132)果たされた約束
私は自宅に帰って皆でお昼ご飯を食べた後、カロ、イルクとヒルド村の森に歩いて出掛けた。
真冬の森は枯れ木が多くて少し寒寒しい。
それでもやっぱり木々に囲まれると安心する。
「やっぱり森の中は落ち着くねぇ」
「プリナ、転ぶなよ」
「地元だから大丈夫!」
そして森の聖樹へ案内した。
見た目は普通の樹だけれど、さすがは聖樹、真冬でも枯れずに青々としている。
「これがヒルド村の聖樹です!」
「…普通の樹だな」
「夏場じゃオレには見分けつかないな」
私は聖樹に抱き着いた。
「この聖樹に抱き着くのは初めてだなぁ。いつも村の皆を守ってくれてありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」
どんな聖樹も温かい気が流れる気がする。
私達は聖樹に挨拶を終えるとシートを敷いておやつを食べることにした。
ヒルド村の森の住民のウサギやタヌキ、鹿もやって来て挨拶をして、おやつを分けて皆で食べる。
とても幸せなひととき。
「…ヒルド村はどう?」
「なんか懐かしい感じ。村の人達もみんな良い人だし。すごく良いところだと思うよ」
「だな、プリナが育った村だなぁと思った」
「ふふ、ありがとう!何にもないけどね~」
「どこの世界に住む人も一緒だよな」
「…そうだね」
どんな世界でも人々の営みは変わらない。
イルクは寮から持ってきたサックスを演奏し出した。
「本当に上手くなったよね~」
「プロになれんじゃない?」
「それは褒めすぎ。…でも実は今度エクレアと王都でライブやろうかって話してる」
「えっ!?すごいすごい!!絶対に行くよ!」
学園祭のセッションがよっぽど楽しかったんだね!
2人ともすごく良い笑顔だったもの。
現世でサックスと出会えた紅くんはとてもイキイキしていて私も嬉しくなった。
「…オレさ、エクレア…っていうか、かの子さん…が好きなんだよね」
「えっ!?そうなの!?」
なんとイルクが爆弾発言!!
「…最初はミサキに無理矢理組まされたけどさ、一緒に過ごしてて何か良いなぁ…って」
「うんうん」
「ズケズケ言うところも、キツいところも、けどプリナのために本気で怒って、泣いて……。そういうの見てるウチに、何となく……」
「……うん」
エクレアもかの子さんもその時の生を一生懸命生きてる。
最近は前世のかの子さんが強くなってキャラもお嬢様に見えない事もあるけれど、かの子さんもエクレアもどっちも素敵な子だ。
「でもなぁ~。相手は貴族だし、前世日本人だった共通点があっても厳しいぞ?」
「……分かってるよ。だから言うつもりはない。婚約者もいるし困らせたい訳じゃないから」
「…………うん」
「2人には何となく言っておきたかったんだ!ただそれだけ!」
「………そっか」
私達はそれから風の音を聴いて静かに過ごした。
カロが言う通り、エクレアは伯爵令嬢で政略結婚とは言え婚約者がいる。成就するのは難しい恋だろう。
…でもあんなにバイタリティーのあるエクレアが愛の無い政略結婚するのは嫌だ。
エクレアには心から幸せになって欲しい。
私は前世も今世も平民だから貴族の辛さは想像するしかないけれど。
「…そう言えばエクレアがブチギレた時はいつもイルクが止めに入ってたよね」
「ああ…あの肘鉄は凄まじいよ……」
そう言いながらもイルクの笑顔は優しい。
皆が幸せになれたら良いのにね。
私は聖樹に皆の幸せを願った。
「ん?」
「どうした?」
「これ……!」
聖樹のすぐ側に10cm程の小さな樹が生えていた。
「!フルール様…!!」
「えっ?」
「これ…フルール様だよ!!フルール様、ヒルド村に本当に来てくれたんだ…!!」
「は?この若い樹が?フルール様?」
「うん!!フルール様だよ!!」
私は聖樹に飛び付いた。
「ねぇ、ここにフルール様が来てくれたんでしょ!?フルール様元気だった!?どんなお話したの!?」
聖樹からものすごく温かい気が伝わってきた。
聖樹も楽しかったんだね!
フルール様…生命の聖樹は他の聖樹のお父さんだって言ってたもんね!
お父さんに会えて嬉しいよね!
フルール様はこの世界のどこかで今も元気でいるんだ。
それが分かって心が震える。
すごく嬉しい。
「プリナ」
カロが私の頬を撫でた。
私は泣いてたみたいだ。
「あのね、フルール様は今も元気に生きてるの」
「うん」
「今にも死にそうだったのに…ちゃんと元気になって、今を生きてるの」
「…うん」
「それが……すごく嬉しいの」
「…うん」
カロが優しく抱き締めてくれる。
カロの温かさはフルール様に似てるね。
フルール様、私もちゃんと元気に生きてます。
だから、いつか会いに来て下さいね。
ヒルド村の精霊達もとても優しかった。
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