101)入院生活は幸せです
時間は遡って、私が皆に見付けてもらえた日のこと。後から教えてもらった話から。
私は海の聖樹様のお陰で脱水症状は免れたものの極度の栄養失調もあって、お医者さんに生きていたのをとても不思議がられた。
皆がリンゴとか木の実とかを一生懸命食べさせてくれたけれど、やっぱり栄養は足りなかったよね。
病院に着いて直ぐに検査されて当日は念のためICUに運ばれたらしい。翌朝には直ぐに一般病棟に移されたそうだけれど、メリザもポリーもカロもイルクも病院に泊まっていてくれた。
ウィル様が用意してくれた私の専用個室で皆は仮眠を取った。皆の顔は目の隈がすごくて私が見付かるまでずっと眠れていなかったのが分かった。
皆が目覚めて一緒に食事をした。専用個室は広くて応接セットもある!入院1泊いくら位するんだろう…。
ちなみに食事は私は流動食、皆は普通の食事だ。
カロは自分の分を急いで食べ終えると私の食事の補助をしてくれた。
「ネズミさん達は………?」
「沼の側でグッタリしていて、そこにトランポリンが来てくれてラベンダー色の聖樹まで連れてったよ。今はみんな元気にしてる」
「そう!…良かったぁ………」
一番気がかりだった事がネズミ達の事だったのでやっと安心出来た。
「…それじゃ、プリナに何があったのか教えて」
「………うん」
私はミサキと森に行くことになった経緯と空から捨てられて重症を負ったこと、業火の鳥に会えたこと、森の住民達がずっと守ってくれたこと、聖樹様が人の姿で現れて私の身体を治療してくれたこと、聖樹様が私に教えてくれたこと…全てを話した。
話している間中ずっと私の手を握り締めていたカロの手が途中痛い位だった。
他の皆も途中怒りのオーラを出していたけれど、最後まで黙って私の話を聞いてくれた。
「神様っているんだね……」
「聖樹様は神様じゃないって言ってたよ。ただの木の精霊だって」
「プリナを救ってくれたんだもの!!私達にとっては神様だよ!!」
「そうだな…。帰ったらお礼参りしないとな」
「それなら森に住む生き物全部が神様だよ!みんなが一生懸命聖樹様に願ってくれたの!私を助けて欲しいって」
「………そうだな。森そのものが神様だよな」
「そっか………そうだね」
カロが水差しで私に水を飲ませてくれる。そしていつものように私の頭を撫でた。
「…痛かったろ?」
「うん」
「……怖かっただろ?」
「ううん。森のみんなが側にいてくれたから大丈夫だったよ」
「ウソつけ」
「…!?」
その途端涙が一気に溢れだした。
そうか、私は怖かったのか…………。
カロはそっと私を抱き締めて涙が止まるまでずっと背中を擦ってくれていた。
「今度こそ!…今度こそ絶対にプリナを1人にしないから。何があっても」
「私も!!…私もずっと側にいるからね!」
「私だって!!…こんな思いは二度としたくないよ…」
「オレだって!!プリナにハーネス着けて離さないから!!」
「ふふ……私はペットじゃないよ…」
皆の気持ちが嬉しかった。
「ねぇ。シロップは何処にいるの?」
「あ~それが…」
巨大なドラゴンの飛んでいる姿を目撃した人数が多くて森を探索しようという人々が出てきて、森も危険だと困っていたらしい。
すると象の群れがやって来て自分達が匿うと申し出てくれたんだそう。
今は青の聖樹の側にいるんだって。
聖樹様の側なら安心だね!
「すごく寂しがってたから、早く元気になって会いに行ってあげて」
「うん!私もシロップに早く会いたい!!」
シロップのお陰で救出してもらえたのだ。
私を運ぶために巨大化してくれたんだよね。
本当に心の優しい良い子なの!!
「そういえば…ミサキは……?」
「それが……プリナが行方不明になった翌日から見掛けないんだよね…」
「そうなの…?」
「プリナが居なくなった日は普通に食堂でシャルル様達とご飯食べてたけど…」
「オレ達も問い詰めようと思ったんだけどな」
「何だかえらくご機嫌で不審に思ってたの!プリナへの仕打ちを知ってたらぶっ殺してたよ!!」
「マジで腸が煮えくり返るってこんな気持ちを言うんだな!!」
「見付けたら叩っ切ってやる!!!」
「プリナと同じ思いをさせてやる…!!!」
皆の復讐心がちょっと怖かった。
でも私が皆の立場なら同じ気持ちになるだろうな…。
本気で私を殺そうとしたんだもんね。
あの、人を殺す事に対する罪悪感とかが全く無い、ただの殺意だけを向けてきたミサキを思い出して身体が震えた。
そんな私に気付いたカロがまた抱き締めてくれた。
ポリーとメリザも私の手を握ってくれて、イルクは私とカロを抱き締めてくれた。
面会時間終了のアナウンスが流れた。
「プリナも休まなくちゃいけないし、私達もそろそろ帰ろう」
「…………嫌だ」
「カロ!?」
「オレは泊まり込んでプリナの看病する」
「ここは完全看護だから!気持ちは分かるけど、私だって同じ気持ちだけど!!帰らなくちゃ!」
「そうだぞ?オレらも、カロも一番寝てないじゃんか。明日お見舞いに来れば良いじゃん!」
「………………嫌だ。さっきオレはずっとプリナの側にいると決めたんだ」
「カロ~!」
カロは私の側を離れようとしなかった。
気持ちは嬉しいけれど、カロにもちゃんと休んで欲しい。
「カロ達には森のみんなに私の代わりにお礼を伝えてもらわないと!」
「!そうだよ!!プリナがちゃんと無事だったって教えてあげなくちゃ!」
「!そうそう!!みんなずっと心配してるんだから!」
「エクレアやウィル様達にも報告しないといけないし、オレ達はオレ達でやることが色々あるんだよ!?」
「……………オレはここに残る。みんなオレの分まで頼む」
「カロ……」
ダメだ。カロの決意は固い。
カロにしか出来ないこと………。
「あのね、カロ」
「ん?」
「…カロのトランペットが聴きたいな」
「!」
「カロのトランペット聴けたら元気になれる気がする」
「……………」
「…………ダメ?」
「…………………」
必死にお願いしてみる。
カロの顔が赤くなった。
「~~~!!…ズルいぞ、その顔!!」
「?」
「あ~!!分かったよ!!明日持ってくる!」
「うん!ありがとう!とっても楽しみ!」
良かった!!
ちゃんと部屋で休んでもらわなくちゃね!
カロは私の頭をガシガシ撫でるとギュウッと抱き締めてきた。
「ヤバい、可愛すぎる…………!」
「?」
「プリナが小悪魔に進化したね」
「プリナのオネダリを断れる訳がないよねぇ」
「プリナはカロの操作方法を学んだな」
「プリナがそんなに機転が利くと思う?」
「………天然か」
「カロ、頑張れ」
「そこの3人!!うるさい!!」
皆は帰るまで騒いでいたけれど、授業が終わったら毎日お見舞いに来ると行って帰って行った。
まだ加護が残っているのか少しずつ身体が良くなっていってる感覚がある。
本当ならボルトとかプレートとか入れる手術が必要らしかったけれど、聖樹様達のお陰で骨はくっつきかけてて簡易ギプスで間に合うそうだ。
森の住民達と聖樹様達のお陰で私は命を救われたんだね!
私はベッドに潜った。
あの様子だとカロの過保護は更に加速しそうだなぁ。
嬉しいけれど困った!
何だかくすぐったくて、幸せな気持ちで久しぶりに安心して眠れたのだった。




