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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
112/137

112)森の危機と生命の聖樹

熱い!!熱風で息が苦しい!!


私は森の中を懸命に走った。


「…!!」


「逃げろ!煙に巻き込まれるぞ!!」

「撤退!!今すぐ森を出るんだ!!」


森から逃げ惑う人達とすれ違う。

この火事の状態を見捨てる気なの…!?


「!?何故こんなところに子どもがいるんだ!!君も早く逃げなさい!!」


私に声を掛けてきたのは朝に逢った騎士団長だった。


「このままじゃ火がどんどん燃え移ってしまいます!!」

「分かってる!!でももう手の施しようが無いんだ…!!」

「そんなの勝手過ぎます!!この森に住む住民達はどうなるんですか!?」

「それなら大丈夫だ!今日捜索してみたが生き物は見掛けなかった!」

「!?馬鹿じゃないの!?人間を警戒して隠れたとは思わないんですか!!?」


私がブチギレると団長は気まずそうに俯いた。


「…もういいです!あなたも早く立ち去って下さい!!」

「民間人を置いて逃げられるか!!」


私は団長を振り切ってギリギリ近付ける距離まで奥へと入っていった。


「プリナさん」

「フルール様!?」

「あなた1人では手に負えませんよ」

「………」

「プリナ!!」

「プリナ!!1人で突っ走るな!!」

「!?」


私を呼ぶ声にビックリして振り返ると、寮の仲間達と王子様達も全員追い掛けて来ていた。


「…オレらにも何か出来る事はあるか!?」

「カロ……!」

「みんなで何か出来ないかな!?どうしたら良い!?」


みんなも危険なのに、こうして森のみんなのために着いてきてくれた…!


どうしたら火を消し止められる!?

考えろ!!

火を消すには………水!

……雨だ!!


「…雨雲を呼ぼう」

「!?そんなこと出来るの!?」

「分からない!…けどみんなでやってみよう!」

「…分かった!」


私達は全員で手を繋いだ。

私の隣にはフルール様。


「どうか、この森に住む精霊達、力を貸して下さい!!」


みんなで必死に祈る。


私達の周りには森の住民達も集まって来てくれていた。


「みんなも手伝ってくれるの?…ありがとう!みんなで火を消そうね!」


ここには聖樹は無い。

でも森の住民達と私達人間と、森の力でやり遂げてみせるんだ!!



ゴロゴロ…


遠雷が聞こえてきた。

雷雲が来てくれた!!


熱風とは違う湿った強風に吹き飛ばされそうになる。

私達はお互いに支え合って倒れないようにする。


「お願い!!火事を止めて!!」


私達の握る手の力が強くなる。


そしてザーザーと勢い良く雨が降りだした。


「!!」

「雨だ…!!」

「奇跡だ!!奇跡が起こったぞ!!」


私達を見捨てられず私達を追い掛けて来ていた騎士団の人達からも歓声が挙がる。


本当に良かった……!!

これで火事を止められる!!


みんなが歓喜の表情を浮かべるなかで。


「…放っときゃいーのに」

「だよなぁ。ドラゴンをあぶり出すチャンスだったのに余計な事をしてくれたよ」

「森が燃え尽きりゃ捜索も楽になったってのに」

「!?」


信じられない事を言ってる人達がいた。


何を考えてるの!?

どうしたらそんな酷い事が言えるの…!!?



お腹の底から怒りが沸き上がる…!!!



雷が激しくなった。

凄まじい暴風。

これは精霊達の怒り………!!


「!ダメ!!雷が落ちたらまた森が燃えちゃう!!」


それでも精霊達の怒りを抑えられそうにない。

これは…嵐になる!!


嵐!?


「!シャルル様、前にシロップから鱗を貰いましたよね!?今ここにありますか!?」

「えっ!?…いや、今手元には無い、けど…?」


だよね!!そんなに都合良くいく訳が無い!!


「プリナ、これが嵐イベントだと思うの!?」

「それは分かんないけど、鱗がキーアイテムだって言ってたから!」

「はぁ!?それだけなの!?」

「今は藁でもすがりたい状況なんだから!!」


ああ、雷がどんどん集まって来てる!!

稲妻が空全体を走る…!!


「プリナさん」

「!はい!」

「私が雷を集めますから、あなたは引き続き森に住むもの達と雨を降らし続けて下さい」

「!…分かりました!」


フルール様は私の手を離すと両手を空に掲げた。

フルール様の身体が光り出した。


ドーン!!!!


「!?」


何処かからすごい爆音が聞こえた!!

これは間違いなく雷が落ちた音だ…!!



そして雷が止んで空は大雨と暴風だけになった。



「王宮の聖樹に落雷したぞーっ!!!」

「!?」


遠くの騎士団が叫んでいるのが聞こえた。


王宮の聖樹…?


あの、ものすごく大きな、あの聖樹…!?

王都タワーから眺めた大樹を思い出した。



すると突然フルール様が足から崩れ落ちた。


「フルール様!!!」


フルール様は青白い顔でグッタリしている。

きっと力を使い果たしてしまわれたんだ!


「フルール様、フルール様…!」


騎士団長達は火が収まるのを見て王宮の様子を見に既に先に立ち去っていた。

今この場には私達だけ。


「フルール様…しっかりして……目を開けて……」


フルール様の身体が冷たい。

私は必死にフルール様を抱き締めて雨からフルール様を守る。


ああ、私がフルール様に栄養をあげられたら良いのに…!!


誰か…!フルール様を助けて!!


「!!そうだ!…癒しの聖樹様!!お願いします!!どうかフルール様を助けて下さい!!!」



『生命の聖樹様』

『我らの父よ』


「!?」


私が捨てられた時と同じように、聖樹様達が人の姿になって現れた。


「聖樹様…!!」

『生命の聖樹様自ら私達を助けて下さりありがとうございました』

『我らはあなた様の子。子が親を助けるのは当然のこと。どうか我らの力をお受け取り下さい』


生命の聖樹様………?

親…?親って誰が…………?


聖樹様達はフルール様を囲んで手を翳した。


『プリナよ、そのまま私達の父に力を貸して下さい』

「!はい!!」

『ここに居る我々の仲間達よ。そなたらも我々に手を貸してくれ』

「はい…!!」

「…!!」


皆でフルール様の無事を願い祈る。

聖樹様達も、精霊達も、森の住民達も、私達人間も。




どれ位の時間が過ぎただろうか。


フルール様が目を開いた。


「!フルール様…!!」


良かった…!!

まだ顔色は青白いけれど、フルール様は私に気が付いて微笑みを浮かべた。


「皆さん………無事でしたか………?」

『ここに居る私達の仲間達に救ってもらえました』

「そう…です…か……。それなら…良かった……です………」

「フルール様!フルール様!!」


フルール様は私の涙を拭ってくれた。


「私なら…大丈夫…です……。我が子達に…助けて頂きました……。親として…恥ずかしい…限り…です……」

『何を仰います!あなたを失えば私達の命も尽きます!この国も!』

「私は…長く生き過ぎました……。そろそろ…私の命は…消えます……」

『生命の聖樹様……!!』


聖樹様達が涙を流す。


フルール様は………

フルール様は………………!!


「フルール様は……聖樹様なのですか……?」


私が震える声で尋ねるとフルール様は目を閉じて、その後ゆっくりと目を開いた。


「私の名は…生命の聖樹。数千年、この国を見守ってきました」

「…!!」


フルール様は…人間じゃなかったんだ…。

王宮にあるという、大きな大きな聖樹だったんだ…!!


「プリナさん…。黙っていて…すみません…」

「!良いんです!!フルール様が何者でも私はフルール様が大好きです!!」

「ありがとうございます……」


雨が小降りになってきた。

立っているのがやっとだった強風も収まってきた気がする。

火事は収まったの……?


『そなた達』


聖樹様達が、私達に向き直った。


「!はい!」

「!!」


『よくぞ私達この森を助けてくれました。心より感謝致します』


「!?」


聖樹様達が私達人間に深々と頭を下げた。


「聖樹様!?どうか頭を上げて下さい!!私達は当たり前のことをしただけです!!」

『我々だけではどうすることも出来なかった。本当にありがとう』


森の住民達も一緒に深々と頭を下げてくれる。


「森が無事で良かったです!」

「私達はただ、みんなの力を借りただけなので!!」

「同じ人間の1人として心よりお詫び申し上げる。本当にすまなかった」

「僕も貴重な体験が出来て…とても光栄に思います」


皆も慌てて聖樹様達に答えていた。



『このままでは風邪を引く。森の事は私達に任せて、あなた達は帰りなさい』

『我らの父を頼みましたよ』

「はい!!」


私は火事場の馬鹿力でフルール様を背負った。


象の群れが側に来て私達を入り口まで運んでくれると申し出てくれた。




森の外にはまだ騎士団の人達がチラホラ残っていた。


「殿下!!ご無事でしたか!!」

「ああ。…悪いが王宮の聖樹が心配だ。直ぐに城へ向かう。馬車を準備してくれ。この者達も共に向かう」

「はっ!」



私達は用意してくれた馬車に乗り込んで王城へ向かった。

フルール様はまだ顔色が悪い。

私はずっとフルール様の手を握っていた。






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