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君がいる日々。  作者: 福田有希
第一章;三浦大輔
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第一章;第十一話

 私立城北第一高等学校。

 お姉さんが通う高校である。

 編入手続きに本人が必要なところがあると言われ学校に行くが、

 いきなり試験を開始されてしまう。

 編入試験はどういうことが行われたのかということは

 この際は関係が無いので書くことは控えることにしよう。

 結果はどうなったのかと言うと合格した。

 結論を言ってしまうと僕はこの第一高校に、

 休み明けの月曜日から登校することが許可されたのだ。


「出来る出来ないは聞いてない。とにかくやれ。文句はやってから聞く」

 お姉さんの強烈な一言があった。

 この強さがお姉さんの強さであり、

 お姉さんが本当に怖いと思った瞬間でもあった。


 第一高校編入学合格の報が僕にくると、

 すぐにかかってきた電話で、お母さんの喜びの声が入ってきた。

 そういえば第二高校合格のときは恭也の家で祝ってたんだっけ。


 お姉さんとお母さんのスマホにメールを入れた。

「ちょっと近所の神社に行ってくる」

 僕は家を出て近所の神社に向かった。


 恭也と僕との間で『いつものところ』となっている神社。

 初恋の女の子との思い出の神社。

 鳥居をくぐり僕は歩いた。

 お賽銭を入れて僕は感謝の言葉を神様に祈った。

 僕をこのような女性の身体にしたことは許せないが、

 この身体になりお母さんと仲直りした。

 お姉さんとも仲良くなった。

 近所のおばちゃん達とも打ち解けるようになった。

 そして難関であった城北第一高校の編入学合格。


 今までの僕とは違う自分になったような気がした。

『なったような』というのはおかしいのかもしれない。

 事実、今までの僕とは全く違う自分がいるからだ。

 一つ気がかりの事と言えば恭也のことだ。

 小学校からの友人であり最後に会ったのも恭也だった。


 神様に感謝を伝えてから僕は神社の広場に向かい、

 そこにあるベンチに座った。

 そよ風が少し肌寒く感じた。

 ベンチに座っていると神社に来る高校生の男の子が居た。

 その男の子は神社の境内に向かい参拝していた。

 そして広場のベンチに座っている僕のほうを見た。

 その男の子はそのまま僕のところに向かって歩いてきた。


 いままで遠くに居て誰が来たのか判らなかったのだが、

 その男の子は恭也だった。


「こんにちは。こんなところでどうかされたのですか?」

 恭也は僕に言った。

「近所に引っ越してきたので神社にお参りに来たのです」

 僕が女性になったことは誰にも知られてはいけない。

 たとえそれが親友であった恭也であっても許されないことであった。


「僕は居なくなった友人が元気でいてほしいと願いにきました」

 恭也が言う居なくなった友人と言うのは僕の事だとすぐにわかった。

「居なくなった友人のために来たのですか。お優しいんですね」

「何でも親戚の家に急に行くことが決まったそうです」


 恭也の話によるとあの日、僕は恭也と放課後にこの神社に来た後、

 急に愛知県の親戚の家に預けられるようになり、

 そしてその夜のうちに親戚の家に行くこととなった。

 学校を辞め愛知県の高校に編入学した。と言うことになっていた。


 何も告げずに去っていったことに最初は怒っていた恭也だったが、

 大輔の事だからなにか特別な言えない事情があったのだろうと。

 そして大輔の無事と頑張れよという想いで今日、神社にお参りに来た。

 お参りを済ますと広場の椅子に腰掛けていた僕を見かけて

 なんだか声をかけてしまったということであった。


「友人さんもあなたの事を心配してると思いますよ。

 どうしているかなとか、元気でいるのかなとか」

「そうでしょうか。ありがとう」


 僕は立ち上がって帰ろうとした。

 すると恭也は僕にいきなり自己紹介をした。

「僕は佐伯恭也。城北第二高校の一年です」

「私は三浦結です。今日、城北第一高校に編入学が決まりました」

「三浦って、三浦大輔を知っていますか?僕の大親友です」

 僕は恭也から大親友と思われていたことにとても嬉しかった。

 本当にありがとう。恭也……。

「三浦大輔さんの家に住んでいます。私は従妹です」

「大輔に伝えてください。一言、今までありがとう。と」


 僕は恭也と神社の広場で別れた。

 この女性の体の事は誰にも知られてはいけない。


 大親友と言ってくれた恭也でさえも僕は言ってはいけない。

 もう恭也と会うことは出来ない。僕はそう感じた。

 しかし僕は伝えたかった。


 僕は大輔だよ。


 でもそれは絶対に出来なかった。

 家に帰るとまだお姉さんもお母さんもまだ帰ってきていなかった。

 僕は自分お部屋に行きベッドに横になると涙が止まらなくなっていた。




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