102)家族の目より厳しいです
入院して5日目。
私は車イスを借りて病院の中庭で読書をしていた。
前世で闘病期間が長かったメリザが気を利かせてくれて、お見舞いに来る度に本や編み物、刺繍道具なんかを持ってきてくれていた。
ちなみに編み物や刺繍はどちらも5分で挫折した。
「プリナ!こんなとこにいたんだ」
「メリザ!授業お疲れさま!メリザの持ってきてくれた本、すごく面白いよ!」
「でしょう!?主人公が良いよね!」
「うん!あとこっちの本も!超ハマったよ!」
「でしょでしょ!?プリナの趣味だと思った!」
2人でベンチで本について盛り上がっているとポリー、カロ、イルクがやって来た。
「プリナが本読んでる!どんな本?」
「えっ…えーと、恋愛小説…?」
「プリナが恋愛小説なんて読むんだ~!つーか、何で疑問形?」
「……………」
ポリーは察しているので何も言わない。
「タイトル見れば分かるか!なになに…「孤独な王子と孤高の神官、神殿で禁断の逢瀬」…?」
「!?ちょっと!!イルク!!」
「で、こっちは…「学園の王子様とドS生徒会長、秘密の恋の個人指導」…?」
「……………」
「………………プリナってそっち系なんだ…………」
2人して残念そうに見んな!!
「だって…ねぇ?身近にモデルがいるし…」
「うん…。ウィル様とロベルト様との組み合わせとか萌えるよね?」
「ウィル様はどっちにしても押し倒されるイメージだよね?」
「そうそう!セルゲイ様とは主従関係がシッカリしてるから難しいかな…」
「そこが良いんじゃない?禁断ぽくて!」
「…………」
「ウィル様達が気の毒に思えてきた…」
「メリザ!!プリナを自分の趣味の世界に引き込もうとすんな!!」
「だってぇ~」
「ポリーも止めろ!!」
「何で私に振るのよ!?」
カロに本を取り上げられてしまった。
まだ読みかけなのに…。
「ほら、冷えるから部屋に戻ろう」
「えっ」
カロは当たり前のように私をお姫様抱っこした。
「待って!車イス借りてきてるから!」
「イルク、車イスを返却してきて」
「ハイよ」
「車イスで大丈夫だって!」
「ダメ。腕だって怪我してるんだから」
「ここまで来れたんだから大丈夫だってば!」
「いーや、ダメだ」
カロは本当に頑固なんだから!
助けを求めようと皆を見ると、全員何故か生温い目で私とカロのやり取りを見ていた。
部屋に戻るとエクレアがお見舞いに来てくれていた。
「エクレア!来てくれたんだ!ありがとう!」
「プリナ~!超心配したんだからね!!」
エクレアがギュッと抱き締めてくれた。
前は女の子同士でキモイとか文句言ってたのに。…本当はとっても優しいんだよね。
「性悪女のこと聞いたよ。ざまぁ!だね!」
「うーん、本人は「神に選ばれし巫女」っていう自分の立場に気を良くして、超ご機嫌で神殿に行ったと聞いてるけど?」
「…なるほど。アハハ!ウィル様達さすがだね~!そっかそっか!国に望まれたんだもんね~!!おっかしー!!」
エクレアが爆笑した。
エクレアはミサキに散々嫌な思いをさせられてきたんだから、ミサキが居なくなって一番安心してるかもね。ストレス要因が無くなったんだから。
「でもね…。1つ問題があるの」
「…何?」
「うん…。ミサキが巫女として神殿にいると、もしも私が神官になった時にミサキにまた苛められるかも知れないって思って……」
「……………はぁ!?」
エクレアの顔がみるみるうちに般若みたいに変わった。
「ちょっと待ってよ!!プリナ、あんた未だあのクズ神官が好きなわけ!?いい加減目を覚ましなさいよ!!」
「ケルルート様はクズなんかじゃ…」
「あいつはクズ!!カロに殴られて当然!!私だって殴り飛ばしたかったよ!!!病院送りにしてやったのに!!!」
「……エクレアが殴ってなくて良かったよ…」
エクレアがお見舞いの品のマカロンを一口で頬張った。しばらく無口になる。
「…あのクズ神官がプリナにしたこと、私は絶対に許さない。プリナが許しても私は絶対に絶対に許さない!!」
「エクレア…」
エクレアが私のために怒ってくれてるのが分かっているので何も言えない。
「プリナの相手はこの私が見極めます!私が認めた人間じゃなきゃ許しません!!」
「エクレア…それじゃ、頑固親父だよ…」
「プリナの相手は私達全員が認めた人間じゃないとね!!」
「みんなも!?」
「当たり前でしょ!プリナは男を見る目が皆無なんだから!」
「ひどい………!」
「プリナの結婚相手は私達全員と闘う必要があるのよ!!ねっ?カロ!!」
「……………」
皆の気持ちは有難いけれど、皆が認めてくれる人なんて現れるのかなぁ。もしかして私、今世でも生涯独身なんじゃないだろうか……。
「プリナはさ、もっと身近で大切にしてくれる人を見付けなよ!」
「……?」
「まぁ私達がいつも目を光らせてるから、プリナが嫌な思いをしたら直ぐに絞めてあげるから心配しなくて大丈夫!」
「そうだよ!もしも強引に迫ってきたらオレ達でちゃーんとお仕置きしとくから!」
「ウフフ!そうよ~!万が一プリナが嫌がる事したら私達が全力で叩きのめすよ!安心してね!」
「………何だか具体的だね…………?」
何故か皆から黒いオーラを感じた気がするけれど、皆が私を思ってくれてる事は分かった。
心強く思っておけば良いのかな?
皆の話を聞いて1人思う。
ケルルート様は皆には認めてもらえないのか。
…もう会えないのかも知れないけれど、ケルルート様の笑顔を思い出すと今でも胸がギューッと苦しくなる。
ウィル様はケルルート様にはミサキの面倒を見させると言ってた。つまり、私がケルルート様に会いに行けば必然的にミサキに会うことになるんだろう…。
きっとそれもあってケルルート様は私とは会わないって言ったんだろうな………。
ケルルート様は私じゃなくて、ミサキを選んだんだ。
私に「共に生きていきましょう」って言ってくれたのに。
私に「好きです」って言ってくれたのに。
私じゃなくて、精霊の御遣いのミサキと生涯を共にするんだ。
私じゃなくて…………
私の心の中にどす黒い何かが生まれて来るのを感じた。




