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魔神の使徒  作者: 人生万事塞翁が馬
一幕 初戦
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初戦

 ……今更思ったのだが、勇者たちは聖剣を授かったヤツ以外全員女性だと。

 戦争となれば荒事に耐えられる男性が担うべき領分だろう。一ヶ月を超える長期間の遠征になる事も多い。体力面だけでなく、女性はそういう面から考慮しても不向きだというのは俺の知る歴史でも見られる。

 女神は何を基準に勇者を決めたのか。

 ……趣味、か?

 それとも、何かしらのつながりのようなものか。


 ……そう考えると、勇者は男友達に恵まれていないのだろうか。

 羨ましくもあるが、それはそれで哀れにも思える。


 そんなどうでもいい事を思う一方で、この場に集った勇者の数が少ない事にも考えを巡らせる。

 この場に来た勇者は4人。ベルゼビュートから聞いた情報によると、中央軍には日向の他に7人の勇者がいたはずである。他の3人はどこへ行ったのだろうか?


 可能性としては、両翼のいずれかに向かったのか、中央軍に同行したのかのいずれかだろう。

 偽伝に扮して接触した際にはすでに4人だった。2つに戦力を分け、日向の後を残る3人の勇者が追ったという可能性が高いか。


 先制攻撃をしてから、聖剣の勇者はこちらを警戒しているが他の勇者はくだらない内輪揉めをしている。

 呑気なものだが、彼らは普通に日本で暮らす学生だったはず。いきなり強大な力を与えられたところで、まだ使う側が未熟な分こういう隙をさらしてしまうのは致し方の無い事かもしれない。


 危ういが、それでも乗り越えられてきたのは与えられた力が相応に強大である事と喧嘩沙汰にも慣れているあの男がいたからという面が強いのだろう。

 現に、聖剣の勇者だけは仲間に拳骨を食らったとき以外、片時も意識をこちらから外していない。


 魔神の加護のおかげで、彼らの与えられた強大な力である属性魔法は一切効かない。

 だが、刃物は効く。鎧で守っていようと、所詮は甲冑。隙間はある。

 他の勇者は兎も角、聖剣の勇者だけは直接的な脅威たりえる存在である。


 薙刀を背中から抜き、こちらも武器を構えた。

 こちらが罠にはめ、勇者を孤立しこの場に誘い込んだ事には気づいているだろう。



「ミス・サーラ。どうせ貴女の魔法は全部効かないのですから下がっていなさい」

「水鉄砲くらいしか攻撃手段の無いあんたに言われたく無いわよ!」

「2人とも喧嘩はやめようよ〜!」



 ……気づいているはずだ。はず、だよな?

 ……危機感が無さすぎる。



「光聖、あんたも何か言いなさいよ!」



「え゛!? ここで俺に振るの!?」



「今回は私とペアでやるべきですわ。ミス・サーラには後方に下がるよう旦那(あなた)からも言ってくださいまし!」



「ど、どどどうすればいいの光聖君〜!」



「ラスボスだし3人で! 3人で行こう、な!」



「ミス・サーラ以外ですわね。よろしくてよ!」



「いいや! 抜けるのはあんたよ、エイラ!」



「え!? エイラさんと沙羅ちゃんと光聖君じゃ無いの?」



「わかった! 4人、4人でだ!」



 ……主観的な感想は持たない主義だが、俺には痴話喧嘩する男女4人組にしか見えない。

 内容にしても、場違いすぎる。

 こちらとしては3人でも4人でも一向に構わないが。


 ベルゼビュートから聞いた勇者の人数は、12人。

 聖剣アフルレードと蒼炎魔法の勇者、コウセイ。

 闇魔法を駆使し、刀を用いた剣術はコウセイさえも超える闇の剣士。

 雷を纏う雷撃魔法を駆使する黒髪の勇者、コノエ。

 水魔法を駆使する尊大な金髪の勇者、エイラ。

 癒しの聖と眩き光の2つの属性魔法を持つ勇者、ナツキ。

 氷魔法を駆使する疲れ気味の勇者、ヒウラ。

 樹木を扱う木魔法を駆使する赤毛の姉御、タチバナ。

 毒魔法を駆使する麻色髮の勇者、名前は不明。

 空間魔法を駆使する短気な勇者、クナイ。

 風魔法を扱う声と態度は大きいが体(色々)が小さき勇者、チビ。

 大地を味方とする土魔法を扱う色々が大きな勇者、ミフユ。

 メガネをかけたメガネの魔法を駆使するメガネの勇者、メガネ改めハカゼ。

 ……名前が分からなかったり、悪口としか思えない内容であったり、属性魔法さえわかっていない勇者もいたが。ベルゼビュートは配下の報告とこれまでの戦闘で自身も見てきた勇者の特徴をまとめた内容だと言う。


 それは兎も角。

 彼女たちの会話が大きい声だったおかげで相応の情報を得られた。


 聖剣アルフレードの勇者、蒼炎魔法の使い手である勇者コウセイ。光聖と呼ばれていたが、彼はおそらく夜刀の通う高校の生徒会長であり日向の恩人でもある「天野 光聖」だろう。確か夜刀の体育祭の応援に日向と行った時に見た生徒会長に合致している。


 俺に対して先制攻撃を仕掛けてきたのは、ベルゼビュートから聞いた情報を考慮するに空間の属性魔法を扱う勇者クナイだと推測される。空間の属性魔法はテレポートの類を用いると聞いている。


 金髪を縦ロールの髪型にしている白人、光聖を旦那呼ばわりしている人物は、水の属性魔法を扱う勇者エイラと推測される。彼女の実父はスウェーデンの大企業のCEOだ。ウィグハイム家の令嬢が日本に留学に来た話は聞いている。名前も合致するし、彼女はその令嬢本人、エイラ・ローデン・ウィグハイムだろう。


 甲冑の威圧がまともに通った相手、仲間たちの後ろにいるのは……強引な解釈をすれば情報と合致するのは土の属性魔法を扱うという勇者ミフユ、だろうか。判断基準は下世話な話題となるが、クナイはおろか体格が日本人より恵まれているヨーロッパ人であるエイラと比べてもなお、ということから推測した。



「なんか今すごいむかつく視線を感じた。光聖、あんたでしょ!」



「冤罪だ!」



 属性魔法の内容が判別したとすれば、脅威になりかねない相手もおのずと判断がつく。

 俺には属性魔法が効かないとはいえ、水の属性魔法なら窒息させる、土の属性魔法ならば生き埋めにするというやり方がある。クナイの扱う空間の属性魔法も警戒するに越したことは無い。


 こうして思考を重ねることができるのも勇者たちが痴話喧嘩を一向にやめないからであるが、やはり聖剣の勇者だけは常に警戒しておりこちらも迂闊に踏み込めない。



「お前かこのエロ魔族!」



 また、不可視の刃が放たれた。

 あのような遠距離攻撃なら属性魔法を無効化できる魔神の加護が遮るので無視できるが。



「やっぱり効いてないか……あいつ、ベルゼビュートと同じくらい強いってことか?」



「もしそうなら、光聖君の魔法だけしか聞かないってことかな?」



 痴話喧嘩している2人は兎も角、聖剣の勇者はやはり勘が鋭いか。

 また、後ろに控えている勇者も頭の回転は優れているらしい。直接的な戦力たり得ずとも、十分脅威足り得る存在である。侮った認識は改めるべきか。


 すると、彼女の話を聞いた聖剣の勇者が動いた。



「そうと決まれば話は早いな。俺があいつを倒す! みんな、援護頼むぜ!」



 聖剣に蒼炎魔法を纏わせて、飛び出してきた。

 すかさず薙刀を用いて防ぐ。


 金属音と衝撃が周囲に響き渡る。

 重い。蒼炎魔法は俺の体に触れれば消えるが、剣の刃が伝える衝撃は足まで響いてくる。

 それが地面に流れ、あまりの強さに岩盤に亀裂を走らせた。


 話には聞いていたが、あの距離を一息で詰めこれほどの一撃を可能とするとは。

 異世界人の与えられた超人的な身体能力は凄まじい。

 警戒していなければ、あの一撃に不意を突かれ食らっていた可能性が高い。


 聖剣の勇者、天野 光聖が戦端を開いたことで、他の勇者たちも動き出した。



「続きますわよ!」

「美冬は足元狙って!」

「わ、わかった!」



「うおっ!?」



 膂力は自分でも驚くほど上がっている。

 これほど重い一撃を与えた光聖を押し返し弾いた。


 だが、光聖に入れ替わるように、エイラが距離を詰めてきた。

 その手にはフルーレが握られている。

 属性魔法ならば兎も角、鎧の隙間を狙うこの攻撃は無視できない。



「!?」



 だが、その攻撃を防ごうとしたところ亀裂の走っていた岩盤がまるで泥のように溶け出し、足元を崩された。

 大地を味方につける土の属性魔法。想定以上に厄介な支援である。


 そしてバランスを崩した所に、光聖同様に超人的な身体能力を駆使して間合いを詰めてきたエイラの握るフルーレの刃が迫る。



「ふっ!」



 エイラは元の世界でもフェンシングのプロ選手として活躍するほどの刺突剣の使い手である。

 その一撃は鋭く正確であり、足元を崩された隙をつき鎧の間隙を縫って右肩を貫いた。


 さすが、というべきだろう。

 肉を貫き、刃物が肩を穿つことによる激痛が走る。


 傷つく覚悟も、傷つける覚悟も、戦争に参加する以上は既に承知の上。

 光聖にしろエイラにしろ、隙あらば容赦なく命を狙う攻撃だ。それは確かに恐ろしい。

 生物として備わっている生存本能が、馬鹿な真似は止めろと痛みと合わせて叫んでいるような気がする。



「とったぜ!」



 光聖が背後から聖剣を振り回す。

 それは確実に鎧もろとも両断する、必殺の一撃だろう。


 –––––––だが、俺には目的がある。

 日向を、幼馴染を向こうの世界に帰す。

 その障害となるなら、たとえあいつの恩人でも、味方を気取る輩でも容赦するつもりはない。


 薙刀を背中に回し、光聖の聖剣を受け止めた。



「なっ–––––––うおっ!?」

「えっ–––––––ヒャァ!?」



 まさか背中からの攻撃を防がれるとは思ってもみなかったのだろう。

 驚き動きの固まった光聖。

 その隙をつき襟を捕まえ、同じく驚いているエイラに投げつけた。


 クテルピウスの宝物というだけあり、この薙刀にも魔神の加護が加わっている。

 それを利用し地面を薙ぐ。


 すると属性魔法は破壊され、泥のようになっていた地面は元の状態に戻った。


 硬くなった地面から埋まっていた両足を引き抜く。

 その時には光聖とエイラも立ち上がり、短気な勇者を含めある程度の距離をとって今度は他の勇者たちも警戒してこちらを見ていた。

勇者と属性魔法


天野……蒼炎

夜刀……闇

日向……光と聖(治癒)

近衛……雷

玖内……空

樋浦……氷

橘……木

エイラ……水

時津……風

輪島……毒

市原……土

羽風メガネ……??



勇者の扱う属性魔法は、ワ○ピースのロギア系の能力者に近いイメージです。

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