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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
113/137

113)生命の始まりと終わり

ここが王城…!!


私達平民組は生まれて初めてお城にやって来た。

学園も広いと思っていたけれど、お城は比べ物にならない位に立派だった。

夜だったので全体像は見えなかったけれど、ライトアップされた部分だけ見ても物凄く大きいのが分かる。


「殿下!よくぞご無事で…!」

「直ぐに湯浴みを!」

「先ずは聖樹が先だ。…皆を案内する」

「…畏まりました」


私達はウィル様達に着いていき、聖樹に出会った。


「…!!?」

「これが……生命の聖樹……」

「あぁ、なんてことだ……!!」


それは私達10人でも周りを囲めない程の幹に、下から見上げても推し量れない程の高さの、それはそれは見事な大樹だった。

元気な状態で出会いたかった……。


今は雷に打たれて幹が真ん中で引き裂かれ黒く焦げていた。


「フルール様……」


私はまだ焦げた匂いのする聖樹に抱き着いた。

この温かな気持ちはフルール様そのものだ……!


「フルール様……フルール様……!」


後は言葉にならなかった。

胸が熱くて、後から後から涙が溢れる。



この樹はもう助からないだろう……。

そう絶望的な気持ちになる。


「泣かないで……」


フルール様がフラフラと私に近付いて来て、優しく頭を撫でてくれる。

フルール様の方が苦しくて辛いのに、こんな時にも私を心配してくれる…。


「フルール様……!お願い……死なないで……!!」


私はフルール様にしがみ着いた。

フルール様は何も言わずに優しく抱き締めてくれる。

その優しさにまた胸が苦しくなって、涙が止まらなくなった。


「フルール様…!私、あなたを助けるためなら何でもします!!だから……お願い……死なないで………」

「…………先程も言いましたが、元々私の寿命は尽きかけているのです」

「…!!」

「最後に……この手で森を救えて私は満足しています」

「……!!」


最後なんて言わないで!!


「私が消えても…また新たな聖樹が生まれます。どうかその子をよろしくお願いします」

「……!?」


私はフルール様をギュッと抱き締めて、イヤイヤと首を振った。


「フルール様……死なないで………お願い………」


精霊達の嘆きが聞こえる。

みんなも泣いていた。


フルール様を助ける方法は無いの……!?


「フルール様…。あなたが……我が国の聖樹が枯れてしまったら……我が国はどうなるのでしょうか?」


ロベルト様が静かに尋ねた。


「……新しい生命の聖樹が育つまでは国が荒れるかも知れません」

「…………」

「この国には私の子達がたくさんいます。どうか子ども達を守って下さい」

「………………畏まりました」


フルール様が……この世界をずっと見守ってくれていた聖樹が消えてしまう……!!



「プリナさん」

「…………」

「あなたに出会えて私は幸せでした。あなたに希望を託します」

「………!!」


嫌です!!

お願いだから、私を置いていかないで!!


「……プリナ。このままでは風邪を引いてしまう。部屋を用意するから一度身体を温めてくれ」

「プリナ、行こう。フルール様も……」


皆がお城の中に案内されて行く。


この場を離れたくない。

聖樹様の側を離れるのが怖い…!


誰に願えば良いの!?

神様!?


どうか…フルール様を……この生命の聖樹をお助け下さい……!!


私なんか消えても構いません!!

私の命と引き換えで良いから…私なんかどうなっても良いから…フルール様を助けて下さい!!


お願い…お願い…お願い……!!!


「!?」


カロが強引に私を抱き上げた。


「やだ!!離して!!」

「いいから身体を温めろ。…そしてフルール様の側に付いててやれ」

「……!?」



私は無理矢理部屋に連れて行かれ、お城のメイド達に湯浴みをされた。


私はまだ髪を乾ききらないままメイド達の制止を振り切ってフルール様の元へ走った。



「フルール様…!!」


フルール様は用意されたベッドで静かに眠っていた。

専従医師が治療をしていたが、手の施しようが無いと首を振った。


私はフルール様の手を両手で握り締めた。

いつも温かなフルール様の手が冷たい。


「フルール様……いかないで………」


私の命をあげるから。


『いけません!』

「…!?」


頭の中に声が響いた。


『いけません!…そんな願い事をしては』

「私はどうなっても良いんです。フルール様が助かるなら何だってします!死んだって構いません!」

『プリナ!!』


「お願い………生きて……………」



神様!!

私がフルール様にもらったものを全てフルール様にお返しします!!

私の命と引き換えで良いです!!


フルール様の命を奪わないで!!



「!?」


私の両手の中のフルール様の手がかすかに動いた。


「フルール様………」


震える手で私の頬の涙を拭ってくれた。


「泣かないで………愛しい人」

「……!!」


そんな真っ青な顔で微笑まないで。

こんな時まで私の心配なんてしないで。


私を置いていかないで。


私はフルール様にありったけの想いを込めてキスをした。


初めてのキスは、涙の味がした。


フルール様の手が強張ったけれど、構わずに私の全てを注ぎ込む。


フルール様の手にほんの少しだけ温もりが帰ってきた。



「フルール様……いかないで………」


フルール様は初めて辛そうな表情を見せた。


「フルール様……私を……森のみんなを……この国を……これからもずっと見守って下さい………」

「プリナ………」


フルール様が私の名前を呼んだ。


私はもう一度、全てを込めてフルール様にキスした。

必死だった。


どうか…どうか…フルール様を助けて下さい!!


冷たかったフルール様の唇に赤みが差した。


「フルール様……大好きです………」

「プリナ………」



もう少しだと思った。

私はもう一度フルール様にキスをした。


今までは私が一方的にフルール様に命を注ぎ込んでいたけれど、今度はフルール様からも温かな気が流れ込んで来た。


生きることを諦めないで。


フルール様の手が私の頬に触れる。

私はフルール様の両頬を持って、全てを注ぎ込む。



「プリナ………」


フルール様が私の両頬に触れた。


「あなたは泣き虫ですね………」


フルール様の顔色がずっと良くなった。

柔らかな笑顔は変わらない。


「泣き虫なあなたが心配で……1人置いていけませんね」

「フルール様……!!」


私はフルール様にしがみ着いた。

フルール様はそっと抱き締め返してくれる。



私は涙を拭いて、立ち上がった。


「今から生命の聖樹を助けに行ってきます!」


直ぐに戻って来ますからね!!



私は王宮を駆け抜けて、瀕死の聖樹の元へ向かった。







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