109)お礼に参ります(4)
3日振りの快晴!
今日は学校が休みなので朝から出掛ける準備を始める。気分はピクニック!
皆で朝食を食べた後、揃って大地の聖樹の前で待ち合わせだ。
「フルール様!おはようございます!」
「プリナさん、皆さん、おはようございます。良く晴れましたね」
「はい!とても気持ちの良い朝ですね」
今日のフルール様はシンプルな服装だった。神官の衣装じゃない格好もステキ!
森は雨の影響で所々ぬかるみがあって足元を掬われる。カロとフルール様に助けてもらいながら聖樹を目指す。途中でトランポリンとトラックが迎えに来てくれた。
「雨上がりの森は霧が懸かってとても美しいですね」
「はい!キラキラして、とっても綺麗ですね」
私は今日もフルール様の手を引きながらウキウキ歩く。
ラベンダー色をした癒しの聖樹に辿り着いた。
「何度見ても綺麗だねぇ」
「本当に心が安らぐね…」
私はいつもと同じように聖樹に抱き着く。
「聖樹様…。あなたが私を救って下さったお陰でこうして生きています。今も力を貸して下さって本当にありがとうございます」
私の側にフルール様が近付き、聖樹に触れる。
「大分力を使いましたね。森に生きる者達の願いを叶えてくれてありがとうございます」
フルール様はまた聖樹に語りかけると触れた手が光り出した。また栄養を分け与えているんだろうね。とても柔らかな光。
「聖樹様、プリナを助けてくれて本当にありがとうございました!」
「聖樹様はプリナの命の恩人です!ありがとうございました!」
「…ありがとう…ございました…!」
「本当に…ありがとうございました!」
皆も聖樹に触れてお礼を伝える。
また何か温かいモノが身体の中を通って行く。
次に向かうのは松…じゃなかった、光の聖樹だ。
トランポリンとトラックの親子とは癒しの聖樹の前で別れた。
光の聖樹を目指して歩いていると、今度はミドリーノとキミドリーナに会って、一緒に行くことになった。
「そう言えば…。フルール様はシロップを見ても驚かれませんでしたね?ケルルート様から聞いてらしたんですか?」
「いいえ。大昔にはドラゴンは珍しくなかったのですよ」
「?…ロベルト様は…ドラゴンは伝説上にしか存在しないと言ってましたけど…」
「業火の鳥もそうではありませんでしたか?」
「!そうですね!…確かにそうです」
でもさすがに始めてシロップを見た人は多かれ少なかれ驚くと思うのだけれど、フルール様は全くと言って良いほど驚いている様子がなかった。やっぱり神官長ともなると何事にも動じなくなるのかな…。
そして私達には見慣れた松の木の、光の聖樹の元に着いた。
「…やっぱり松だねえ」
「私達にとっては松でしかないよね…」
前世では珍しい木ではなかったので何だか親しみが沸く。
…そう言えば、光の聖樹では修業した事なかったな。
私は松らしい鱗のようなゴツゴツした幹に抱き着いた。
「光の聖樹様。私はプリナ・リンカです。森の住民のみんなとお友達になりました。これからもどうぞよろしくお願いします」
前世で木登りをした家の近所の松の木を思い出してとても懐かしい気持ちになった。
「あなたはまだとても若いですね。これからどんどん成長して立派な聖樹になって下さいね」
フルール様はここでも聖樹に語りかけると、手を触れて栄養を分け与えていた。
聖樹を見る瞳はまるで我が子を見るような、とても優しい慈しみに溢れていた。
私達は光の聖樹の側でお昼にする事にした。
レジャーシートを敷いて皆で輪になってお弁当を食べる。
「フルール様、お疲れではありませんか?」
「お気遣いありがとうございます。私なら大丈夫です。むしろ聖樹からエネルギーを頂けた気がします」
「ふふふ、分かります。私も聖樹の側にいると、いつもとても気持ち良くなります」
「私もです!プリナが言うのが初めはよく分からなかったんですけど…今は感じます」
「オレもです。聖樹はパワースポットです」
「私も…プリナと一緒にいる時と同じような幸せな気持ちになります!」
「……オレもそう感じています」
フルール様は皆の話す事をとても嬉しそうに、穏やかな顔で静かに聞いていてくれた。
私は憧れのフルール様の側で、お腹もいっぱいで、大好きな皆と一緒で、とても幸せな気持ちでフワフワしていた。
「プリナさん、眠そうですね?疲れましたか?ここで少しお昼寝しますか?」
「……はい。フルール様…ギュッとしても良いですか?」
フルール様は大きく目を見開いて、直ぐ微笑んだ。
「良いですよ。どうぞ」
両手を開いてくれたので、私はフルール様に抱き着いた。
温かくて大きくて、本当に幸せ……!!
「フルール様、すみません…。プリナは疲れると甘えん坊になるんです…」
「プリナは今もフルール様に甘えてるんです!酔っ払いと同じなんです!」
「…大丈夫ですよ。たくさん歩いて疲れましたよね」
フルール様は優しく頭を撫でてくれる。柔らかな声が聴こえて心も身体もポカポカする…。
「フルール様は…聖樹と同じ……すごく気持ち良い…です……」
「ふふ、ありがとうございます。ゆっくりお休みなさい」
「…プリナさんは私が聖樹のようだといつも言ってくれますが…私から見たら、温かくて周りを優しい気持ちにさせるプリナさんこそ聖樹のようだと思いますよ」
「!……そうですね…。プリナ自身が聖樹みたいですね」
「確かに…プリナは私にとっての聖樹かも知れないです」
「フルール様はとても不思議な方ですね…」
「フルール様は…その…オレ達に付き合って下さっていて大丈夫なんですか?…その、お忙しいんじゃ…」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ。私には私の使命がありますので」
「……いつも聖樹に栄養を与えてる…というものですか?」
「そうですね…それもあります」
「?他にも…?」
フルールは静かに微笑んだ。
私は聖樹様達と森の住民達に囲まれて、その中にフルール様もいて、大好きな仲間もいて…皆が笑顔で私に笑いかけてくれる。
そんな幸せな夢を見ていた。




