126)薬草採集の旅~3~
寒くて目覚めるとカロは既に起きて火を焚いていた。
皆を起こさないように静かに天幕を出ると、辺りはまだ暗かった。
「おはよう、カロ」
「プリナ、まだ寝てて良いぞ」
「ううん、もう起きる」
「寒いから、こっちにおいで」
「うん」
焚き火の側に行くと、カロは私の身体を持ち上げて抱っこする。
「…薬草これで足りるかな?」
「後は王都で増やせれば大丈夫だろ」
「ウィル様に頼んで王宮で増やせないかなぁ」
「オレも考えてたとこ。ケルルートとミサキに渡したくないし」
「ふふっ」
空が白んで来て2人で日が昇るのを見つめる。
「綺麗だねぇ」
「ああ」
山の朝は底冷えする程寒い。
焚き火に手を当てるとカロが両手をくるむように暖めてくれる。
「カロの手はおっきいねぇ」
「プリナの手が小さいんだよ」
「もっと大きくなりたいんだけどなぁ。農作業するにも手が大きい方が良いもの」
「…プリナは卒業したら村に帰るのか?」
「う~ん多分。まだ他にやりたいこと見付かってないし。カロは卒業したら実家の靴屋さんを継ぐの?」
「まだ考え中。このまま王都で暮らしたい気もする」
「皆と離ればなれになるのは嫌だね…」
「……まぁ、まだ2年以上あるし、ゆっくり考えような」
「うん」
天幕が騒がしくなった。皆が起きたみたい。
「プリナ、カロ、おはよう!」
「火を起こしてくれてありがとう!」
「おはようございます!プリナ様と一夜を共に出来てとても幸せです!」
「……………」
「はっ、プリナ様!?プリナ様ぁぁぁぁ!!!」
ロベルト様は朝からテンション高いね。
そして懲りないね!
皆で朝ごはんを作って食べてからトパーズ山のドラゴンに乗って王都に出発!
巨大化したシロップよりは速度は遅いけれど、それでもお昼前までには王都に帰る事が出来た。
私達は王宮の生命の聖樹の前に降りた。
「プリナ!?どうしてドラゴンが!?」
「スゲー!!ドラゴンがこんなに…!!」
「うわぁ、ドラゴンがシロップの他にもいたんだ…!!」
ウィル様、セルゲイ様、ダニエル様が出迎えてくれた。
皆、ドラゴン達に驚いていた。
そりゃそうだよね、ドラゴンは物語上の生き物のはずだったんだから。
「プリナ様、ご無事でのご帰還、何よりです」
「ホーリオ様、ただいま帰りました!」
私達は集めた薬草を降ろした。
「これは素晴らしいですね…!さすがフルール様が認めた聖女様ですね」
「私は聖女じゃないですよ?それにトパーズ山の住民の鳥さんやこのドラゴンさん達に助けてもらえたからです」
「このドラゴンは……岩山に住むと言われるロックドラゴンですね」
「ロック…岩…。確かに岩みたいにゴツゴツしてますね!」
私はドラゴンに抱き着いた。
「ここまで送ってくれてありがとう!気を付けて帰ってね!」
ドラゴンは私のポケットから顔を出したシロップをジッと見つめる。
「……?」
ドラゴンが今度は私をジーッと見つめてきた。
「!?あなたもリボンが欲しいのね!」
私はカバンの中から大判のスカーフを取り出して首に巻いた。
ドラゴンは嬉しそう!
「あなたともお友達になれたからお名前着けても良い?」
ドラゴンが頷いてくれた。
「ありがとう!…じゃあ……イワオさん!!」
「ぶっ」
隣にいたメリザとカロが吹き出した。
でもドラゴンは気に入ってくれたみたい。
「じゃあイワオさん、今度は普通お礼にまた遊びに行くね!」
ドラゴンは頷いて、飛び立って行った。
「…では私は早速この薬草を神殿に運びましょう」
ホーリオ様が薬草が入った籠を持ち上げようとした。
「待って下さい!あの……今後のためにもここ…王宮で増やす事は出来ませんか?」
「ここで?」
ホーリオ様がウィル様を見た。
ウィル様はしばらく考え込んだ後ゆっくり頷いてくれた。
「確かに王宮で薬草を管理するのも良いかも知れないな。王宮にも薬草園があるし、宮廷薬師もいるから薬の管理も任せよう」
「ありがとうございます!!」
ウィル様は従者を呼ぶと薬草を運ぶ指示を出した。
私達も王宮の薬草園に着いて行く。
王宮の薬草園はビニールハウスもある広い場所だった。
皆で空いてる土地に薬草を植え替えた。
「よし、じゃあ皆で薬草を増やすよ~!」
「リョーカイ!」
「おう」
「分かった」
「畏まりました!」
皆で手を繋いで、手を翳す。
地面が光って薬草がどんどん増えた。
宮廷薬師もその光景に驚いていた。
「後は治療薬をお願いします!」
「!分かりました!直ぐに作業に入ります!」
大人達が残った薬草を持って走って行く。
「…これで皆が助かると良いね」
「うん」
私達が出来る事はここまで。
私達はウィル様が手配してくれた馬車で寮に帰った。
第一便で神殿に届けた薬草の薬と王宮で大量生産された薬のお陰で流行り病はようやく治まっていった。
けれど私達と、神殿のケルルート様と巫女のミサキとの溝は深まってしまった。




