表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔神の使徒  作者: 人生万事塞翁が馬
二幕 外敵
23/49

閑話

赤城の過去話です

 俺と日向が初めて出会ったのは、病院だったと父親から聞いている。

 日向の母と俺の父は幼馴染で、結婚は互いに別の相手と結ばれることになったが学生時代には恋人だった時期もあり、家庭を持ち大人となった今でも親友同士という不思議な隣人だったという。

 互いの伴侶が子供の目から見てもわかる嫉妬を時折抱くほどに仲の良かった2人のそれぞれの子供は、同じ年の同じ日に同じ病院で誕生した。

 それが日向 夏希(あいつ)赤城 拓篤()である。


 親同士の仲が良かったこと、同い年だったことから、物心つく前から互いに面識があり家族同然のような間柄で幼少期を過ごしてきた。それが遠因か、異性の前に身内という認識をしてしまっているらしく、互いの親とは違い幼馴染だが恋愛対象として相手をみる事はなかった。

 なので、俺も日向も互いを異性としてみる事はなく、その関係はきっと崩れる事はない。

 親友として好きな相手であり、家族同然の大事な幼馴染。

 俺にとって日向はそういう存在。だから大切な相手であり、魔神の取引に応じてでも、命を賭しても助けたいと思うし守りたいと思う相手なのである。


 俺の母親は検察官である。

 公正で厳しい、人によっては冷たい無感動な人間という印象を抱かれることもある人だった。

 一方的な視点から抱く正義感にかられる者は、道を踏み誤る。公正で公平で、でもその中にも人には理解し難いかもしれないけど確かにある情を持つ人間になりなさい。

 厳格だった母親だが、幼少期の俺は周りの子が楽しそうに自慢するどんなヒーローよりも強い憧れを母親に抱いた。

 今の俺の性格を作るようになったのは、母の影響が大きいと自覚している。


 日向の父親は弁護士である。

 正義感が強い人だった。俺の母とは互いの伴侶のこともあってあまり仲は良くなかったが。

 弁護士は法を知っているだけ。法は弱者の味方であり、私は知らない・使えない人々に法を正しく味方につけるための橋渡しをしているだけである、と良く語っていた

 正義感に溢れた人だが、自分を正義だと語り驕る事はせず、あくまで弱者の味方を、正義の味方をするだけ。

 俺が母親に憧れたように、日向も父親に憧れていた。あいつもまた、先生(あいつの父)が今の性格を作るのに大きく影響しているのだろう。


 理想とした親同士は反目し合う考えの持ち主だったのだが、俺たちは不思議と仲が良好だった。

 ……あいつの頑固なところや俺の無情なところは仲が良かった分、喧嘩の原因になることも少なくなかったが。


 仲が良いのは認めるが、お互い相手を恋愛対象とみる事はないと思う。

 きっと、将来は親と同様に結婚して家庭を持っても相手の伴侶に嫉妬されることがある不思議な友人関係が続くのだと思う。

 日向にそういう相手ができれば俺はきっと言葉足らず感情足らずで伝わらないが祝福すると思うし、意外と涙もろい面もある日向は俺にそういう相手が出来た時は泣いて祝福してくれるのではないだろうかと思う。

 ……過程はまるで似てなくても、結果は同じ。

 俺とあいつが歩む道は、レールの様相は違うのに行き着く先がほとんど同じという、そんな人生になるだろうなと思っている。

 将来のことなど分からないが。


 それが俺と日向の関係だ。

 幼馴染であり、家族同然の親友であり、友人関係はいつまでも切れることはないだろうが、しかし恋愛対象になる事はきっとない。

 分かりやすいようで分かりにくい。そんな評価を誰かに言われたことがある。




 夜刀との出会いは、中学1年の夏頃だった。

 当時高校生だった彼女の兄を引っ張りまわして、祖父の道場に「道場破り」を自称して乗り込んできた。

 中学生になって初めてできた友人だと日向が入学式の翌日から嬉しそうに語っていた相手だったので、俺は当時既に夜刀の顔と名前は知っていた。彼女の方は知らなかったが。

 初めて対面した夜刀に対する第一印象は、破天荒だった。


 当時は落ち着きがなく兄を振り回しやんちゃをするのが大好きだった、まるで少年のような性格をしていた。

 負けず嫌いだったのは当時からだが、この頃の彼女は現在と比べるとその性格はまるで違った。


 当初は剣の技量でも俺が上をいっていたので道場破りを自称していた夜刀を一度叩きのめして追い返したが、持ち前の負けず嫌いを発揮した夜刀は次の日に祖父に門下生にしてくれと頼み込み俺の隣で剣を習い始めた。

 あの祖父が道場で誰かに負ける姿を見たのは、夜刀のしつこい頼み込みが初めてだったと記憶している。


 夜刀の剣の才能は素晴らしいもので、中3の頃にはむしろ俺が勝てないほどの高みに駆け上がるほどだった。

 夜刀自身は趣味だと言って中学時代に剣道部に入る事はついぞ無かったが。


 入学してたまたま席が前後になった同性の友達。

 日向のそれと比べると、俺と夜刀の初対面の状況はかなり特徴的だったと思う。


 最初は日向の話を聞き活発な人を想像していた。

 初めて出会った時は、道場破りを自称するとは破天荒な人だなという印象だった。

 祖父が根負けするほどに粘り強く、そして俺を越えようと隣で剣の腕を磨き続ける姿を見ていた時は、諦めが悪く負けず嫌いで努力家だという印象を受けた。

 日向や他のクラスメイトと交流を重ねて兄離れするようになってからは、破天荒ぶりが落ち着くようになっていった。

 才能と努力で腕を上げて俺に初めて勝った時には、喜びを抑えているのが良くわかる表情をしていた。

 日向と喧嘩した時には仲裁をしてくれた。


 そして、彼女と日向が喧嘩をした時に借りを返そうと俺が仲を取りもち、初めての喧嘩に戸惑っていた夜刀と日向を仲直りさせた時に、間に入ったことに対しお礼を言ってきた。

 その時に受けた感謝。その時に夜刀が浮かべた笑顔。

 いつからか多分無意識のうちに惹かれていたのだろう。それが明確に、彼女を異性として好きだと認識したのがその時だった。


 ただし、夜刀は当時から恋人は自分より強い相手じゃないと嫌だと公言しており、高校に入ってからはより一層魅力的になったことで何人も告白されたというが、弱かったので断ったという話を愚痴のように語ってきたものである。

 ……女子に告白されたという相談もされたが、さすがにそれは力になれなかった。


 日向に言ったらしつこく交際を迫る相手にはお説教を!と怒鳴り込みそうだと思ったのでと、この手の愚痴は日向ではなく俺によく言ってきた。確かに、日向のことを考えるとそういう行動をしてもおかしくはないだろう。

 ……実際、日向は後にそういう行動をやってくれたからな。その時は天野 光聖の介入により助けられたが。


 好きな相手が告白されてそれを断っているという愚痴を聞かされている時は、あまり気分の良いものではないし時折回答に困ることを相談されたりもしたが、同時に彼女が万人にとって魅力的に見える人だということが喜ばしいと感じることもあった。


 それから、彼女に再び勝って認めてもらい告白すると決意し、より一層稽古に打ち込むようになった。

 それに刺激されたのか夜刀もさらに打ち込むようになりその実力を伸ばすおかげで、なかなか優位に立てなかったものだが。


 ……勝って告白しては「私より強ければ考えてやらんこともない」と返され、翌日再戦して緊張し力んでしまった隙をつかれ負けて拒否される。

 3回はこのやりとりをしたと思う。


 力で勝てても剣の才能では勝てないのだから、槍や薙刀、弓などにも打ち込んだりしたが、これらの得物で勝っても本当の意味で勝ったとは言えない気がしたので、本番はいつも剣で挑んだ。

 結果、一度として響く様子もないことを思い知らされたが。

 それどころか、いつしか日向を好いているという誤解までされるようになったが。


 不純な動機だが、俺が強くなろうと武術に打ち込んでいるのは、脳溢血で倒れた祖父に叩き込まれた技術を実践し認めてもらいたいという感情よりも、夜刀に勝って告白し認めてもらいたいという動機の方が強かった。


 ……とはいえ、あの地震で無事でいるかどうかもわからない現状だが。

 それに、この世界で家族同然の親愛の情がある幼馴染を助けるという目的もある。

 血濡れる覚悟を決めた以上、向こうの世界に帰った時には2人の前から離れることになるので夜刀への恋心は諦めているが。

 せめて、日向は助けたい。




 語るほどでもない昔話。

 なので日向は婚約者というわけではないと2人に説明する。


 すると、2人の魔族は目頭を押さえて涙ぐんでいた。



「……どうした?」



「いえ……! 使徒殿は、一途なお方であると! 誠に……誠に! 使徒殿は高潔なお方です!」

「叶わぬ恋、されど友人を助けるためにそれほどの覚悟を貫かれようとする姿に胸を打たれました」



「……そんな大層なものでは」



 否定はしたが、2人には美談に聞こえてしまったらしく、晩餐の席では散々に恥ずかしいことを言われたのは語るまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ