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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
111/137

111)お礼に参ります(6)

翌日は朝から外が騒がしかった。

大規模な森の捜索隊が結成されたのだ。


「プリナ!」

「皆さん、おはようございます」

「それどころじゃないんだ!!」


食堂でウィル様、セルゲイ様、ダニエル様、シャルル様、ロベルト様が慌てたように駆け寄ってきた。


「今日から森は立ち入り禁止なんだ!」

「その…ドラゴンを見たという人がいて…」


皆さんシロップの事を知ってるので歯切れが悪い。私をものすごく申し訳無さそうに見てる。

皆さん約束通り、誰にも言わずに黙っていてくれたのにね。


「昨日クロールから聞きました。捜索するそうですね」

「!知ってたのか……」


「これじゃ当分お礼参りには行けないかなぁ」

「…どの位の期間、 森は立ち入り禁止になるんですか?」

「まだ未定らしい。捜索の他に討伐隊も同行するらしくてな」

「討伐隊!!?何を討伐するって言うんですか!?」

「落ち着け。…ドラゴンが襲って来た時のためだそうだ」

「森の住民達が今までに一度でも人間を襲った事があるんですか!?」

「プリナ、ウィル様達を責めても仕方無いよ」

「!……すみません」

「いや…プリナの言う通りだ。本当にすまない。私に止める権限があればな…」


ウィル様が悔しそうに唇を噛んだ。

きっと王子様達は森への介入に反対してくれていたんだろうな…。



私は胸のペンダントを握って目を閉じて心の中で呼び掛けてみた。


「フルール様…。これから森に討伐隊を連れてシロップを捜索するみたいです。私達はどうしたら良いですか?」


しばらくしてフルール様の声が届いた。


『討伐隊ですか。穏やかじゃありませんね。…私も直ぐに向かいます。捜索には私も同行しましょう』

「!本当ですか!?森のみんなを助けてあげて下さい!お願いします…!!」

『神殿の神官長として、私も出来る限りの事をします』

「はい…!」


私は目を開けて皆を見る。


「あのね、フルール様が捜索に同行してくれるって!」

「!そっか!…良かった……!」

「フルール様がいてくれたら安心だね!」

「フルール様がきっと力になってくれるよ」

「うん…!」


私達は心底ホッとした。


「フルール様って…神殿の神官長か?」

「そうです!ウィル様はフルール様をご存知なんですね?」

「ああ。男爵令嬢の処遇でお世話になった」


そういえばフルール様がミサキの神殿預かりの承認者だと教えてくれたんだった。


「ところで…プリナは神官長といつの間に知り合ったんだ?」


ゲッ!ヤブヘビ!!


「えーっと、実はフルール様は森の聖樹を調べてらっしゃってて、私達と何度か森に行ってるんですよ!ねっ?」

「!はい、実はそうなんです!」

「とても穏やかな方ですよね!シロップも直ぐ懐いたし!」

「そうそう!私達も一目で好きになりました!」

「メッチャ素敵な方です!」

「……そうか」


王子様達は私達の説明に納得してくれたみたい。良かった!




食堂を出て私達も森の入り口付近に向かう。

屈強な騎士団らしき大人達が隊列を組んでいた。


「危ないから子どもは森から離れなさい」

「私はこの学園の生徒であり第二王子である!貴殿の言う事は聞けぬ!」

「!これはウィリアム殿下でございましたか!大変失礼致しました!ですが森は何がいるか不明で危険です!どうかここから離れて下さい!」

「ここは学園の敷地内だぞ?過去に学園の生徒に危険が及んだ事があったか!?」

「それは…そうなんですが…。ドラゴンの目撃情報もございますので……」


ウィル様が私達の同行を求めてくれたけれど頑なに拒否されてしまった…。


「プリナさん」

「!フルール様…!」


フルール様を見ただけで何だか安心する。

フルール様は泣きそうな私を見ると優しく頭を撫でて、リーダーの団長さんに向かい合った。


「私は神殿の神官長であるフルールと申します。捜索の同行の許可を願えますか?」

「これは神官長様!…森は大変危険ですので…」

「この森は我が国の建国以前からの聖地です。聖地に人間が土足で立ち入る事は神殿を司る者として見過ごせません」

「しかし……」

「許可願います」

「…………………………畏まりました」


やはり聖地に入る事への畏れが勝ったのだろうか、団長はしばらく悩んでいたけれどフルール様の同行を許可してくれた。


「フルール様……」

「後は私に任せて下さい。決して森に住むもの達を危険な目には遭わせません」

「はい…!お願いします!」



私達はフルール様達が戻って来るまで寮で無事を祈ることしか出来なかった。



私達は1日中ハラハラと過ごしていたけれど、日が落ちる頃に外がまた騒がしくなり捜索隊が戻って来たのが分かった。


急いで森の入り口に行ってフルール様を探す。

隊員達は暗い表情や疲れた顔に見えた。


「プリナさん、皆さん」

「!フルール様!お帰りなさい!」

「ただ今戻りました」


フルール様に皆で駆け寄る。

フルール様はいつもと違って少しだけ険しい表情に見える。


「森のみんなは……?」

「無事ですよ。誰も捜索者達の前に姿を現さないようにさせましたので」

「!そうですか…!良かった………」

「明日も捜索を続けるようです。明日は日の出と共に森に入る予定とのことです」

「…そうですか………」


ずっと姿を隠しているのも森の住民達にはストレスだろうな…。


私はみんなが心配で森を見つめる。



「……………?」


あれ………?

一瞬何かが光った………?


「焦げ臭い……………」

「!?」


ハッとして森をよく見てみる。


光ったのは………火だ!!!!


「フルール様!!火が…!!森が燃えています…!!!」

「!?」


森のみんなが危ない!!!!


「ちょっとプリナ!?」

「ダメだ!!戻りなさい!!!」


周りの止める声を無視して、私は1人森の中に入って行った。








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― 新着の感想 ―
[一言] 森に火つけた奴は誰だ?! ミサキの可能性が高いけど。 本当、森を傷つける奴は滅びれば良い!
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