがあったか探してみるよ」

「カツオが見付かってもさ、鰹節の作り方知ってるの?」

「……ごめん。知らないや」

「とりあえず乾燥させれば良いんじゃない?」

「そうかなぁ?自分達で作れるのかなぁ」

「どっかで削り節になってるの売ってないかね?」

「じゃあさ、何の具だったら出来そう?」


ポリーに聞くと手に持っていたナイフとフォークをお皿に置いて考え込む。


「鮭なら似た魚があるの。ツナも売ってるからマヨネーズがあればツナマヨも作れるよ。タラコは探してるけど未だ見掛けた事がない。明太子も同じ。ごめんね、おにぎりパーティーの言い出しっぺなのに」

「イヤイヤ!シャケとツナマヨでも充分だよ!」

「そうだよ!私シャケが一番好き!!」

「私もシャケもツナマヨも大好き!!」

「オレも!おにぎりが食べられるだけで超幸せ!!」


「えっ、おにぎり………?」


・・・・・・・・・・・・


その頃私達がおにぎりの具について盛り上がっているのを聞いていた人がいた。


「エクレア様?どうかなさったの?」

「あ、いいえ…別に何でもありませんわ」

「平民風情が騒いでいるのが不快だったのでしょう?食事の席だというのに本当に品がないこと」

「ええ、本当にガブリエラ様の仰る通りですわ」

「ガブリエラ様のような淑女が平民風情と同じ空気を吸わないといけないなんて…。学園の決まりとは言え納得がいきませんわ!」

「オホホ。皆様のお気遣いに感謝致しますわ。けれど殿下もいらっしゃいますので私達も我慢しなければなりませんわ」


ガブリエラと呼ばれた生徒はまるで臭い物があるように扇で鼻と口元を隠し、男女で親しげに食事をしながら騒ぐ平民のテーブルに目をやると顔をしかめた。

エクレアと呼ばれた生徒はただ「おにぎり」という言葉が聞こえてきて思わず振り返っただけだったのだが。

(あの人達はおにぎりを知ってるの?どうして?)

出来れば今すぐ彼らの元へいって会話に加わりたいのを我慢する。だって貴族だもの。

(でも気になるわ…)

周りの貴族の令嬢達の会話に適当に相槌を打ちながらも平民達の会話が聞こえないかとそればかりを考えていた。


・・・・・・・・・・・・


私達が相変わらずおにぎりについて話し込んでいると急に周りの人達がざわめきだした。


「え?何?」


キョロキョロ辺りを見回すと食堂から出ていこうと歩く数人の後ろ姿が見えた。周りは道を開けて頭を深く下げているようだ。


「ウィリアム殿下とお付きの方々よ」

「今日寮にいらっしゃって直ぐにお姿を見られるなんて!嗚呼、何て幸運なんでしょう!」

「なんて神々しい…」


近くの貴族様の感嘆の声が聞こえてきたので状況が分かった。あれが王子様か。数人でいたから誰だか分かんないけど。後ろ姿だけだし。って言うか、今感激していた貴族様達も位置的に私と同じ遠目の後ろ姿だけだろうに、よくそこまで感動出来るな!?

それより遠目にしても何だか同じ人間としてあり得ない髪色してたよね?青とか赤とか緑とか。パンクか!!音楽少年なのか!?今度チャンスがあったら髪色をジックリ観察しよう!


「…じゃあおにぎりは具材が揃ってからってことで良いよね?」

「オレは塩むすびで良いから早く食べたい!つーか、白飯だけで良いんだ!!頼む!!米を食わせてくれ!!!」


おにぎりは保留ということで纏まっていたところでカロが土下座せんばかりの勢いで迫ってきた。


「オレもメシが食いたい。おかず無くても良いから白米だけでも食べさせてもらえないかな?」


イルクも真剣な表情で頼み込んできた。


「どうする?ポリー。私もカロ達の気持ちはすごく分かる」

「私からもお願いして良い?私も普通のご飯が食べたい」


メリザもご飯希望だ。前世じゃずっと入院していて普通のご飯を食べられなかったと言ってたもんね…。


「…分かった!どーせ今回入手出来たお米は少なかったんだし、ご飯試食会って事にしよう!」

「やったー!ポリーありがとう!!」

「ありがとう!!ありがとう!!」


喜びのあまり勢い良くガッツポーズを取ろうとしたカロがたまたま通り過ぎようとしていた女の子にぶつかりそうになった。


「キャッ!!」

「あっ!!ごめん…じゃなくて、すみません!!大丈夫ですか!?」


カロは直ぐに謝ったけれど相手の女の子はジロッと睨んで後ろに下がった。


「さすが平民は違いますわね、周りに目を向ける事もなく騒ぎ立てて…視界に入るだけでも汚らわしい」

「ガブリエラ様の仰る通りですわ。平民と同じ空気を吸ってると思うと気分が悪くて今にも倒れそうですわ」

「五月蝿くてまるでハエの様ですわね」

「嗚呼、嫌だ嫌だ。気分を害しましたわ。皆さん、早く部屋に戻って着替えましょう」

「そう致しましょう」


言うだけ言って貴族様の女の子達はプイッと身を翻すと出口に向かって歩き出した。


何あれ!!貴族様は偉いのかも知れないけれど、何でここまで言われなきゃなんないの!?ここまで罵倒されるようなことした!?


怒りで涙が出てきた。身体も震える。両手の拳をグッと握り締める。悔しくて悔しくて涙がボロボロ止まらない。貴族様は皆こんな人ばっかなの!?


「…あの方達が失礼なことを言って本当にごめんなさい」


ハッと顔を上げると金髪に琥珀色の瞳をした女の子が悲しそうにハンカチを差し出してくれていた。


「…ありがとう、ございます」


有りがたくハンカチを受け取る。涙を拭くと香水の良い香りがした。


「…これから同じ学園で共に学ぶ仲間だと言うのにあの方達は本当に…。私の謝罪では足りないとは思いますが、どうかお許し下さい」


彼女は私達に頭を下げてくれた。この人は罵倒の嵐の時も何も言わなかったのに。貴族様にも優しい人がいるんだ。良かった…。


「ハンカチありがとうございました。汚してしまったので洗ってお返ししたいんですけど…」

「どうかお気になさらずに。あの方々とは距離を置かれたいでしょうからハンカチは差し上げますわ」

「でもそれじゃ…。そうだ!明日の午後私の部屋に来ていただくことは出来ますか?2階の階段横の端っこの部屋なので目立たないと思います。ご足労いただくことになって申し訳ありませんが、明日部屋でお返ししたいと思います」


優しい貴族様は少し無言で考えた後で了承してくれた。


「分かりました。では明日伺います」

「ありがとうございます!私はプリナ・リンカと申します。ゼノンド領の農家出身です」

「私はローレンガルム伯爵の娘、エクレア・ローレンガルムですわ」


「エクレア様!何してらっしゃるの!?ガブリエラ様がお待ちですわよ!!」

「あ、はい!直ぐに参ります!」


さっきの女の子の内の1人が優しいエクレア様を呼んで、エクレア様は行ってしまった。



「オレのせいで皆にも嫌な思いさせてごめんな」


カロが私達に頭を下げたので


「何言ってるの!!カロ何にも悪いことしてないじゃない!!!」

「そうだよ!カロ直ぐ謝ったじゃん!!アイツらの性格が悪いだけだって!!!」

「そうそう!!私達に謝る必要ないよ!!!」


それでもカロは申し訳無さそうな表情をしてたけれど皆でフォローしてやっと少し笑ってくれた。


「プリナもありがとな。オレの代わりに泣いてくれて」


カロが優しく頭を撫でるので止まった涙がまたボロボロ出てきた。思わずカロにしがみついてワンワン泣いてしまった。


「悔しいよぉ~!!何であんなこと言われなきゃなんないのよ~!!カロ何にも悪くないのに酷いよ~!!ムカつく~!!」


皆は私が泣き止むまで頭を撫でたり背中を擦ってくれたり手を握ってくれたりしてずっと側に居てくれた。



落ち着いてから皆でラウンジへ移動した。

貴族達は部屋に戻ると言ってので会うことはないだろうと思っていたけれどやっぱり緊張した。メリザとポリーがずっと手を繋いでいてくれた。嬉しいけれど恥ずかしい…。これじゃ本当に子どもみたいだ。


私はまたカフェオレ、メリザはアップルティー、ポリーはホットココア、カロはアイスコーヒー、イルクはレモンスカッシュを注文した。飲み物を持って来てくれた時に給仕さんは私に冷たいオシボリを渡してくれた。泣いていたのがバレバレなんだろう。さりげない気遣いが嬉しい。


「じゃあ気を取り直して、試食会について話し合いましょ!お米はだいたい5合位あるわ」

「5合もあれば十分だよ!でも問題はどうやって作るかだよね?」

「土鍋があれば一番だけどさすがに見掛けないから普通の鍋で炊くとして、かなり大きめじゃないと」

「食堂の厨房で借りられないかな?」

「給仕さんに一度相談してみようか」


給仕さんを呼んで大きな鍋を借りるためには誰にお願いしたら良いか聞いてみた。「少々お待ち下さい」と言ってカウンターの奥に入ると執事のような人を連れてきた。郷土料理を友達に振る舞いたいと説明したらラウンジで保管しているという厚手で大きめの鍋を貸してくれた。


「それじゃあ明日さっそくご飯試作、試食会決行ね!場所は端っこだしプリナの部屋で良いよね?」

「うん!カロとイルクは寮母さんの許可取ってね!」

「おう!」

「今夜は眠れないかも知れない…!」


皆と別れて部屋に戻って遅くなったけどカラスにハンバーガーを食べさせた。カラスはピョンピョン元気に飛び歩けるようになった。私の後をピョンピョン跳んで着いてくるのが可愛くて堪らない!

今夜も窓を開けるとフクロウがいた。よっぽどその木が好きなんだね。物好きだね!


このまま寝てしまいたいけれどお風呂で疲れを取ることにする。早めに上がるとカラスは定位置で既に眠っていた。あまり構ってあげられなくてごめんね…。


「今日も色んな事があったなぁ…」


花いっぱいの素敵な庭園。

突然出逢えた行動力のある素敵な友達。

良い貴族と悪い貴族。


そして明日は念願の白まんまが食べられる!!

楽しみで仕方無い♪

私も今夜は眠れないかも…なんて考えたのも束の間、一瞬で眠りに落ちた。






長くてすみません。

ようやく大体の主要キャラを登場させることが出来ました。

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