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君がいる日々。  作者: 福田有希
第二章;鈴木太一
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第二章;第四話

 それにしても田端美耶という女性。

 一体、どのような人なのか見当も付かない。


 特進科のエリート集団を除けば学年首位だ。

 制服もきっちりと着ている。

 よくティックトックで女子高校生が踊っている姿を見るが、

 あのようにはだけたような着方はしない。

 第一高校であのような着方をしていたら、

 即生徒指導に呼ばれるので、この学校の女子生徒全員が

 あのような着方をすることは絶対にないが、

 美耶はとくに制服の着方がきっちりとしている。

 毎日、制服の折り目がはっきりとしているのだ。

 しわもよっているのを見たことが無い。


 そして縁の大きなメガネだ。

 いつも本を読んでいて下を向いていることが多く

 人と顔を合わせることが無い美耶なので

 メガネをかけているとどういう目をしているかわからない。

 僕自身も図書室で美耶と話をし、

 正面から美耶の顔を初めて見てから

 大きな瞳をしていることがわかったのだ。

 実際にめがねを取ったらどのような顔をしているのかを、

 はっきりと見た人はこの学校では皆無なのではないだろうか。


 そして肩に触れるギリギリのところの長さに保たれている髪だ。

 これに関しては僕にとって美耶の不思議の一つに上げられる。

 毎日、同じ髪型で同じ髪の長さなのだ。

 そして毛先まで綺麗に揃っている。


 僕は隣に住んでいる未来を見ているのだが、

 未来はいつも髪型を気にしている。

『今日の朝は髪が爆発してて直すのに時間がかかった』

『前髪を短く切りすぎておかしくなった』

『今日はヘアゴムで後ろでまとめてみた』などと言い、

 似たような髪型をするがいつも同じではない。

 必ず毎日どこか変わっているのだ。

 ところが美耶の髪型はどこも変わっていない。

 一ヶ月で一センチ位人の頭髪が伸びると聞くが、

 美耶に関して言うと伸びているということさえ感じさせないのだ。


 僕はいつものように図書館に行くと

 図書館では美耶が本を読んでいた。

 僕は読みたい本を選び、美耶の正面の席に座っていた。


「なに?私の顔に何か付いてる?」

 本から目を離すことも無く僕に声をかける。

「部活は無いのに図書館には居るんだなと思ってさ」


「開いていたから」

 美耶はたった一言そう答えた。


          ☆彡


「美耶、質問があるんだけどいい?」

 美耶は本から目を離すことも無く「どうぞ」と答える。


「クラスメートと話していたのだけど、

 好きになった人と付き合いたいと思うとする」

 美耶は僕の顔を見た。

 美耶の大きな瞳が僕の目をじっとみている。

「続きをどうぞ」

 美耶の目に吸い込まれていきそうな感覚を感じながら

 僕は続きを話した。

「付き合う前にお互いを知ってから付き合うのか。

 それとも付き合ってからお互いを知れば良いと思うのか。

 美耶だったらどっちなのかなって思ってさ」


「それは好きな人の定義によるんじゃないの?

 一目惚れのように、なにかのきっかけがあって好きになるのか。

 それとも外見や性格によってその人を好きになるのか」


「要するに自分がどうやってその相手を好きになったのかという、

 工程によって付き合う前か後かの状況は変わるというわけ?」

 僕にはまったくと言っていいほどの違った新しい考え方をしていた。

 相手によって付き合い方が変わるというのは判ってはいた。

 しかし男子と女子が付き合うということを、

 一つの工程プロセスとして考えてしまっているのだ。


「付き合ってみて相手の嫌いな部分というものが見つかったら

 美耶だったらどうするの?」


「愛する人の欠点を愛することのできない者は、

 真に愛しているとは言えない。」

「ゲーテ?」

「正解」


「私は、わがままでせっかちで少し不安定。

 ミスを犯すし、自分をコントロールできないときもあれば、

 扱いにくいときもある。

 でも、もしあなたが私の最悪の時にきちんと扱ってくれないなら、

 私の最高の瞬間を一緒に過ごす資格はない。」

「えっと……マリリンモンロー」

「正解」


 次から次と美耶の口から言葉が出てくる。

 格言の宝庫と言っても良かった。

 様々な本を読み沢山の人の言葉に触れる。

 それが本の持っている知識というものだ。

 その知識に多く触れたものは多くの知識を得ることが出来る。

 毎日多くの本を読んでいる舞耶にとって、

 本というものは知識の広場なのだ。

 そして美耶はその知識の広場で毎日のように遊んでいるのだ。

 目で見えているものだけがすべてではないのだ。


「自分が自分自身に出会う、

 彼女が彼女自身に出会う、

 お互いが相手の中に自分自身を発見する。

 それが運命的な出会いというものだ。」


「その言葉は聞いたことが無い。誰の言葉なの?」

「内緒」

 美耶は僕に意地悪っぽくそう答えた。



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