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そこそこな幸せで十分です  作者: 蒼川りこ
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10)求めていたのはお米です

ラウンジは派手さはなく落ち着いた雰囲気で会話の邪魔にならないように管弦楽の演奏が流れている。ここ学校施設だよね?

室内を見回すと先程の2人は既にユッタリとしたソファーに向かい合って座りお茶を飲んでいた。端から見るとお見合いのようで緊張しているのが伝わってくる。


「ごめん!お待たせ~」

「おう」

「そんなに待ってないから大丈夫」


私は女の子の隣りに座ることにした。直ぐ様給仕さんが来たのでミルクティーを注文した。


「んで。今まで何話してたの?」

「まだ何にも」

「じゃあ先ずは自己紹介でもしよっか?私はプリナ・リンカ。プリナで良いよ。ヒルド村の農家出身です!前世は会社員でした」

「ヒルド村ってどこ?」

「ゼノンド領の片田舎」

「…ごめん。ゼノンド領が分からない」

「私も田舎モンだからこの国の事よく知らないんだけどさ、ここに来るのに馬車で1週間かかったよ」

「えぇ~そりゃ遠いね!!」

「ユックリ来たからなんだけどね。送ってくれた人は馬車で5日だって言ってたよ」


そこで給仕さんが来てミルクティーが目の前に置かれた。村にはミルクはあるけど紅茶は飲まなかったのでミルクティーなんて前世振りじゃないだろうか。一口飲むと懐かしい甘さ。


「質問の前に僕も名乗っとくか。カロト・モグワン。ヒッポリーガ領都の靴職人の息子。地元じゃカロって呼ばれてたからカロで。前世はブラック企業の営業マンだったよ」


「…私も先に自己紹介しますね。メリザ・シルグア、メリザと呼んで下さい。実家はカランテ領都で衣料品店をやっています。えっと…前世は一応大学生でした。と言ってもさっき食堂で突然思い出したばっかりなんですけどね」

「…何で急に丁寧語になったの?」

「お二人とも社会人だと仰ったので…。私学生でしたしお二人とも年上でしょう?」

「イヤイヤイヤ、今は同い年じゃん!前世での年齢差は忘れてよ!!」

「そうだよ。同級生に気を使う必要ないよ」

「分かりました…。じゃなくて、分かった!」


メリザは真面目な子なんだろうな。でもとっくに生まれ変わってるのに今更アラサーだなんて気を使われたくないよ。


『あのさ、今ふと思ったんだけど、前世とかの話が周りに聞こえたら怪しすぎると思うんだ。だからこれから日本語で話すことにしない?』

『オッケー』

『りょーかい!』


日本語で話してると何だか肩の力が抜ける。お国言葉って言うの?家族でお祖母ちゃん家に行くとお母さんもリラックスした顔で方言に戻ってたもんな。あ~あ、お祖母ちゃんが送ってくれるお米、もっと大事に食べておけば良かったなぁ…。お米…。


『そうだよ、お米!!白まんま食べたい!!』


いきなり大声出した私に2人はビックリしてた。


『そうだった!メシだよメシ!!あぁ~っ、思い出したら食いてえ!!!』


カロのテンションも上がる上がる。するとメリザは


『ご飯かぁ。病院は最後は流動食も食べられなかったもんなぁ…。お粥すら食べられなかったけど普通のご飯食べたいな。私ずっと入院してたんだよね~』

『そうなんだ………』


切ない笑顔だった。こんな時何て言ったら良いのか分からない。聞いて良いのかも分からない。前世じゃ良い大人だったのに…。

私達が困ってると思ったのか『前世の事だから気にしないで』と笑って言ってくれた。チクショウ、10近く年下の子に気を遣わせるなんて情けない!!メリザはやっぱり良い子だな。前世も今世も絶対に良い子だと思う。前世の記憶を持って生まれ変わったのだから、この世界で前世で出来なかった事、諦めた事をしてメッチャ楽しく生きて欲しい。彼女に幸せになって欲しい。あ、何か目が潤んできた…。


『え~っと。プリナがさ、お米が手に入ればメシ炊いてくれるって言うんだよ』

『え、炊飯器無くても作れるの?』

『水の分量間違えなければ大丈夫だと思うよ。最初は失敗するかも知れないけど、そしたら雑炊にするとか炒飯にしちゃうよ』

『炒飯!!前世の大好物!!うわぁギョーザ食いてえ!!!』

『炒飯は中華になっちゃうよ?』

『細かいことはいーの。前世で食べてたモノがこっちでも食べられるなんて最高じゃん!!』


お米の話から前世での好きな食べ物、この世界で食べた物の話なんかで盛り上がっているとラウンジの利用時間が終了になったので別れた。

お米については人伝に聞いてみたり休日に街に出て探してみようという事になった。


部屋に戻ってお風呂に入る。村にもお風呂はあったけれどかけ湯だけする感じだったから1人でノンビリ湯船に浸かれるなんて前世振り。前世じゃほとんどシャワーで済ませてたけれど。お湯に浸かる事は気持ち的にも贅沢だなぁ…。


そう。不思議なことに部屋にはお風呂もシャワーもあるのだ。やっぱり王都だから技術だとか文明だとかが発達してるのかな?ずっと村から出た事がなかった私にはこの世界について何も分からない。


明日また2人と話して聞いてみよう。


さすがにドライヤーは無いのでタオルで髪を拭いた。窓を開けると夜風が涼しい。と目の前にキラッと光が見えた。ギョッとして目を凝らして見てみたらフクロウが木に止まっていた。森があるのに何でこんな木に来たの?フクロウの勝手か。


湯冷めするのは嫌なので窓を閉めてベッドに入る。わぁフカフカ!


「今日1日で色んな事があったなぁ」


今朝はまだテガーさん達やスアと一緒だったのに…。

さっそく友達も出来たし、色々やらなきゃいけない事ややってみたい事が出来て楽しく過ごせそうだ。そして私は直ぐに眠りに落ちた。


王都エラドニールでの学園生活初日が終わった。

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