106)お礼に参ります(1)
私は驚異的な早さで回復して退院の日を迎えた。医者には「精霊の御遣いの力が起こした奇蹟」と称賛された。本当はミサキに殺されかけたんだけどね!ミサキの手柄みたくなったのはシャクだけど、聖樹様達の話をするわけにもいかないので適当に相槌を打っておいた。
私はカロに抱っこされて寮の自室に戻ると、荷物を置いて直ぐに学園の緑の聖樹…正しい名前は大地の聖樹へと向かった。
「プリナさん、退院おめでとうございます」
「フルール様!わざわざ来て下さってありがとうございます!」
フルール様は大地の聖樹の横で待っていてくれた。もちろん退院は事前にフルール様にテレパシーで伝えておいたのだけれど。
「みんな!この方が神官長のフルール様です!フルール様、私の大切なお友達を紹介します!」
皆を紹介して挨拶を済ませてから皆で森に入った。
「リハビリになるから自分で歩かせてね!」
「…分かった。疲れたら直ぐに言えよ?」
「うん!ありがとう!」
私達は先ず沼を案内した。
「ガオ~!」
「!シロップ…!!」
沼に着いて直ぐにシロップが飛んできた!
「シロップ!!会いたかった!!」
「ギャウ!」
私達はぎゅうぎゅう抱き合った。
「私を助けに来てくれて、ありがとう!シロップのお陰で無事に帰って来れたんだよ!」
「ガウ」
「これはこれは…美しいドラゴンですね」
「!」
そうだ!フルール様がいたんだ!
「あの…紹介します。私の大切なお友達のシロップです。とても大人しくて優しい良い子なんです!だから…あの…」
「初めまして、シロップ。私はフルールと申します。プリナさんの新しいお友達です。よろしくお願いします」
「ガウ!」
「おっと!…ふふ、人懐こいですね」
「!」
シロップは直ぐにフルール様に抱き着いた。
フルール様はそれを笑顔で受け止めた。
一瞬でシロップが懐くなんて…やっぱりフルール様はすごいね!!
シロップとの再会を喜んでいると、ミドリーノとキミドリーナのカップル、トランポリンとトラックの親子、クロールとクロエのカップル、象、キツネ、鹿、その他の住民達が一斉に沼まで来てくれた!
「わぁ!みんな、来てくれて本当にありがとう!!フルール様、私の命の恩人で大切なお友達のこの森の住民達です!」
私はニコニコして1人1人をフルール様に紹介した。フルール様もニコニコして1人1人に挨拶してくれた。
「プリナがあっという間に好きになった理由が分かるね…」
「ああ。ケルルート様の時には住民は誰も現れなかったのに、ほぼ全員集まってるもんな…」
「フルール様のお人柄かな…」
「本当にすごい人なんだと分かるよ」
鳥の羽ばたきが聞こえて空を見上げると、業火の鳥も飛んできてくれた。
「!鳥さんも来てくれたんだ!ありがとう!みんなも初対面だよね?業火の鳥さんだよ!私が森へ捨てられた時に一番に駆け付けてくれたんだよ!」
「これが業火の鳥…!!」
「何て綺麗なの……!!」
「…あの首に着けてるのはプリナのシュシュ?」
「本当に火の鳥みたいだ……」
私はしゃがんで業火の鳥に顔を近付けた。
「あなたのお陰で私は助かりました。本当にありがとう」
業火の鳥は私に顔を寄せると頬擦りしてくれた。
本当に優しい鳥さんね。
「業火の鳥さん、初めまして。私はフルールと申します。お会い出来て嬉しいです」
「!」
フルール様は私の隣に跪いて、私と同じように業火の鳥に顔を近付けて挨拶した。業火の鳥はじっとフルール様を見つめると私にしてくれたようにフルール様に頬擦りをした。
「業火の鳥はとても警戒心が強くて人の目には触れさせないと聞いていましたが…こんなに穏やかで優しい鳥だったのですね」
「はい!初めて会った時から私を助けてくれたんです!とても優しい鳥さんです!」
シロップは大きな身体だとまた離ればなれになるのが分かったのか、また脱皮して手のひらサイズのドラゴンに戻った。
これでまた一緒にいられるね!
私は森の住民達全員にお礼をして、メリザ達を振り返った。
「それじゃあ、私が出会えた順に聖樹様に会いに行こうか!鳥さん、赤い聖樹…じゃなかった炎の聖樹様まで案内してくれますか?」
鳥は頷いてゆっくり飛び上がった。
「羽ばたく姿もとても美しいですね」
「本当に…………夢みたい」
私はフルール様の手を引っ張って、業火の鳥の後を追った。
「森全体がプリナさんの訪問を喜んでいますね。精霊達もとても嬉しそうです」
「フルール様には精霊が見えるんですか!?」
「はい。プリナさんには説明しましたが、神官は誰もが精霊を感じ取る事が出来ます」
「そうなんですね…!」
皆もフルール様に興味津々で、色々な話を聞いていた。フルール様は常に微笑んでいて、優しくお話ししてくれる。大好きな人同士が仲良くなってくれて、私もすごく嬉しい!
途中でカロに強制的に歩くことを禁止されてお姫様抱っこしてもらった。
そして、初めて森に入った日以来で真っ赤な聖樹…炎の聖樹の元に辿り着いた。
「!!本当に燃えているみたい…!!」
「これが炎の聖樹か…!!!」
「すごく綺麗………」
「………マジか」
皆も炎の聖樹を見るのは初めてで、迫力のある美しさに圧倒されていた。
「聖樹様。お陰さまで私はこうして元気になりました。助けて頂いて本当にありがとうございました!」
私は聖樹様に抱き着いて心からの感謝を伝えた。
フルール様は聖樹にそっと手を触れて目を閉じた。
「…少し弱っていますね」
「えっ!?」
「私が栄養を分け与えますね」
フルール様がそう言うと、フルール様の手が光った。フルール様の手から聖樹に何かを流しているようだ。
「…!!」
「…これで大丈夫でしょう。1人でよく頑張られましたね」
フルール様は聖樹に語りかけていた。
フルール様にはそんな力があるんだ…!!
業火の鳥はフルール様の肩に留まり頬擦りした。
お礼を伝えてるんだね。
「さあ、そろそろ帰りましょうか」
「えっ?もうですか…?」
「プリナさんは病み上がりですからね。また私を案内してくれますか?」
「………はい。未だ炎の聖樹様にしかお連れ出来ていませんから…」
私はこの幸せな時間が終わるのかと思うと寂しくて俯いてしまった。
忙しいフルール様を引き留めちゃダメだよね…。
「さあ、帰りましょう」
フルール様が私に手を差し出した。そっと手を取るとシッカリと手を繋いでくれた。
フルール様の手から温かい何かが流れてくるようだ。聖樹へと同じように私にも栄養を送ってくれているのかな…?
「フルール様、次はいつ会えますか?この森には聖樹様がまだまだいらっしゃるんです!全員に会って欲しいです!」
「ふふ、そうですね。私も回りたいです」
「じゃあ明日も森に来ましょう!毎日1人ずつ会いに行きましょう!」
「プリナ、それはいくらなんでも…」
「そうだよ!フルール様だってお忙しいんだから無茶言うなって」
「私は構いませんよ」
「えぇっ!?」
フルール様の発言に皆がビックリした。……私も。
「早い方が良いですからね。プリナさんの言う通り、1日お一人ずつ会いに行きましょう」
「本当ですか!?フルール様に毎日会えるんですか!?」
「はい。私も聖樹の様子を見て回りたいのです」
そっか…。
そりゃそうだよね、神官長として聖樹が気になるんだよね。
会いたいのは私だけか…。
私は思わずフルール様の手をギュッと強く握ってしまった。
フルール様の手はとても温かい。
「プリナさん、明日は無理かも知れませんね」
「えっ?どうしてですか…?」
私がフルール様の顔を見上げると、フルール様の反対側の手にアゲハ蝶が留まっていた。
「蝶が明日は雨だと教えてくれたのです」
「!!蝶ともお話し出来るんですか!?虫ですよ!?」
「プリナさんはどうして蝶と話せないと思ったのですか?」
「!」
そうか、そうだよね…。
蝶だって森の住民に変わりないよね!
昆虫だって同じ生き物なのに無意識に差別していたよ…。
恥ずかしい!!
「プリナさんはとても素直で心の温かい人ですね」
「!?」
フルール様にとても温かい笑顔でとても優しい声で言われて顔に熱が集まる。
私は帰り道、カロにおんぶされながら強く思った。
私もフルール様みたいな人になりたい。
この人に相応しい人間になりたい。
私もフルール様のような、温かくて優しくて穏やかで、お日様みたいな人間になりたい。
フルール様みたいな素敵な人間になりたい!!
私の生きる上での道標が見付かった気がした。




