110)お礼に参ります(5)
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私を呼ぶ声に目を開けると…私はフルール様の腕の中にいた。顔を上げるとフルール様のドアップの笑顔…。
「!?わあぁぁぁぁ!!ごめんなさいっ!!!」
慌てて飛び起きた。私ったら何てこと…!!!
顔から火が出た。
フルール様は相変わらず優しい笑顔だけれど…イヤじゃなかったかな…重くなかったかな…。
「さあ、では出発しましょうか」
フルール様は微笑みながら私に手を差し出してくれた。
良かった…。怒ってはいないみたいだ!
ミドリーノとキミドリーナはそのまま次の白い雪の聖樹まで付き合ってくれるみたいだ。
「プリナ、抱っこしようか?」
「お昼寝したから大丈夫!ありがとう」
私はフルール様と手を繋いで跳ねるように歩く。
「フルール様は…精霊の御遣いの力について、どう思いますか?」
カロがフルール様に質問した。
「そうですね…。大昔は特別な力ではありませんでした。精霊の御遣いも精霊達も協力し合いその土地に住むもの達を一緒に護っていたのです」
「昔はいっぱいいたんですか!?」
「はい。ですが…いつからか人々は精霊達よりも人間の方が立場が上だと認識するようになり少しずつ傲慢になっていきました。精霊達も少しずつ人間から距離を置き始めたのです」
「人間側の問題だったんですね…」
「ええ。精霊達は昔も今も変わりません」
「…………」
それはとても悲しいこと。
「人間がみんなプリナさんや皆さんのようだったら、この世界ももっと生きやすくなるのでしょうね」
「…私は精霊は見えませんよ?」
「見えなくても感じられるでしょう?例え感じられなくても精霊達が身近にいることに気付いて、精霊達を愛する事が出来れば良いのです」
フルール様の手をギュッと強く握るとフルール様も力を返してくれた。
雪の聖樹に辿り着いた。
聖樹の側には倒れた時に側にいてくれた真っ白なキツネが寝そべっていた。
「いつ見ても綺麗だね…!」
「うん…別世界にいるみたい」
私は聖樹に抱き着いた。
「聖樹様、私を助けてくれて本当にありがとうございました。お陰様でこんなに元気になりました」
「真夏によく頑張りましたね。お疲れ様でした」
フルール様は他の聖樹の時と同じように聖樹に語りかけて手を触れて栄養を分け与えていた。
何度見てもフルール様の手から放たれる光はとても美しくて見惚れてしまう。
「今日はここまでにしましょうか」
「えっ…あともう1つ位行けますよ?」
「雪の聖樹は皆さんの寮から一番遠いと思いますよ。きっと帰る頃には疲れています。明日また来ましょうね」
「……はい」
フルール様に優しく諭され、素直に頷く。
私はお昼寝しちゃったから元気だけれど、皆も疲れてるはずだよね?私もちゃんと皆を気遣わなきゃいけなかったね。
私達は寮へと歩き出した。
「プリナ、おんぶしようか?」
「うん……」
カロがおんぶしてくれた。
カロの体温とリズミカルな歩く振動が心地良くてボンヤリしてきた…。
「…プリナ?…寝ちゃった?」
「んーん………」
「これは直ぐに寝落ちるね」
「……………」
「フルール様、プリナは森に来るといつも疲れやすいような気がするんですけど…オレの気のせいですか?」
「プリナさんは精霊達と交信する際に精霊達に力を分け与えているのです。疲れてしまうのも無理はありません」
「!?そうだったんですか…。ギブアンドテイクだったんですね…」
「皆さんが聖樹に触れると気持ちが良いでしょう?プリナさんの気は精霊達にとって同じように気持ち良く感じるのです」
「…プリナにだけ負担をかけないようにするには、どうしたら良いですか?」
「プリナさんがもっと精霊達から呼吸をするように力を借りられるようになれたら疲れにくくなると思います。皆さんはプリナさんに既に力を貸してあげていますよ」
「私達がプリナに気を分けてるんですか?」
「そうではないです。でも皆さんの存在がプリナさんに力を与えていますし、今も疲れたらプリナさんを運んであげたりしていますよね?それで良いと思います」
「…………そうですか」
「カロトさんやイルクさんがプリナさんを負担に感じているのであれば…」
「!!違います!!全然負担じゃないです!!!」
「オレも!!好きでやってることなんで!!ちっとも苦じゃないです!!!」
「…そうですか。…ではこれからもプリナさんを支えてあげて下さいね」
「はい!!」
「私も!!プリナを運べるように筋力付けます!!抱っこでもおんぶでも、頑張ります!!」
「!そうか!私もプリナをお姫様抱っこ……」
「メリザ…。メリザは違う方向で支えてやって。ポリーも目的違ってるだろ?」
「プリナを運ぶのはオレ達に任せとけ」
「…分かった」
「……はい。………チッ」
「ポリー、舌打ちすんなよ」
クロールの声が聞こえる…。
目を開けると沼まで戻っていた。
私はいつの間にかイルクにおんぶされていた。
「お?プリナ、起きたか~?」
「うん。あの、いつもありがとう」
「どういたしまして」
クロールが側に来た。
「カアカア、カアカア!」
「…えっ!?」
「カアカア、カアカアカア!」
「それは困った事になりましたね……」
クロールが、ドラゴンが再度現れたのを目撃した人が森の大捜索を始めようとしていると教えてくれた。
「シロップは部屋にいてもらえば見付かる心配はないけど…」
「森を荒らされたくないな…」
「気のせいだったと皆を思わせる事が出来ないかなぁ」
「うーん………前回かなりの人数に見られてるしなぁ」
私を助けるためにシロップは巨大化してくれた。
それがシロップを、森を、森の住民達を、危険な状態にさせてしまった………!!
「大丈夫ですよ」
フルール様は私の頭を優しく撫でた。
「下手に隠そうとするより、この際皆さんには探索して頂きましょう。精霊達が聖樹には近付けさせませんし」
「沢山の人が入って森が荒らされたりしませんか…?」
「何千年もこの森はこの国の聖地だったのです。よほどの傍若無人な振る舞いをしなければ大丈夫です。後は皆さんの道徳心を信じましょう」
「はい…!」
精霊達も森の住民達も無事でありますように…!




