34 御前会議
玉座のある部屋はかなりオープンだった。
玉座からカーペットの伸びる中央通路。さほどの広さではないが中庭をはさんで建物外郭の内廊下が見える。
カーペットの両脇に諸侯が集うが、それぞれ護衛を引き連れている。小王国では国王の力が弱い。それにより貴族同士の争いを抑えきることができない。ただ、それも過程。強国になるために危機や困難を乗り越えないことにはそうもいかない。
王に危害を加える以前に近隣貴族との殺生沙汰が起こらないようにという為の、帯剣禁止のようだ。近衛兵たちは当然武器を持っているが、今回はあたしだけが例外ということで注目を集めている。
ローブで帯剣はうごきづらいので最初の皮衣装一張羅にもどっている。暑かったし。
諸侯やその護衛もそれぞれ面識があるらしく、話し声がざわざわと聞こえる。聞き取る気さえあれば会話を拾うことは可能であったが、そうはしなかった。殺気めいた感情がどこかから響いてくる。それを追うのに精一杯だった。ナノマシン自体が感情を感じられるわけではない。あくまでセンサーだ。あたしの頭、正確には補助脳だけが詳細な感情を判断できる。何百人もの経験則を包括したファントムと呼ばれる機構。真理では無いが深い心理解を得られる。
『ファントムのささやきには気をつけろ。それは悪魔のささやきだ。』ただそれは必要悪だ。陰謀の渦中においては、真実への近道だ。ただし、悪魔に魅入られすぎたものが対価に出すのは魂。神は人を殺し、器から抜いた魂を輪廻にまわす。だが悪魔は魂をそそのかし、堕とす。
国王陛下が開会を宣言。そして...
「わが国には今危機が迫っている。」
話し始めた。
「いくつかの託宣が下された。疫病と飢餓、黒き呪いの霧。」
なんか隠してたっぽい、狸親父だ。
「そして人と人の諍い。それは3度目の暗殺未遂の時から発生する。」
きりきりと弓を引く音が頭に響く。それを感じた瞬間、体が動いた。一歩前にでて刀を鞘から抜きながら振り返り、飛んできた矢を真っ二つに切った。
風を切る音が途切れた後。完全な沈黙。そして注目。あたしに当たらなければ国王陛下に当たったであろう矢。それを放った男は衛兵に追い詰められていた。
「今、時はきたれり。」
絶対、狸だ。しかも大狸。
すでに声は聞こえなかった。いや、正確には理解できなかった。補助脳をフル稼働させた結果、通訳者がいなくなっただけ。
あたしは剣を鞘に戻しながら元の場所へ戻った。




