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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
118/137

118)後夜祭

メインのクラス発表の演奏は、皆に不安視されるなか見事なタイミングで銅鑼を鳴らした(2回)。

舞台の端から教師が安堵してハンカチで涙を拭く姿が見えた。


…そこまで!?



創立祭も残すは後夜祭のみとなった。


立食パーティーのような感じで、団体参加のメンバーは打ち上げを兼ねて集まっていた。

なのでポリーもメリザも演劇メンバーと談笑している。


私はカロとエクレア、イルク、シャルル様、ダニエル様、ウィル様、セルゲイ様と一緒にお喋りしていた。


「ウィリアム殿下」


ガブリエラ様がウィル様に声を掛けて来た。


「殿下の論文を拝読致しました。とても明解で興味深い内容で感服致しましたわ」

「ああ、ありがとう」


ガブリエラ様はウィル様に淑女の礼をして、私に目を向けて笑顔を見せた。


「プリナさん」

「はい」

「先ほどプリナさんの絵を拝見致しました。どれもとても素晴らしい絵でしたわ」

「ありがとうございます!」


私が笑顔でお礼を言うと、ダニエル様が会話に入ってきた。


「シルバードレット嬢、オレ…私の絵はいかがでしたか!?」


ガブリエラ様は一瞬キョトンとした。が直ぐにニッコリ笑った。


「ダニエル様の絵は………見る者の想像力を掻き立てるような素敵な絵でございましたわ」


さすが、ガブリエラ様!

パット見では何が描かれているかが分からないダニエル様の独特な絵を上手く表現してる!!


ダニエル様は褒められて満足そうだ。



「ところで…プリナさん、よろしかったら私に絵をお譲り頂けませんか?」

「……えっ?私の絵を…ですか?」

「ええ。正面玄関に飾られていた絵はきっと特別なものでしょうから……よろしければ聖獣の絵をお譲り頂ける?」

「聖獣……?」


聖獣なんて描いた覚えがないぞ。


「あの二羽のとても美しい鳥ですわ。架空の聖獣でございますでしょう?」

「は?…えーと、あれは……」


カラスなんですけど。


「架空の聖獣であるにもかかわらず恋人同士の大変仲睦まじい様子が描かれていて、私とても感動致しましたの」

「はあ………」


クロールとクロエなら問題無いと思ったのに、何で架空の聖獣に見えたんだろう?

だってカラスだよ?普通の。


「ガブリエラ様がご希望なのでしたら……」

「まあ!よろしいの!?ありがとうございます!代金はいかほどが宜しいでしょうか?」

「!?いえいえいえ!気に入って下さったのなら差し上げます!!」

「そう言う訳にはまいりませんわ!プリナさんの才能でしたら将来宮廷画家も目指せると思いますわ!未来の巨匠となられる方の処女作ですもの、きちんと代金をお支払い致します!」


未来の巨匠………。

いくらなんでも買いかぶり過ぎでしょ!!


「…では私はこれで失礼致します。プリナさん、またお茶いたしましょうね」

「はい!」


私がガブリエラ様の去っていく姿をを見送っていると、ウィル様が不思議そうに見ていた。


「プリナは…いつの間にガブリエラ嬢と親しくなったんだ?」

「えっと…成り行きで…。夏休み中にエクレア様のお屋敷でお茶しました」

「ああ、なるほど。………彼女は何だか雰囲気が変わったような気がするな」

「だよなぁ。前はウィルにガンガン怖い位アプローチしてきたもんだけどな!」

「ましてや平民なんて視界にも入れそうにない人間だったのだが……」


昔のガブリエラ様を知ってるウィル様達には衝撃的だったみたいだ。


人間、変わろうと思えば変われるんですよ!


「!そうだ!そんなことより、プリナの絵を私にも譲ってくれないか!?」

「!僕も!僕もプリナの絵が欲しい!」

「ズルいぞ!僕にも描いてくれないか!?」

「!注文する方がもっとズルいだろ!?」


あらあら、私の絵は大人気!

本気で画家を目指しちゃおうかしら!



皆で愉しく過ごしているとダンスの音楽が流れ出した。

フロアー中央に人が集まっていく。


「プリナ、踊ろう」


シャルル様が笑顔で手を差し伸べてきた。

終業式パーティー以来で緊張する!


「はい!よろしくお願いします!」


「!?シャルル!ズルいぞ!!何故私より先に申し込んだんだ!?」

「僕はパートナーでしたから。一番に踊る権利があります!」

「プリナ!次は私と踊るぞ!?」

「はぁい」


3ヶ月振りのダンスはやっぱり緊張したけれど、シャルル様のリードのお陰で失敗することなく踊れた!忘れてなくて良かった!


それからウィル様、セルゲイ様、ダニエル様と続けて踊った。

私なんかがパートナーで良いのかと思ったけれど、皆さん楽しそうだったから良いのかな?

…周囲の女の子の視線が怖い気がするけれど。


続けて踊って疲れたのでエクレア達の所に戻った。

王子様達は次々とダンスを申し込まれていた。


エクレアはサングリアを飲んでいた。

一応、ノンアルコールです。


「エクレアとカロは踊らないの?」

「はぁ?私達は終業式パーティーの授業の一環でペア組んだだけだもん!」


エクレアは新しいグラスを取って一気に飲んだ。

やさぐれて見えますよ……?


「!そうだ!カロ、私がカロのダンスの上達具合を見ててあげるからプリナと踊って来なよ!」

「はぁ!?」

「えぇっ!?」


やっと戻ったのにまた踊るの!?


カロと顔を見合わす。

カロはスパルタコーチのエクレアに見られるのが緊張するのか顔が赤くなって少し躊躇っていたけれど、私に手を差し出した。


「……踊って頂けますか?」

「!…はい、喜んで」


カロと踊るのは初めてだ。

まぁウィル様達とも初めてだったけど、皆さん貴族で慣れてるから全員とても上手だった。


「カロ、緊張してる?」

「緊張してるよ」

「だよね」


壁際ではエクレアが微笑んで私達を見ていた。

目が合うとグラスを掲げてくれた。


「カロ、見てみて!エクレアが満足そうに笑ってるよ!私達ちゃんと踊れてるんだね!」

「……エクレアの笑いは意味が違うよ…………」

「?」


カロは溜め息を付いていたけれど、私と目が合うと優しく微笑んでくれた。

楽しそうだから、まぁいっか!


「プリナ、これがラストダンスらしいぞ」

「ラストダンス?」


じゃあもう踊らなくて済むのね!

楽しいけれど、これ以上はさすがに疲れるよ……。



「創立祭、楽しかったね」

「ああ。…きっと一生忘れないよ」


カロがすごく嬉しそうに笑う。

カロが嬉しそうだと私も嬉しい!


皆とも目が合った。

皆も笑顔で私達が踊るのを見てた。



「…見てよ、カロの幸せそうな顔」

「そりゃプリナと踊れたんだもん」

「エクレア、グッジョブ!」

「…ね、プリナはラストダンスの意味を分かってると思う?」

「分かってないと思うよ」

「だよね…。カロ、頑張れ」



こうして創立祭が終わった。



お読み頂きありがとうございます!

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