119)ライバル登場
創立祭が終わると直ぐに中間テストがあった。
私は休学期間もあったので大幅成績ダウンした。
テスト結果は18位。
でもかりんとう先生含めどの教師からも労いの言葉をもらった。期末で挽回するぞ!
私は自主練の成果が出てきてマウスピースでも音階が出せるようになってきた。
カロが学園の中古のトランペットを用意してくれて、暇な時は2人で森の中で練習してる。
やっぱり楽器が演奏出来るようになると楽しい!
側にはシロップにミドリーノとキミドリーナと2人の子どものミドリッチ。クロールとクロエ、2人の子どものクロワッサンとクロードとクローバー。
「みんないつの間にか家族が増えてる…」
「羨ましいか?」
「…………うん」
カロは私の頭を撫でる。
秋が深まり風が冷たくなってきた。
「少し寒くなってきたね」
「…おいで」
カロの過保護振りは相変わらずで、私を抱っこして後ろから抱き締めて暖めてくれる。
「こうしてると暖かいね」
「…風邪引くなよ」
「うん」
森は静かでカロの体温でヌクヌクしてだんだん眠くなってくる。
「プリナ、眠くなった?」
「…うん。昨日遅くまで勉強したからかも」
「少し眠りな。ちゃんと起こすから」
「……うん」
カロが私が寒くならないようにギュッと抱き締める力を強めた。
「…ねぇ」
「ん?」
「…カロの方を向いてギュッてしても良い?」
「………いいよ、ほら」
カロが腕を離したので、私は体の向きを変えてカロに抱き着く。
「エヘヘ、あったかい……」
「プリナ、可愛い」
「どうしたの?…メリザやポリーみたい」
「何が?」
「メリザもポリーもいつも私のこと可愛いって言ってくれるけど、カロは珍しいなと思って」
「そうだっけ?」
「そうだよ?……カロ、メリザみたい……」
「……いい加減オレはオレだと認めてくれよ…」
「?」
私が顔を上げてカロを見つめると、カロはちょっと困った表情をして、ギュウと抱き締める力を籠めた。
「抱き締めるの好きだね」
「………好きだよ」
カロの腕の中にいると安心する。
カロが髪をずっと撫でてくれていた。
とっても気持ちいい……。
「フルール様はズルいよなぁ………」
カロの呟きは私には聞こえなかった。
そんな穏やかな日々が続いていたある日。
「カロト・モグワン様」
突然知らない女の子がやって来た。
「私、隣のクラスのサレーラ・ゴーラムと言います。あなたと同じヒッポリーガ領のゴーラム男爵の娘なの」
「………はあ」
カロと知り合いではないらしい。
「私、いつもあなたの家で靴を注文していたのよ」
「……それはどうも。」
一応相手は貴族らしいのでカロは丁寧な対応を心掛けているみたい。
「ねぇ~、同じ地元出身者同士、仲良くしましょう?」
「………はあ」
サレーラ様は一方的にカロに喋る喋る。
始業の鐘が鳴るまで1人喋って自分のクラスに戻って行った。
「何あれ………」
「同じ地元出身者を見付けて嬉しいんじゃない?私は田舎出身者だから何か分かる」
「プリナは呑気なんだから……」
皆は彼女の出現に戸惑いを見せていた。
「カロト様!」
また来た。
あれから彼女はしょっちゅう私達のクラスに来てはカロの側で一方的に話すようになった。
相手が貴族だから無視も出来なくてカロの休み時間が潰れる。
「ねぇ~、カロト様ぁ。この後私とお茶しませんかぁ?」
「いえ、結構です」
「もぉ~カロト様ってば冷たいんだからぁ!」
さすがに私でもカロが積極的にアプローチされている事に気付く。
とは言うものの相手は貴族なので強く拒否も出来ず、私達はサレーラ様から出来るだけ逃げることにした。
教室ではエクレアやシャルル様が側にいると近付いて来ないので2人と出来るだけ一緒にいるようにしたけれど、食堂やら廊下やらラウンジやらでカロの姿を見掛けると追い掛けて来る。
何だか心の中がモヤッとする……。
「…何なんだよ………」
カロがウンザリした顔で私に凭れかかってきた。
私はヨシヨシとカロの頭を撫でて慰める。
ここは私の部屋。
平民の部屋に遊びに来る貴族はエクレア位なのでサレーラ様も来ない安全圏だ。
「あのウザイ女についてガブリエラ様に聞いたんだけどさ、家格が低すぎてよく知らないって」
エクレアが自分でハイボールを作って飲みながら言った。
ポリーだけは炭酸水をそのまま飲んでいる。
「実家の常連客と言われてもなぁ……。オレは店先に立たないし覚えてる訳無いのに」
疲れた顔をしてるカロにおつまみのポテトフライを食べさせてあげた。カロの顔がちょっと笑顔になった。
「…今、すごく大事な時期なのよ!!!あんな下級貴族に邪魔されたくないの!!!」
「そうだそうだ!!今2人良い感じなんだ!!あともうちょいなんだ!!!」
「本当だよ!!もうあと一押しなんだよ!?ここはソッとしておいて欲しいよ!!!」
…皆がちょっと何言ってるのか分からない。
カロを見ると頭を抱えて踞っていた。
「…それでね、貴族のネットワークでゴーラム男爵家について調べてみたの」
「さすが、エクレア!頼りになる!」
エクレアはいももちチーズを齧ってハイボールで流し込んでから続きを話してくれる。
「金持ちでもなく貧乏でもない、可もなく不可もない地方の下級貴族。クラスの子爵子息や男爵子息に積極的にアプローチしてたけど相手にされなかったみたい。で、この際平民から婿養子に取ろうとか考えてるっぽい」
「何それ!!」
エクレアは冷やしトマトを頬張って、
「カロの実家の靴屋さんは結構歴史もあって評判も良いみたいじゃん。それで創立祭で目を付けてターゲットにしたらしいよ?」
「ムカつく~!!貴族なら貴族で相手を探してよ!!」
「平民じゃ断られないって思ってるところがマジ腹立つ!!!」
皆がガンガン飛ばしてる。
私も何だかモヤモヤしてハイボールを一気に飲んだ。
熱い!!
空きっ腹にアルコールは胃が焼ける!!
私はカロが気に入ってくれた玉子焼きをつまんで、またハイボールを飲んだ。
頭がだんだんボーッとしてきた……。
「プリナ?…どうした?」
「カロ……抱っこ」
私はカロの膝に載って首に抱き着いた。
「ちょっと、プリナ!あんた何杯飲んだの!?」
「分かんな~い………」
「完全に酔っちゃったね……」
「少し目を離した隙に……」
「プリナ、水飲みな」
「やだ~!お酒もっと飲む~!!」
「もうダメ」
カロにグラスを取り上げられてしまった。
「カロ……意地悪しないで?」
「!!?」
カロが固まった。
「ちょっとそこ!!迷うな!!もうプリナにお酒飲ませちゃダメ!!」
「…………………………………………分かった」
「何その間!?どんだけ葛藤してんのよ!?」
「プリナ~こっちおいで~」
ポリーが私を呼んだ。私はイヤイヤする。
「カロがいい……」
カロにギュウとしがみつく。
「ちょっとそこ!!喜んでるんじゃない!!プリナは完全な酔っ払いだ!!!」
「……………………………分かってるよ」
「またその間!!」
カロは私の口元にグラスを持ってきて水を飲ませてくれる。
「カロ……」
「ん?」
「どこにも行っちゃダメ。プリナの側にいてね」
「!?当たり前だろ!?オレはずっとプリナの側にいるよ!!」
「ホント!?エヘヘ」
私は嬉しくなってカロの顔にスリスリした。
「!!」
「カロ~幸せそうだね~?」
「プリナにヤキモチ焼いてもらえて良かったね~」
「ライバル様々かな~?」
「やっと2人は進展するのかな~?」
「………うるさい」
カロは私をお姫様抱っこで持ち上げた。
「とりあえず寝かせて来る」
「え~やだぁ!もっと飲む!!」
「ダメ」
カロに寝室まで運ばれてベッドに寝かせられてしまった。
「ほら、もう寝ろ」
「……寝るまで側にいてくれる?」
「いるよ」
私が手を伸ばすとカロが握ってくれる。
「…何処にも行かない?」
「行かないよ。ずっと側にいるよ」
「一生?」
「…………ああ、プリナが望むなら一生側にいるよ」
「本当?」
「…本当だよ。だから安心してお休み」
カロは空いた手で頭を優しく撫でてくれる。
「…プリナのこと好き?」
「好きだよ」
「じゃあチュウしてくれる?」
「…………………………………………ダメ」
「何で?」
「…絶対に覚えてないから」
「?」
「酔ってない時にするよ」
「今はダメなの?」
「…………………………………………ダメ」
カロはおでこにチュウしてくれた。
「今はこれで我慢する」
「がまん………」
「ほら、少し寝て酔いを冷まそうな」
「………うん」
「お休み、プリナ」
「うん」
カロが撫でてくれるのが気持ち良くてフワフワする………。
「本当にタチ悪いよなぁ。…これで絶対覚えてないんだから……」
ちゃんと覚えてるもん…………。
今はがまん……………。
「いつかちゃんとオレからプロポーズするから……その時はお酒は絶対に飲むなよ」




