123)巫女との再会
本格的に寒くなってきた今日この頃。
王都に病が大流行していた。
最初はただの風邪かと思われていたが、どんな薬も効かず高熱が続くらしい。
前世のインフルエンザみたいなものかな?
学園内にも患者が増えて学園閉鎖となり、感染を恐れた生徒は皆自宅に帰って行った。
多くの生徒が居なくなって寮は静かだ。
「インフルエンザかなぁ~」
「ペストとかじゃなければ良いね…」
「この世界にワクチンは無さそうだしなぁ」
私達はラウンジを独り占めしてお茶をしていた。
するとそこへ学園の事務員さんがやって来た。
「プリナ・リンカさんに来客です」
「来客……?」
「学園の応接室までいらして下さい」
応接室?
私達全員が呼ばれて事務員さんに着いていった。
「プリナさん、お久しぶりです」
「ケルルート様!?」
応接室に居たのはケルルート様だった。
隣にいたカロとメリザが即座に私の手を握った。
ケルルート様に会ってももう何も感じなかった。
「…二度とお会いすることはないと思ってました」
「…私もそのつもりでした。会わせる顔がありませんでしたので」
「それでもわざわざあいに学園まで来たのには何か理由があるんですよね?」
私の代わりにポリーやカロ達が会話を進める。
「……王都に蔓延る病についてご存知ですか?」
「薬が効かなくて高熱が続くとか」
「その通りです。…それで我らが聖女様に救いを求める者が後を絶ちません」
「ミサキに……?」
我らが聖女、ねぇ……。
「そこで古い文献を調べると200年前にも同じ症状の病が大流行していた記録が見付かったのです」
「……はぁ」
「その時にある薬草が治療に大変有効性があったと記載がありました」
「………はぁ」
ミサキから薬草に話が変わってるし。
「ところがその薬草は今ではほとんど見掛ける事が出来ないのですよ」
「絶滅したんですか?」
「……判りません」
ケルルート様が真剣な瞳を向けてきた。
「プリナさん、あなたは聖樹の力を借りて薬草を生やした事がありましたよね?」
「え?……ああ、そう言えば……」
森での修行中に何度か草が生えたっけ。
「あなたなら貴重な薬草を見付けられると思うのです。どうか民を救うために力をお借り出来ませんか?」
ケルルート様が深く頭を下げた。
私達は突然の申し出に何も言葉が出なかった。
「ケルルート様!?」
その時ロベルト様が勢い良くドアを開けて応接室に入ってきた。
「プリナ様に勝手に面会を求めるとは如何なものでしょうか!?」
「ロベルト。…お前は私の弟子だろうが」
「私はプリナ様に生涯仕える所存です!先ずは私に先触れを出すのが礼儀ではありませんか!?」
久々に会ったロベルト様はもう様呼びが完全に定着してしまったようだ。
「今は王都に流行中だが、国中に病が拡がる危険性があるんだ。プリナさんに助けを求めて何が悪い?プリナさんなら見付けられる可能性があるのだぞ?」
「……それは…そうですが………」
ロベルト様が口を閉ざした。
カロが私の手を強く握った。
「ミサキは……精霊の御遣いは何をしてるんですか?」
「……彼女は毎日神殿で祈りを捧げています」
「それだけ!?」
「……彼女の力では薬草を探し出すのは難しいかと」
「何のための聖女なんですか!?」
「だから毎日神に祈ってるだろう!!」
メリザとイルクの発言にケルルート様が若干キレ気味に答えた。
「……どんな薬草なんですか?」
「プリナ!?こんな人に協力しなくても良いって!!」
「でも薬草が見付かれば流行を防げるかも知れないんだよね?苦しんでる人がいるなら助けたいよ」
「プリナ様…!!あなたは正しく私の聖女様です!!私は一生あなたの僕となります!!」
ロベルト様は相変わらず重い。
「プリナさんが薬草を見付けて下さったら、後は精霊の御遣いの巫女が治療薬を作ります」
「手柄は横取りするつもりか!?」
今度はカロがキレた。
「プリナさんには薬草から薬を作り出す事は出来ないでしょう?薬草さえ入手出来れば後は神殿にて調合いたします」
「……それで病から救ったのは神官と巫女だって言うつもりか!?」
「納得出来ません!!結局あんたはプリナを利用することしか考えてないんだ!!」
「プリナのこと考えたことあるの!?」
「まあまあ」
「プリナは黙ってて!!」
皆がヒートアップして逆に冷静になったよ。
「手柄がどうこうはどうでも良いよ。病が治るんならそれが一番だもの。確かに私じゃ薬は作れないし」
「……それは…そうかも知れないけど……こいつムカつくんだもん」
「これはダントン王国からの依頼でもあります。どうかお力をお貸し下さい」
「…分かりました」
私が答えるとケルルート様がホッとした表情を見せた。
「ありがとうございます、プリナさん」
「ところで……新しい神官長はどんな方ですか?」
「神官長ですか?まだ正式には決まっておりませんが…私が現在代理として務めています」
ケルルート様が新しい神官長になるの!?
王族出身だし順当な人選なのか……?
私達に一抹の不安が募った。
「……とりあえず、探す薬草の情報をもらえますか?」
「はい、こちらです」
ケルルート様が古い本を数冊テーブルに置いて開いてみせる。
「…ここに薬草についての詳細が記載されています。そして、こちらの図鑑に絵が描かれています」
私達は本を覗き込んだ。
「……あれ?」
「これ………何処かで見たことがある気がする……」
「オレも。…どこだっけ?」
「私も。森でかなぁ……」
私も皆も首を捻って記憶を絞り出す。
「!!プリナの部屋だ!!」
「!?そうだよ!!窓辺に置いてあった鉢植えだわ!!」
「!!そうか!!プリナんとこで見たんだ!!」
「そっか!クロールがお見舞いに持ってきてくれたお花かぁ!!」
「それは本当ですか!?」
ロベルト様もケルルート様も食い付いた。
「実物見てみます?」
「是非!!」
私達は私の部屋に行くことになった。
「これは正しく文献にあった薬草です…!!」
「本当だ……!!さすがプリナ様!!私の主様です!!!」
クロールが運んで来てくれたお花がケルルート様が探し求めていた薬草だったらしい。
……鉢植えにしておいて良かった。
私は鉢植えを持って森に行く。
もちろん全員着いてきた。
沼に着いてクロールを呼んだ。
「クロール!!」
「カアッ」
「前にお見舞いに持ってきてくれたこのお花、何処で見付けて来てくれたのか教えてくれる?」
「カアカア、カアカア!」
「えっ…遠いね……」
「カアカアカアカア、カアカア!」
「そうなんだ……」
「プリナ様、クロール殿は何て?」
「…ここから2日程かけてトパーズ山に咲いていたのを見付けたそうです」
「トパーズ山ですか……。王都からは距離がありますしかなり険しい山と聞きますね……」
「それに、山でもそんなに生えてなくて探すのに苦労したそうです」
「……でも見付かる可能性もあるんですね。では私と巫女で向かいます」
ケルルート様が言った。
「ミサキに山登りなんて出来るんですか?」
「…………………それは……」
ケルルート様が口ごもる。
「とりあえず、この鉢植えをお借り出来ませんか?神殿の薬草園で増やせるか試したいと思います」
「どうぞ」
「……プリナさんもご一緒に神殿に来て下さいますか?」
「へ?私も?」
「プリナさんがいれば大地の精霊達も協力してくれるかも知れません」
「……巫女がいるじゃないですか」
「彼女は…火と風の精霊とは相性が良いのですが……まだまだ修行中の身で………」
まだ精霊達と仲良くなれてないのかな?
正直あんまり顔を合わせたくないのだけれど。
ケルルート様に懇願されて、私達も一緒に神殿に向かうことになった。
神殿に来るのは2度目だ。
相変わらず厳かで清廉な雰囲気だ。
あの時にフルール様と出逢って救ってもらったんだよなぁ……。
胸に懐かしさと温かさと切なさが募る。
「ケルルート様ぁ!お帰りなさい!!」
ミサキが駆け寄って来て、そのままケルルート様に抱き着いた。
「!?」
ミサキは私達に気が付くと一瞬顔をしかめた。
「……何で平民のあなた方がケルルート様とご一緒なのかしら」
「……ケルルート様に頼まれたんです」
私の前にロベルト様とカロ、イルクが立った。
メリザとポリーが私を庇うように抱き締めてくれる。
「…薬草園に向かいましょうか」
皆で薬草園に行った。
そこに鉢植えから薬草を植え替える。
ミサキが手を胸の前で組んで祈りを捧げた。
……風は起こったけれど、薬草には何の変化もなかった。
「プリナさん」
「はい」
私は両腕を空に翳した。
「精霊さーん!!この草を増やすお手伝いをしてくれますか~?」
「何よ、それ……」
ミサキが嘲笑った。
その直後に辺り一面に光が射して大地が揺れる。
「!?」
薬草がぐんぐん成長して、一反位に増殖した。
「プリナ様、さすがでございます!!」
「プリナさん……私の見立て通りですね」
「!?」
ミサキの黒いオーラが立ち昇った気がする。
ふらついた私を咄嗟にカロが支えてくれた。
「…これではまだまだ数が足りません。…プリナさん、探して来てくれますか?私はここで調合に入ります」
「……分かりました………」
私達は薬草園はケルルート様とミサキに任せて薬草採りにトパーズ山に行くことになった。
「私もご一緒いたします!!」
私達平民メンバーとロベルト様とで山へ出発だ!
誤字脱字報告、感想をお寄せ下さりありがとうございました!!




