08 どなどな。
「ダナ ダナ ダーナ。悲しみたーたーえー。ダナ ダナ ダーナ。はかないいーのーちぃ♪」
「お嬢ちゃん、何だその歌は?」 レオが呆れ顔で聞いてくる。
「荷馬車に揺られるときの歌。」
「はぁ、どこの歌だよ。」
「知らない。」 どこだっけ?
「はぁ?」
荷馬車に揺られるのがこんなにハードだとは思わなかった。
小さな石ころを踏んだらゆれるし、踏まなくてもわだちの段差でゆれるし。サスペンションが無いとこうなるのですね。慣性中和も無いですし。
こんな低速なのにこんなにゆれる。色々な意味で恐怖感すら覚えるが、簡単に壊れはしない。まぁ、荷物も少ないし、車軸の予備も積んであるし。でも、予備がわざわざ用意されてるってことは、やっぱり壊れるんだよね?
これなら徒歩の方が良かったかなとも思うものの、レオ達はそれなりの期間、あの周囲を監視する予定だったらしく荷馬車を用意していたらしかった。テントとか以外にも食料とか。任務合間に食料調達してたら任務にならないしね。
乗馬の方がよさそうだけど、何日かあの場所に滞在となると荷物が多くて乗馬したままでは限度があるし。最悪の事態に備えるという考え方は良い方法だよね。時間も曖昧だったらしいし。どうせならきちんと合わせてくれていればよかったのに。でも、これって上司?の職務怠慢だよね。
とりあえず領主様の受けた託宣というものを確認しないと次が始まらない。
それ以前に一人でというのも危ないし何か考えられているのやらどうやら。徒歩も嫌だよね。乗馬の体験は....覚えてない。だけど方法的なものは思い出せる。そんな辺りが落とし所かな?
前の事は、記憶にすらないので、前を向いて進むしかなかった。前に進むでも、落とし穴に落ちたりとか教訓になる事項は何も無い。今の所、考えてる時間も短いのでいきあたりばったりに近い様相を示している。
ポケットの中に何かないかは最初に探ってコインは二枚。チョッキの裏皮を裂いてみたら?なんか、無駄足になりそうな気がする。そもそも『補助脳さん』がそんな抜け穴を見逃さないと思うし。正確には補助脳ではなく、『あたし』に依頼した人々?
まぁ、自分自身も、能力的にはこんな状態で大丈夫と判断したわけだし。
荷馬車に、揺られて考えることを放棄した時、やっと城壁らしきものが見えてきた。よく見ると、周囲は畑で遠くには作業中の人がいる。葉っぱ的には芋類かなぁ。麦畑もある。食事はやはりそんな所か。
「ダナ ダナ ダーナ。揺られていくよ♪」