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私の夏休み

作者: 武田道子

私の夏休み 


ミーンミーンとせみ時雨

チリーンチリーンと風鈴

ハタハタとやわらかくカーテンの裾がはためく

暑い日差しはすだれの向こうでぎらぎらと庭に降り注ぐ

夏休みはこうして始まる


小さな背の曲がったおばあちゃんが

自分の体ほどもある大きなかごをしょってくる

もぎたての 蒸したまだ湯気の立つとうもろこしは若草緑色

つやつやとうす緑色の丸いキャベツ

ぷりぷりとした真っ赤なトマト

バラのとげのようにイガイガのたくさんついたきゅうりの先には

しぼみかけた花がまだ生き生きと鮮やかな黄色をしている

群青の空の色をしたつやつやのなす

「よっこらしょ」と縁側に籠ごと腰を下ろしたおばあちゃん

汗のしずくをよく日に焼けた顔に光らせ

くぼんだ目がきらきらと

取れた野菜を誇りに思っている

水を一杯、のどをならしなが飲み干して手の甲で額を拭く

チリリーンチリリーンと風鈴が鳴る

一枚一枚若草色の皮をはがしていくと

黄金色の粒粒がまばゆいばかりに列を成して

絹に包まれた王様の宝のように

千切りにしたキャベツはとても甘い

ぱりぱりときゅうり

茄子のへたを落おとすと群青色宵の空から白い朝が生まれる

夏の食卓はおばあちゃんが育てた野菜で彩られる

小さなおばあちゃんの日に焼けた手

土の少し入った爪

額に光る汗の玉

夏はおばあちゃんの背負う籠から魔法のように

毎日あふれ出てきた







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